(83)不十分
十分でなく不十分の方が助かる場合がある。分かりやすい例が、━ 腹八分目、医者いらず ━ という格言めいた言葉である。十分、あるいは十二分に食べて腹を壊すよりは、ほどほどにした方が無難だ・・という意味である。大食いしても大丈夫な人、得意な人はその限りではない。^^
とある大学の研究室である。白衣を着た教授と助手がなにやら揉めている。
「君ねぇ~! 十分、確認しておきなさい・・と、あれだけ言ったじゃないかっ! なんだい! この有様はっ!!」
「はっ! 教授、申し訳ありませんっ!! たぶん、大丈夫だろうと思ったものですから…」
「たぶんも子分もないっ!」
「上手いっ! 私は先生の子分で助手ですっ!」
「なにをつまらんことを言っとるんだっ!」
「どうも、すいません。しかし、教授! これは新しい新種のアデノウィルスベクターじゃありませんかっ!!」
「どれどれ…」
教授は電子顕微鏡を覗き込んだ。
「おお! これはっ!!」
それはまさに、この研究室が長年追い求めていたアデノウィルスベクターの新種だった。
「き、君ぃ~~!! こ、これは…のっ、ノーベル賞だぞっ!!」
「ノーベル賞を取れるかどうかは分かりませんが、発見は発見ですよねっ!」
「いや、これはノーベルだっ! ノーベル以外の何ものでもないっ!! しかし、不十分でノーベル賞か…。十分なら君、どうなるっ!!」
「どうもならないと思いますがね…」
助手は冷めた声で呟いた。
「不十分な方がよかったのか…」
教授は喜ばしい、いいようだ。以外な結果を理解できなかった。
このように、不十分な方が十分以上に助かる結果を齎すことだってある訳だ。^^
完




