(53)肩透(かたす)かし
年に六場所、開かれる大相撲で、よく見られる決まり技に[肩透かし]というのがある。まあ、[突き落とし]も、よく見聞きするが、[肩透かし]は大相撲以外でもよく耳にする言葉だ。助かるのは[肩透かし]になる場合、ビミョ~~なタイミングのズレで起こる場合が多く、双方が直接、体を合わせてぶつかることが少ない点だ。まあ、この点は[突き落とし]も同じだが、サスペンスじゃあるまいし、崖からの[突き落とし]は怖いから、今回、[突き落とし]は外すことにしたい。^^
二人の営業社員が夏の暑い昼日中、強い陽射しを避け、ビルの陰で隠れるように話をしている。
「いやぁ~参ったよっ! 肩透かし、食らっちまったっ!」
「ええぇ~~!! そんな馬鹿なっ! 君が契約、出来そうだからって携帯くれたから、このクソ暑いのに、本社から飛んで来たんじゃないかっ!」
「まあ、そう言うな。俺だって、まさか、こんな大手が肩透かしをやるとは思ってなかったからな」
「まあ、食らったものは仕方ない。しかし、先方だって困るだろうが…」
「いや、二股ということも考えられる…」
「別会社の条件がよかった訳か?」
「ああ、おそらく…」
「振られたものは仕方がないっ! また、いい相手、探すさっ! 美人のなっ!」
「ははは…だなっ! 態々(わざわざ)、来てもらったんだから鰻重くらい奢るよっ!」
「ああ。まあ、それくらいはしてもらわんとっ! 土用の丑だしなっ!」
二人は汗をハンカチで拭きながら鰻専門店の方へと消えていった。
土用の丑の日に鰻屋が閉まっている確率は低く、二人は肩透かしを食わず、美味しい鰻重が食べられるだろう…とは推測されるが、[内股透かし]という決まり技があるくらいだから、柔道にも[肩透かし]という決まり技があったら助かるな…と、ふと思った次第である。^^
完




