3話 モヤモヤ
前話が長かった分、こちらは短めです。
1話1話の長さはあまり考えていませんので、悪しからずご了承をお願いします。
2話連投ですので、読み飛ばしにお気をつけください。
次の日曜日、珍しく僕は彼が家に到着するのを待っていた。
前回の彼が計画した通り、授業でグループを作る事になった。
そのグループは彼が想定したものと同じものになった。
僕と彼とあの子がおり、そしてもう一人女子がいた。僕には友達がいなかったため、教室内に気軽に話せる相手は、彼を除いていない。しかも、その彼ともクラスの中でほとんど話した事はなかったのだ。
そんな中、少人数の集団の中にあの子がいる。どうしたら良いのか全くわからなかった。そういったモヤモヤを彼にぶつける以外、どうして良いのかわからないのだ。
そうしていつも通りの時間に彼がやって来た。いつもならどちらかが話し始める準備ができてから話を始めるのだが、今日は彼が部屋に入った瞬間から始まった。
「ねぇ、僕はあの時どうすればよかったんだ?」
「急だなぁ。まぁまぁ落ち着いて。とりあえずあの子のこと、どう思ったんだよ。」
そう彼は笑いながら言った。
「いや、どうもこうもないよ。めちゃくちゃ緊張したし訳わからないくらい緊張しちゃったよ。いつもなら全く緊張しなかったグループワークだったけど、とにかく緊張したよ!」
「おぅ、なかなかに君らしくない話し方になっちゃってるよ。緊張以外は何も感じなかったのかい?」
「えーっと、それは、ないかな…。緊張以外の気持ちに気がつかなかったよ」
「なるほどなるほど。俺から見てだけど、君もあの子も全くいつも通りな感じだったよ。話しかけてもあんまり優しく返してくれなかったし、あの子も我関せずな感じだったな。」
彼の言うことは、その通りなのだろう。
しかし、あの子がどう考えてどう行動したかという事を、どうしても知りたくなってしまうのはなぜだろう。
どうして知りたいのだろう。
あの子と一緒にいるときは緊張してそんな事感じなかったのに、今になってなぜそんな気持ちが湧き出てくるのだろう。
そんなモヤモヤした気持ちを彼は知っているのだろうか。
彼にぶつければ答えを教えてくれるだろうか。
そう思ってはいるが、どのように聞けばいいのだろう。
彼はあの子じゃない。
だから、どう思っているかなんて事聞いたって仕方がない。
だから僕は、彼にこの気持ちをぶつける言葉が見つからなかった。
そうやって考えている間、彼はジッと待ち続けてくれた。
「ねぇ、僕はどう言ったらいいかわからないけど、すごくモヤモヤしてるんだ。だけど、なんて君に言えば良いかわからなくて伝えられない。ごめん。」
「いや、謝らなくて良いでしょ。誰だって全てのことを言葉に表すことなんてできないよ。俺だってそうさ。どうしたってわからないことはわからないんだ。でも、その時に悩んで考えることは、きっと次にまたわからないことがあった時、君の手助けをしてくれるんじゃないかな。」
「そういうものか。」
「そういうものだよ。」
そういって笑い合った。
僕は彼がもっともっと色々な事を知って教えてくれると思っていたけど、きっと彼に依存しすぎているのだろう。
自分で答えを出す事をせず、彼を頼ろうとしていた。
でも彼は、自分で考える事を促した。
「そういうものだ」という言葉は、すごく軽薄で、しかし心地の良い言葉だった。
彼の悩んでいる僕そのものをも受け入れるという懐の広さが、僕をこう思わせられる彼の思考力が、僕にとってありがたかった。
そうして、少し落ち着いた僕を見て、彼は流れるようにゲームを用意した。ここ最近は、何かいつもと違う日常を送っているような気分だったが、こうしていつもと同じ友達と送るいつもと同じ日曜日に僕は救われた気持ちになった。
彼がアルバイトに行った後、今日のことを考えた。
言葉にならない気持ちがまた僕を襲ったが、それから逃げたり正体を暴いたりする訳でなく、その気持ちと一緒に生きていこうと決めた。
その気持ちと向き合おう。
そうしたらいつか、このモヤモヤもまた別の形になるだろう。
そういうものなのだろう。
悩むだけ悩んでも、その気持ちに背を向けるのはやめておこうと思った。そう決めたら、なんだか落ち着けるようになっていた。
その時、またあの子と学校で顔を合わせた時どうしたら良いかなんてことには、気は回らなかったけどね。
一応、ある程度書き貯めてから放出しているのですが、書く時と放出する時の両方の時間が取れていないのが現状です。
また不定期に更新すると思いますので、ある程度溜まってから読まれる方が良いような気がします。
気がするだけなので、気にせずに読んでいただいて全く問題ありませんけどね。