(43)どうでもいい…
物事には必要不可欠な、ソレはっ! …というような手が抜けないことと、深く考える必要がないどうでもいい…と思えることがある。同じ歯科医に関係したことでも、虫歯と八重歯とでは対応する考え方が変わってくる。虫歯は放っておけば、イタイ、イタイっ!! と苦しむことになるからどうでもいい…とは考えないだろうが、八重歯なら、「あらっ! そのままの方が可愛いわよっ!」「…そうお?」などと、そのままにしておいてもどうでもいい…と思える違いがある訳だ。
とある一般家庭の夕食場面である。どういう訳か美味そうなスキ焼きの肉がいい具合に煮えて残っている。家族五人は満腹ぎみに食べた直後だから、誰も箸を伸ばさない。
「あらっ! 誰も食べないのっ!?」
母親が父親と子供三人の顔を見回しながら訊ねた。鍋が空になれば、それはそれで母親としても後始末が出来て助かる訳だ。
「どうでもいい…が、残しておくのもな」
「ああ…」「うん」「そうね」
長男、次男、長女も異口同音に肯定する。実は母親が訊ねた直後から、すでに四人はグツグツ…と美味そうに煮える食べどきの残り肉を狙っていたのである。
「どれどれ、俺が…」
父親の箸が肉へ伸びた瞬間だった。負けじっ! と子供三人の箸も同時にサッ! と肉をめざして伸びた。が、しかし、四人は肉に箸が届く直前で、またサッ! と箸を引っ込めた。
「まっ! どうでもいい…」
「そうだよっ! どうでもいい…」「どうでもいい…」「どうでもいい…」
「そうお? じゃあ、私が…」
母親は何の躊躇もなく箸を伸ばして美味そうに煮えた肉を溶き卵につけて頬張った。
「ほほほ…これで片づくから助かるわっ!」
「…」「…」「…」「…」
四人は煮えきらず、テンションを下げて食事を終えた。
どうでもいい…内容は、なかなか侮れないのだ。^^
完




