(22)上戸(じょうご)
酒を飲めば程度の差こそあれ、誰もが酔う。酔えば普通の状態からこれも程度の差こそあれ、気分が変化する。この変化が著しい場合、人はその変化を上戸と言う。アルコールによる酔いのせいだが、助かるのは泣き上戸や笑い上戸という面白い上戸だ。喧嘩上戸、怒り上戸、それに暴れ上戸はその逆で、まったく助からない騒ぎではなく、非常に迷惑する上戸だ。^^
久しぶりの休みに手羽崎がうらぶれた、とある飲み屋のカウンター席でひとり飲んでいる。少し離れた同じカウンター席でも二人の男が飲みながら話をしている。どちらも手羽崎が店へ入ったときにはすでにいて、かなり出来上がっているのか、ふらつきそうな赤ら顔状態だった。二人は、どちらも癖のある呑み助風に思えた。一人は笑い上戸で、もう一人は泣き上戸である。店にテレビはなく、手羽崎にとって助かることは、二人の話が面白く、手持ち無沙汰な心を慰めることだった。
「ぅぅぅ…サッカーなっ! あの結果だっ!」
「ははは…そうそう!!」
「ぅぅぅ…よくやったよっ!!」
「ははは…よくやったな!!」
「ぅぅぅ…だなっ!?」
「ははは…そうともっ!」
手羽崎は面白く聞いていたが、いい結果か悪い結果なのか分からず、思わず二人に訊ねようとしてやめた。手羽崎の気分は二人の上戸で面白さが失せ、俄かに悪くなった。
助かるような面白い上戸も、時には面白くなく助からない・・という上戸のお話である。もちろん、暴れ上戸で助かることがないのは確かだ。^^
完




