(91)逸(そ)れる
進む方向が逸れる・・ということがある。墨壷で線が引かれた木材の上を電鋸で切っていたのはいいが、うっかり話をしていたばかりに逸れ、とんでもない方向に切ってしまった場合だ。こんな場合は大いに困る。逆に、上陸が心配された台風が逸れ、まったく違った方向へ行ってしまった場合は大いに助かる。いや、むしろ、やれやれ…と安息の息を誰しも漏らすことだろう。^^ このように、逸れると、いい場合、悪い場合の二通りがある。
連休でとある温泉へ向かった家族のお話である。
「いえ、ここは違います。その温泉はこの山向こうですね」
「ええっ!! この地図にはそう書いてますがっ!」
「ああ、地図ですか。地図はそうでしょうが、現実は違います。ドラマと実話の違いですかな、ははは…」
「と申しますと、ここは?」
「ええ、ここも温泉ですが…」
「温泉ですか? よかった…」
「いやいや、そうじゃないんで。温泉という地名の温泉ですから、湯には浸かれません…」
「湯に浸かれない温泉…ですか?」
「はい! 残念ながら…。よく道に逸れた方が寄られるんですよ。しかし、私らにはどうも出来ゃ~しませんから…」
「はあ、そらそうです。有難うございました…」
「小一時間です…」
「どうも…」
家族は温泉ではない本当の温泉へと向かった。
勘違いで逸れることもある訳だが、こんな笑えるような軽い話の場合は助かる。^^
完




