(51)神業(かみわざ)
もうダメだ…と思えたとき、神業ともいえる奇跡の展開で助かることがある。この神業とは常識で考えられない不思議な力を指す。私が今から神業を見せる・・などと偉そうに嘯く人は神業が出せないのは確かだ。^^
とある競馬場である。今まさに世紀の一戦とも言える重賞レース、夏場記念が行われようとしていた。そのレースをスタンド席で見守る厩務員、鬣の姿が観戦席の中にあった。今日のこの一戦で鬣が世話をした馬、カバヤキドジョウが晴れて初出走することになっていたのである。
「鬣さん、どうなんでしょうね?」
鬣の隣りの席に座る同僚の厩務員、毛並が徐に訊ねた。
「ははは…毛並君、それが分かってりゃ苦労せんよ。まあ、二番手までは無理だろうから、五番手ぐらいまでに・・とは思ってるが…」
「なるほど…。勝ち鞍は神業でも出ないかぎり無理ですか…」
「出ないだろ、たぶん。ウナギホマレがダントツだからなっ!」
「味が違いますか?」
「ああ、値じゃ勝てるはずだがな、ははは…」
「確かに…」
二人がペチャクチャやってるうちに、高らかにファンファーレが鳴り響き、出走となった。そして、しばらくしたレース後である。
「た、鬣さんっ!! やりましたねっ!!」
「ぅぅぅ…毛並君っ!!」
鬣は意外な結果で助かることになり、歓喜して咽んだ。厩舎赤字経営改善のメドが立ち、助かったのである。カバヤキドジョウが神業で見事、重賞レース、夏場記念を征した勝因は、予想外の品不足による極端な高値のせいだった。^^
完




