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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第一章(城上女子) AT城上女子高校
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2(胡桃) Vサイン

 ――城上しろのぼり女子高校・昼休み・体育館


 城上女子高校、通称:城上女じょじょじょの体育館は新しくて綺麗だ。


 二階建てで、一階には多目的室、武道室、トレーニング室などがあり、二階はバスケコート二面分のいわゆる普通の体育館になっている。


 外観は白く、宮殿をイメージしたデザインになっている。中膨れの柱が佇立していることから、生徒の間では『パルテノン』と呼ばれている。なお正式名称は『白亜館はくあかん』だ。


 二階の体育館は基本的に常時開放されていて、昼休みにはそれなりの賑わいを見せる。


 わたしこと立沢たちさわ胡桃くるみは、現在、バスケットゴールの下に立ち、籠に入ったバレーボールを取り出してはせっせと床に叩き付けていた。


 バレーボール部の後輩の、自主練の相手をしているのだ。


 内容は、ワンバウンドしたボールをトスし、数メートル離れた位置にあるバスケゴールに入れる、というもの。


 昼休みの短さ、食後であること、後に授業が控えていることなどを考慮して、最近はこのような二段トス(セッターの定位置とはズレたところから上げるトス)の練習を行っている。


「体勢が崩れてもリングには当たるようになってき、た」


 ぼむっ、


「そぉうです……ねぇっ!」


 としゅ、


 と彼女の手から飛び出したボールは山なりの軌道を描き、見事、リングに触れずにゴールした。


 フリースローライン以上スリーポイントライン未満の距離からのスパシュー。セッターではない彼女が上げる二段トスとしては上々の精度だ。


 きりが良かったので、わたしたちは散らばったボールを拾うことにした。


「新入部員、いっぱい入ってくるといいですねぇ」


 抱えたボールを籠に戻しながら、おっとりと間延びした声で後輩が言う。その声に違わず彼女は外見もおっとり系で、高校生だからという理由で染めた栗色のボブカットや小さくてつぶらな瞳が、わたしの家のベッドの枕元にあるテディベアによく似ている。


「下手すると、この練習、無駄になる」


「もぉ、胡桃さん、縁起でもないこと言わないでくださいよぉ」


「最悪、足りないときは、わたしが出る」


「本当ですかぁ!?」


 待て。最悪の可能性を提示したのに、なぜ喜ぶ後輩よ。


 あ、言い忘れていたが、わたしはマネージャーだ。選手ではない。バレーを観るのが好きで中学からバレーを始めたはいいもののスペックが散々(身長142センチ、体重*キロ、50メートル走12秒、握力11キロ、上体起こし2回、etc)だったので、高校では最初からマネージャーを希望した。


「ぜひ胡桃さんと一緒に試合に出たいですぅ」


「わたしを殺す気か」


「えぇぇー?」


 後輩の期待のこもった視線から逃れるように、わたしは体育館の入口付近まで転がったボールへと向かう。


 と、ほぼ同時に、がらがらっ、と体育館の入口の扉が開く。そして、現れた二人組のうちの背の高いほうが、わたしの取ろうとしていたボールを拾い上げた。


 目が、合う。


 ジャージの色からして新入生。背は160センチ以上ある。すらりとしなやかな体躯に、涼やかなポニーテールと均整のとれた顔立ち。小学校時代からちびっ子人生を送ってきて今後も成長の見込みのない人間なら誰もが一度は憧れるだろうキレイ系美少女だ。


 少女は拾い上げたボールと、わたしと、籠付近にいる後輩とを一度ずつ見ると、感極まったように目を潤ませて破顔した。


「もしかしてバレーボール部の方ですか!?」


 きーん、とよく通る声が体育館中に響いて、こだまする。


 その大声とにこにこの笑顔で、キレイ系美少女のイメージが一瞬で吹き飛ばされた。


「……そうだけど、あなたは?」


 わたしは耳を押さえて、訊いた。


「はいっ! 私は一年二組、宇奈月うなづき実花みか! 希望部活動はバレーボール部です! ぶいっ!!」


 宇奈月と名乗る少女は、そう言って、右手でVサインを作り、左手で掴んだボールをわたしに突き出してきた。


 ……へえ。


 謎のポーズ(?)で自己紹介する少女と、その後ろにいる小さめの子を見て、わたしは思わず微笑んだ。

登場人物の平均身長:152.3cm


<バレーボール基礎知識>


・バレーの遊び方


 バレーボールは、一般的に六人VS六人で遊びます。概念的に近いのは、蹴鞠や羽根つき、バドミントンです。


『相手コートから飛んできたボールを三タッチ以内に再び相手コートへ返す』というやり取りを、ネットを挟んで繰り返します。相手コートにボールを落とせば、1点獲得です。そして先に得点が一定数に達したほうの勝ちです。


 このとき、一タッチ目をレシーブ(受け)、二タッチ目をトス(繋ぎ)、三タッチ目をアタック(返し)と言います。


 ボールをキャッチしたり、同じ人が二度続けてボールに触れたり、相手コートに返すまでに四回以上ボールに触れたりすると、反則になり、相手の得点となります。


・トスについて


 レシーブする人をレシーバー、アタックする人をアタッカー。そしてトスをする人をトサー、ではなく、セッターと言います。


 その定位置は通常、ネット際の、中央から少し右側(自軍コート後方から見て)にズレたところです。


 この定位置以外から上げるトスを、二段トスと言います。


 バックゾーンからサイドアタッカーに二段トスを上げる場合、ネット両端につけられているアンテナという棒を目印にするといいです。

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