表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

4話 揺らぐ

遅くなりました。本日は、1話分投稿です。

如何せん、仕事が忙しく、2週間に1度のペースでゆっくり投稿すると思います。


お暇な時の時間つぶしにでも使ってやってください。

 初めてのグループワークの話をしてから、何回か会合をした。


 やはり、僕の気持ちのことはわからないままで、彼はそれを追求することなく、二人で楽しく日曜日を過ごした。

 楽しく遊んでいても僕の中にはまだモヤモヤがいて、でもそれは初めよりも苦しく無くなっていた。


 そう思っていた矢先のグループワークで、僕はそのモヤモヤの形がぼんやりと見えるようになった。そしてその事を早く彼に伝えたいので、初めて学校で彼に話しかける事にした。


「次の日曜日、いつもより一時間くらい早く来れない?」

「待ってね、予定を確認するよ。…。うん、大丈夫そうだよ。」

「ありがとう。」


 彼と僕が交わした言葉はそれだけだったが、彼は僕が何かをつかんだことが分かったような真剣な表情をしてくれた。



 そうして迎えた日曜日。


「やぁ、待った?」

「いや、大丈夫だよ。急に早めに呼び出しちゃってごめんね。」 

「どうってことないよ。空いてたしね。俺はなんともというか、早く聞かせてよ。どうしたって言うんだい。」


 彼は僕が急に早く呼び出したのにも関わらず、いつもと同じ風で、いつもと少しだけ違う風だった。

 なんと言うか浮つきが見え隠れするような。

 でも、きっと待ちわびてくれていたんだということは察することができた。


「うん、なんとなくなんだけど、ここずっとモヤモヤしていた気持ちが分かった気がするんだ。」


 僕はそういって彼が返事をする間を置いたが、彼は無言で話を続けるように促した。


「一緒にいると緊張する。グループワークで少し話すと、まるで五〇メートルを全力で走ったようなドキドキがする。でもあの子と離れると、そのドキドキは無くなる代わりにモヤモヤが出て来るんだ。多分だけど、これが恋なんだということが分かったような気がするんだ。」


 そう聞いた彼は、矢継ぎ早に話し始めた。


「いや、それは多分じゃないし、気のせいでもなく恋だよ。なるほど、君は俺と話したから自分のモヤモヤばかりを気にして、あの子の事をそんなに考えなくなったんじゃないかと思って心配したけど、そんな心配は要らなかったね。まずは俺から言わせてくれ、おめでとう。」


 そう言って彼は、朗らかに笑いながら右手を差し出してきた。僕はその右手をジッと見つめ、どうするべきかを理解するのに少し時間を要したけど、その手を取ることにした。


「なんでおめでとうなんだ?なんで僕らは握手してるんだ?」

「いやいや、そりゃ君が新たな感情を知り、人として大きく一歩前進したからじゃないか。ある種門出みたいなものでしょ。」

「ん?そうか。門出か、確かに新しい気持ちを知ったから、今までとは別の世界みたいなものか。」


「やっぱり君は面白いなぁ。」と言いながら握り合った右手をブンブン振り回しながら笑う彼を見て、

「なんだこれ?」

 なんて言葉が口を衝いて出てきたけど、彼は存分に喜んでくれているみたいだし、良いことなのは間違いがないかと思った。


「それで?これから君はどうするんだい。告白…はまだ早いよね。どうしよっか、もうちょっと待てる?」

「告白は無理に決まってるだろ、まったく。待つって何をだ?何を決めようとしてるんだよ。」

「まぁまぁいいからいいから。俺も君も成績は悪くないし、あの子もまぁ面倒ごとは嫌いそうだから大丈夫でしょう。ならあー、あいつに声かけて…」

「おい、何言ってるんだよ訳わかんないし、ちょっと聞こえないし。」

「よしわかった。また来週詳しいことは言うよ。再来週から期末テストだよね。テスト週間はバイト休んでるから適当に遊びにくるね。」


 そう言って話をまとめようとする彼に、頭の中はまだグチャグチャなままだった僕は、「え、まぁいいけど。」と言うのが精一杯だった。


「そろそろ時間だしバイト行ってくるね。」


 あれからしばらく、初めの話はなかったかのようにいつもどおりゲームをしたり漫画を読んだりして彼はアルバイトに行った。


 僕がわからなかった部分はわからないままだった。

 別に何か悪いことが起きるとは思っていないが、彼のこういったちょっと自分勝手な部分は嫌いじゃない。

 なんて言ったって、彼のこう言うところがなかったら僕と彼は今みたいな関係じゃないだろうからね。





 その日の夜、僕は彼に思いを伝えられたことで、とても気持ちが軽くなった。

 彼は僕の今日の話で「門出」と言ってくれた。

 そういう事は今後の人生でそう多くはないんだろうけど、自分のことで喜んでくれる彼は本当にいい奴だと思った。


 でも最後に言っていた事はなんだったんだろう。

 なんか彼がまた企んでいるんだろうな。そう思うけど、不安は少ししかなかった。

 どうせ彼がする事なんだから、僕に悪いようにはならないだろう。

 彼を勝手に信用しているけどまぁ、「そういうもの」だよね。


もう何年か前のことです、恋だなんだと騒いでいた時期もありました。

今やこのお話のような、恋バナなんて全くしませんが、記憶の中で、恋をしている間は色々と辛くとも、色々楽しかったものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ