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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第三章(城上女子) VS南五和高校
79/374

72(ひかり) 曲者

 ローテもまもなく一周しようかというところ。岩村いわむら先輩がスパイクを決めたくらいから、こちらの硬さも取れてきたように思います。


 結崎ゆいざきはる先輩に高い速攻を決められ、6―10。


 相手のサーバーは、その結崎先輩です。ばしっ、とフローターサーブが藤島ふじしまさんのところへ。藤島さんは正面で取りますが、少し力が入ってしまったのか、ネットに近いボールが上がります。


「ごめんっ!」


「なんのー!」


 ぴょん、と宇奈月うなづきさんはツーアタックでも打つように飛び上がります。もちろん、後衛バックの宇奈月さんがツーを打つのは反則なので、


「ねねちん! かむかむ!」


 と霧咲きりさきさんを呼びます。霧咲さんはボールと宇奈月さんの動きを見ながら、速攻(Aクイック)へ。宇奈月さんは右手を伸ばし、ワンハンドでボールに触れ、とんっ、と霧咲さんに合わせます。


 ブロックはぴったり二枚。強打スパイクは止められると判断したのか、霧咲さんは手の平ではなく指の腹でボールを捉え、手首を使って押すように後ろへ飛ばします。それがフェイントを警戒して前に詰めていた生天目なばため先輩の意表を突いて、コートの奥へ決まります。


「さんくす、ねねちん!」


「あんたも……よく届いたわね」


 ぱちんっ、とハイタッチ。なんだかんだで息の合った二人です。互いにセッター経験者だからでしょうか。


「ひかりん? どうしたの?」


 ぼうっと見ていたら、宇奈月さんがボールを持ってやってきました。


「いえ。なんでもありません」


「そ? じゃあ、ほいっ! ナイッサーよろしく!」


 宇奈月さんはにこにこ笑ってボールを渡します。私はそれを受け取って、宇奈月さんの大きな瞳を覗きこみます。


「何か言いたそうですね?」


 それは根拠のない指摘でしたが、果たして、的中しました。宇奈月さんは目を細めます。


「むふふ、さすがひかりん。わかってらっしゃる」


「……それで、なんですか? 心配されずとも、サーブならちゃんと入れますよ」


「そこは心配してないよ。ただ、ちょっとお願いがあって」


 はて。なんでしょう。


「次のサーブ、リベロの人の真正面に打ってほしいんだ」


「そのココロは?」


「ここらで差を詰めておこうと思ってさ」


 にこにこ顔でそう言い放つ宇奈月さん。通常、レシーブの得意なリベロにサーブを打つのは悪手ですが、何か企んでいることがあるのでしょう。この人は試合になると途端に曲者になります。


「わかりました。やってみます」


「ありがとー」


 宇奈月さんはネット際に戻ると、霧咲さんと藤島さんにも声をかけます。


 スコア、7―10。


 私はサービスゾーンに立ちます。他校を相手にサーブを打つのは、かなり久しぶりです。


 ここで外したら宇奈月さんに申し訳が立ちません。慎重に、丁寧にいきましょう。


 私は呼吸を整え、とても目立つ真っ黄色(カナリアイエロー)の髪の持ち主に、視線を固定しました。

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