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1話 出会い

1話目です。実際には、2話目ですが、本編はここからです。

「俺の話を聞いてくれないかな?」


 そう切り出したのは彼だった。彼は事前に自分で言い放った通り、日曜のお昼という、一週間の中で最も優雅に過ごすことのできる時間にやって来た。もはや来てしまったものは仕方がない。その行動を無下にするほど、僕は非道ではない。だから彼の話をしっかり聞いてやることにした。


「僕は構わない。好きなだけ話すといいよ。」

「俺ね、毎週日曜日はすぐ近くの居酒屋でバイトしてるんだ。それまでの時間、何とか有意義に過ごせないかと思ってね、今ここにいるってわけ。」

「あぁ、そうだったのか。バイトしてるんだ、偉いね。お金が欲しいの?」

「うん、そうなんだ。ちょっとお金が必要でね。理由は申し訳ないけど話せないけど。ごめんね。」


 彼は伏し目がちにそう言った。実際、なぜバイトでお金を貯めているのかなどは僕には関係のない話だと思ったから追求をしなかった。それより、僕は彼が僕のところに来る理由が一応あったことを知り、少しだけ安心した。何も知らずに居られるのとそうでないことには心の中で大きな差がある。


「それにしても君みたいな人が僕に話しかけるなんて、クラスで浮いちゃうでしょ?」

 僕はそう言ったが、彼を心配してではなく、僕という個人に話しかけるメリットが、バイトまでの時間潰しということのみでは少し足りないと思っていたからだ。

「えっとね、君って、言っちゃ悪いかもだけどクラスでずっと一人だったでしょ?いや、悪い意味じゃないんだ。俺ね、この性格で何でかクラスの中心にずっと居ることになっているけど、実際はそれは仮面でね。」

「仮面?君は学校ではあのキャラクターを演じていたってこと?」

「いやいや、そんな大それたことじゃないんだ。今、君の目の前にいる俺は、当然、素の俺だけど、学校のも素の俺だよ。」

「ん?ごめん、言っていることがよくわからない。」

 僕には仮面をかぶってまで友人に囲まれるという状況が全く理解できない。その言葉は心の底から出て来たものだった。

「あぁ、ごめん、わかりにくかったね。要は、学校みたいに大勢の人と話すのに疲れているってことかな。バイトでもそうだしね。本当は一人だけの相手としっかり話すってことがしたかったんだよ。」

「なるほど、完璧に理解できたわけじゃないけど、友達が多いってのは大変なんだ。」

「そうさ、実は大変なんだよ。」

 そう言って彼は、柔らかく笑い、大きく息を吐き出した。

「さて、そういうわけで、男同士で二人っきりというこの状況を楽しもうじゃないか。」



 そう言うが先か動くが先か、彼は僕の部屋からテレビゲームを見つけ出し、コントローラーを僕に渡して電源をつけた。彼が選んだカセットは格闘ゲーム。二人でするのにはもってこいだ。しかし、僕はこのゲームを全てクリアし、普通というよりは強い状態だったので、少し彼には分が悪かった。


「僕、このゲームはちょっと強いけど、いいの?」

「いいのいいの。俺もこのゲーム持ってるし、簡単には負けないよ?」

「それなら丁度いいね。お相手しよう。」

 少しこの空間にも慣れ始めた僕は、そんな軽口を叩き、コントローラーを握りしめた。

 ゲームが始まってからというもの、彼も僕も男子だった。意外にもと言うべきか、彼も僕と同様、普通より強い部類に入る実力だった。そのため、試合は拮抗しテレビに向かってお互いが声を上げ、喉を痛めるほどの白熱っぷりだった。

「あーー!もう一回!」

「よし、また僕が勝ってやる。」

「俺がそれを許すとでも?負けないよ!」


 ゲームはお互いの距離を縮めることに役に立ったようで、互いの性格が少しだけ分かり、彼も、そして僕も闘志を剥き出しにした。

「あー、くそう。俺、もうバイト行かないと、今日は負け越しかーー。来週は勝ち越してやるから!」

「来週も僕が勝つからそれは無理だね。」

 お互いが白い歯を剥き出しにした時間は思ったより経っていたようで、もう別れの時間となった。

「来週も同じくらいの時間に来るからね!練習して来てやるから!」

「望むところだよ、僕ももっと強くなってるかもね。」

「いや、君はそのままでいてくれよ、それ以上強くなったら勝てないじゃないか、ずるい。」

「ずるかないだろ!負けるのは嫌だよ。」

「負けず嫌いだなぁ、まぁいいや、またね!」

「うん、バイトがんばってよ。」



 そう言って彼を見送った。正直、僕は彼とここまで気が合うと思っていなかったし、これが彼がクラスの中心である所以なのかもしれないと感じた。

 彼とのやりとりで、気がつかない内に来週の約束もしてしまったことに後から気がついた。始まりは強引だったし、不安ばかりだったが、不安は杞憂に終わった。そして何より、楽しかった。

 友達というものも悪くないな。こうして僕は、彼が友達になったということを気が付かぬ間に受け入れていたのだった。

ストーリーに関してのご意見は、書くモチベーションもありますのでご遠慮いただけると幸いですが、気に食わない点や、改行の仕方等のアドバイスはお願い致します。ネット小説の書き方にはあまり明るくないです。

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