表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第二章(城上女子) VS音成女子高校
35/374

31(透) 裏エース

 9―9。同点。成女なるじょのサーブは、セッター対角の巻き髪さん。


 ボールは三園みそのさんのところへ。


 三園さんは丁寧にボールを返す。Aカット。そこから宇奈月さんは、ライトから斜めにクイックへ切り込んだ相原あいはらさんを使う。


 ばしっ、と相原さんは速攻をきっちりクロスに決める。


「ブロック遅れてるわよ、和美かずみ!」


「つーちゃんの切り込みが速過ぎるんだよ〜」


愛梨あいりは相手の攻撃を見てサイドに指示を出す!」


「は、はい!」


「特に今はサイドが低いんだから、遅れたら上を抜かれるわよ。しっかりね!」


「ヘーイ、やってますなー、鬼キャプテン!」


美波あんたはなんで今ブロック跳ばなかったの! サボってんじゃないわよッ!」


「うおっ、マジおこ!?」


 相原さん、厳しいっ! ちょっと恐い! 北山きたやまさんも思わず一歩引くほどの迫力!


「相原殿……格好いいっス……!」


 引いてなかった。むしろ惹かれていた。


 とまれ、これで10―9。


 ローテが回って、こちらの前衛は、岩村いわむらさん、北山さん、宇奈月うなづきさん。アタッカー二枚で、そのうち一人は初心者の北山さん。一番攻撃力が弱まる布陣だ。


 サーブは相原さん。ブロックポイントを取るのは厳しいだろうから、できることならサーブで崩してほしい。


 ばちっ、と鋭いサーブが放たれる。厳しいコースを突かれた巻き髪さんが、レシーブを後ろに逸らした(ナイスサーブ!)。それをマリチカさんが体勢を崩しながらオーバーハンドで懸命に繋ぐ。ボールは低い軌道で、センターとレフトの間の、ネットから離れた位置へ。


 後ろから突くように上げられた、低くて速いトス。難しいボールだ。たとえ打てても、体重の乗ってない中途半端な打球にしかならない。強く打とうと力むとネットに掛ける可能性がある。私ならオーバーハンドで確実に返すことを優先する。


 それを、


「えいやっ」


 ひゅっ、と腕を鞭のようにしならせ、裏エースの人は苦もなく打ち抜いた。正確にコントロールされたボールは、私の予想を大きく上回る速度で、誰もいないスペースへ。動揺した私は手も足も出ない。三園さんは反応しているが、距離があり過ぎる。


 だんっ、と渇いた音を響かせ、床を跳ねるボール。


「さんきゅーバタミ! やるじゃねーか!」


「わたしはただ繋いだだけだよ〜」


 スコアは10―10。私はがっくりと肩を落として、俯く。


 うぅ、またやっちゃったよ。もっとちゃんと構えてれば取れたかもしれないのに……。


「いやはや、あのボールを決定打にできるとはさすがですね」


「えっ……?」


 声のしたほうに振り向くと、どういうわけか三園さんがすぐ横にいた。いつもの、何を考えているかよくわからない顔で、裏エースの人を見ている。


「お互い、気を引き締めていきましょう」


 そう言った三園さんの目が、ふっと、私を向く。


 吸い込まれそうな、薄茶色の瞳。


「どうかしましたか? 大丈夫ですか、藤島ふじしまさん?」


「えっ!? いや、ううん、なんでもない!」


「ならよいのですが」


 そのままサーブカットの位置につく三園さん。


 ……ん?


 ああっ、そっか! だから今、三園さんは私の横に来たのか!


 うわっ、わた、は、恥ずかしいよおおお……!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ