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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第三章(城上女子) VS南五和高校
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82(ひかり) 声援

 度肝を抜かれる、とはこのことでしょう。驚きました。なんですか今の平行みたいなBクイックみたいなスパイクは。


 油町ゆまち由紀恵ゆきえ先輩。曰く『代打の切り札』だそうですが、とてつもないジョーカーのようです。


 それから、市川いちかわしずか先輩。


 油町先輩の強烈なスパイクがすごいのは一目瞭然ですが、それもこれも、市川先輩の正確なトスなくしては成立しえなかったでしょう。セッターの技術の良し悪しは素人目にわかりにくいですが、今のトスに関しては、リベロの私にもその凄みが伝わってきました。


 市川先輩のトスがあったからこそ、油町先輩はその力を発揮できたのです。その証拠に、霧咲きりさきさんが羨望と憧憬のこもった複雑な表情で市川先輩を見つめています。私たちの代の地区ナンバーワンセッターであるあの霧咲さんが、嫉妬を通り越して敬畏の念を抱いているのです。それだけでもう、市川先輩が並々ならぬセッターなのだとわかります。


 私は、ちらっ、と隣の宇奈月うなづきさんを見やります。予備のボールを膝の上に乗せた宇奈月さんは、いつになく真剣な表情で市川先輩と油町先輩を見つめていました。やはり、宇奈月さん的にも、今のワンプレーは気になるようですね。


 と、私の視線に気付いた宇奈月さんがこっちに振り返りました。


「どうかした、ひかりん?」


「い、いえ……なんでもありません」


 真面目な顔をしてる宇奈月さんが珍しくて見入ってた、というのは秘密です。


 さておき。こちらはローテが一つ回り、サーバーは北山きたやまさん。


 一周前のミスを気にしてか、ばこっ、と山なりのサーブを打ちます。それを赤井あかいしずく先輩がきっちり拾って、みなみ五和いつわのチャンスボールに。


 相手の攻撃は三枚。江木えぎ小夜子さよこ先輩、結崎ゆいざきはる先輩、生天目なばため信乃のの先輩。セッターの逢坂おうさか月美るみ先輩は、本日決めに決めている生天目先輩を使ってきます。高い身長と長い腕から繰り出されるスパイク。ボールは霧咲さんの横を抜け、クロス方向――FR(フロントライト)にいる油町先輩の足下に落ちます。


 スコア、15―18。


 生天目先輩が下がり、逢坂先輩が前衛フロントへ。


 サーブは生天目先輩。ボールはセンターの油町先輩とバックレフトの藤島ふじしまさんの間へ。どうやら油町先輩はサーブカットを避けているようで、サーブが放たれるや否や藤島さんにカットを任せます。藤島さんは多少慌てつつ落下点に。しかし、当たりどころが悪く、カットはレフト側に流れます。


「静っ!」


「わかってる……」


 声を掛け合う油町先輩と市川先輩。そこから二人は、また惚れ惚れするようなコンビネーションを披露します。


 まず油町先輩が、カットのズレなどお構いなしに、速攻のタイミングでセンターに踏み込みます。市川先輩はボールを追ってレフトに走り込みながらジャンプ。最高到達点でボールを捉えると、もはや魔法としか思えないハンドリングで自身の真後ろにボールを運びます。それを、空中で待っていた油町先輩が左手でずどん――。


 定義に従えばCクイックと呼ぶべき攻撃ですが、もはや別物です。


「えっへへー。さっすが、静! 二年振りでもぴったり!」


「由紀恵も……なんというか、うん、色々と変わらないね」


 後ろから抱きついて頬擦りする油町先輩と、苦笑してされるがままの市川先輩。人懐っこい猫とその飼い主、という感じです。


 そんなお二人の活躍で、16―18。


 ローテが回り、前衛フロントは、藤島さん(181センチ)霧咲さん(172センチ)油町先輩(174センチ)


 その平均身長は音成おとなるのマリア様ローテを優に超えています。全国大会でも通用する高さではないでしょうか。


「ねえねえ、ひかりん」


「なんですか?」


「ちょっとお願いがあるんだけど」


 一体なんでしょうか。宇奈月さんがすごいにこにこしてます。若干嫌な予感がします。しかし、まあ、一応聞くだけ聞いておきましょう。


「あのね……」


 私が耳を向けると、宇奈月さんは手で筒を作ってこそこそと耳打ちします。


 内容はというと、特に気構えるようなものではありませんでした。私は言われた通りに、大きく息を吸い込んで、コートに声援を送ります。


「藤島さーん! 頑張ってくださーい!」


 直後、猫背の藤島さんが、びくんっと背筋を伸ばしました。そして、真っ赤な顔でこちらに振り返り、口をぱくぱくさせて言います。


「がっ、がっ、がっ、がっ!!」


 ど……どうしましょう。軽い気持ちで応援したら藤島さんをバグらせてしまいました。宇奈月さんは横で笑いを堪えています。あの、これ、本当に大丈夫なんでしょうね?

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