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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第三章(城上女子) VS南五和高校
71/374

64(透) 立ち上がり

 城上しろのぼり女子VS(みなみ)五和いつわ


 相手の部長――前髪ぱっつんさんが放ったサーブは、北山きたやまさんのところへ。


 北山さんは、この一週間で基本のパスはかなり上達した。でも、サーブカットはまだまだだ。持ち前の運動神経で、落下点を見極めて正面に回り込むまではできるが、そこからボールを目的のところへ『運ぶ』のは、一朝一夕にできることじゃない。


「うぬっス!?」


 北山さんのカットは、肘の近くに当たったのか、大きく跳ねて後ろに逸れる。岩村いわむらさんがそれを追う。間に合いそうだけど、落下点はエンドラインより後ろ。二段トスは厳しいか。


とおるちゃん、お願ぁい!」


 ぽーん、と綺麗な山なりのボールが飛んでくる。タイミングは取りやすい。ただ、さすがにネットから離れ過ぎている。私は軽くジャンプして、ばしっ、とミート優先のアタックを相手コートに打ち込む。


「らあああっくしょおおおお!!」


 うっ……リベロの黄色い人の正面。完全にチャンスボールになってしまった。もっと際どいコースを狙うべきだったかな? いや、でも、それでアウトになったら元も子もないし……むむむ。


 なんてぐちぐち悩んでいるうちに、相手の攻撃。


 セッターのなで肩さんが前衛だから、攻撃は二枚。センターの珠衣ミィさんとレフトの眼鏡ポニーさん。一発目だしレフト――いや、一発目だからこそ珠衣ミィさんか。


 結論から言うと、その予想は当たった。


 けど、止められなかった。


 だんっ、


 とターン方向に決まるAクイック。霧咲きりさきさんの上を抜かれた格好だ。指は掠めていたみたいだけど、珠衣ミィさんのクイックはかなり重い。半端なブロックじゃ止められない。


「ナイスキー、珠衣ミィ


「当然です! なんたって珠衣ミィですからっ!!」


 きらーん、なんて効果音が似合うポーズで喜びを表す珠衣ミィさん。相変わらずだったので、ちょっと笑ってしまう。


「悪い、藤島ふじしま、抜かれたわ――って、どうしたの?」


「あっ、いや、ごめん。なんでもないよ」


「向こうのセンター、高い上に重いわね。手がびりびりするわ」


珠衣ミィさんは、中三のときに県選抜だった人だよ。控えだったけど、強いのは今見た通り。たぶん……向こうの攻撃の中心はセンターなんじゃないかな。あと、あのセッターの人だけど」


「ちょっとタイミング取りにくいわよね。ボールコンタクトまではゆったりなのに、触れた瞬間加速するあの感じ。緩急に慣れるまで、もう少し掛かるかも」


「見た感じ、トスそのものは霧咲さんと同じくらい速いと思う。ブロック振られないように気をつけて」


「了解。しかし、ミドルブロッカーも楽じゃないわねぇ」


「楽なポジションなんてないよ」


「ま、そうなんだけどさ」


 そう言って、霧咲さんは右手で眉間に触れた。眼鏡の位置を直す仕草クセが咄嗟に出ちゃったのかな? 部活中は眼鏡掛けてないのに。


 なんてぼんやり見ていると、霧咲さんの顔がみるみる赤くなった。


「い、一本取るわよ、藤島!」


「あ、う、うんっ!」


 スコア、0―1。


 笑い合ったり照れ合ったりするくらいの余裕は、まだ、ある。


 大事な立ち上がり。傷が深くならないうちに、取り返さなきゃ。

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