(62)済ます
何か気がかりなことがあったとき、それを済まさないと気分が晴れない人と、まあ、あとからでもいいか…と、取り分けて気分が変わらない人・・との二通りがあることが分かる。執刀医が、ちょっと熱いココアでも啜るか…などと途中休憩を入れれば、手術した患者はチィ~~ン! と叩かれることになるだろう。^^
お盆のシーズンということもあるのだろう。とある家ではご詠歌が♪どおぅ~~たらぁ~~こおぅ~~たらぁ~~♪と、いい声でガナられている。そして、ご詠歌が三十三番札所のほぼ半ばまでさしかかったときである。
「では…少し休憩をっ!」
老人の声に、息子は『休憩するんかいっ!』と思ったが、とても言い返す勇気はなく、父親の言うに任せた。内心では済ませた方がいいよ…と思えたのだ。
そして半時間ばかりが過ぎていった。
「じゃあ、そろそろ再開するか?」
「はいっ!」
老人が立ち、息子が従ったときである。トゥルルルル…トゥルルルル…と、電話の祁魂しい呼び出し音が響き渡った。老人は、「なんだっ!」と、出鼻をくじかれたからか、腹立たしく受話器を手に取った。
「… はい、そうですがっ! …はい! はいっ!! ええっ! はいはい! そうですかっ! ではすぐ参りますっ!」
「どうしました? 父さん」
「おい、喜べっ! 母さんが明日、退院できるそうだっ!! すぐ、病院へ行くぞっ!!」
「はいっ!! ご詠歌は?」
「ご詠歌など、気楽にやってる場合かっ!! こっちは生きとるんだっ!!」
「はいっ!!」
息子は、すごすごと老人に従った。結局、途中休憩が仇となり、済ますはずのご詠歌は済まされなかった。
済ますときに済ませておかないと済ませなくなるから、済ますときには済まそう! という、ただそれだけのお話である。トイレも、そうですよっ!^^
完




