ねたばれ2
『ねたばれ』は、城上女バレー部の日常を主に台詞で四コマ漫画風に描くものです。過度な期待はしないでください。
<登場人物>
宇奈月実花:バレー大好き少女。一年生。声が大きい。
三園ひかり:中学時代はリベロ。一年生。背が低く、癖っ毛。
藤島透:中学時代はレフト。一年生。背がとても高い。
霧咲音々:中学時代はセッター。一年生。バレーなんて興味ない、と言っているが……。
北山梨衣菜:中学時代は水泳部。一年生。漫画『High-Q!!』に感銘を受けた。
岩村万智:城上女バレー部・主将。二年生。テディベアに似ている。
立沢胡桃:城上女バレー部・マネージャー。三年生。
相原つばめ:成女バレー部・キャプテン。三年生。
* ルール紹介
実花「というわけで!」
ひかり「何がですか」
実花「バレーボールのルールを紹介しよう!」
梨衣菜「どんどんぱふぱふー!」
* レフト・センター・ライト
万智「バレーは六人でやるスポーツでぇす。選手の役割は位置ごとに違うのでぇ、ポジションの呼び名も役割と位置の二種類あります。まずは位置のほうからぁ」
実花「これは見たまんまだね!」
―――ネット―――
FL FC FR
―アタックライン―
BL BC BR
―-エンドライン-―
ひかり「ネットに向かってコートの左側にいる人をレフト、真ん中をセンター、右をライトと言います」
透「ネット側をフロント(前衛)、エンドライン側をバック(後衛)って言うよ」
音々「英字はその頭文字ね」
実花「フロント(前衛)でレフトが定位置になる人をレフト、センターが定位置になる人をセンター、ライトが定位置になる人をライトって呼ぶよ!」
つばめ「今回のチームだと、万智と藤島さんがレフト、梨衣菜と霧咲さんがセンター、私と宇奈月さんがライトだったわね」
梨衣菜「ふむふむっス!」
* ウイングスパイカー
万智「あとは、位置じゃなくて、役割ごとのポジションの名前だねぇ」
透「まず、レフトとライト――サイドからスパイクを打つ人のことを、ウイングスパイカーって言うよ」
つばめ「ウイングスパイカーは、攻撃の中心。必然的にトスもここに集まるから、スパイク力が必要とされるポジションね」
梨衣菜「エースっスね!」
つばめ「そう、『High-Q!!』でいうところの東峰ね。このチームなら万智と藤島さん。中・高校生では、エースと言えばレフトの場合が多いわ」
梨衣菜「ライトじゃダメっスか?」
ひかり「別にダメってことはないですよ。一般的に、右打ちでスパイクが強い人はレフトに置かれ、左打ちでスパイクが強い人はライトに置かれますが、このとき左打ちの人のほうが強いなら、その人はライトでエースってことになります。
ですが、世の中は右利きのほうが多くて、当然バレーも右打ちが多いです。すると、人数比的に、チームで一番スパイクが強い人=右打ちである確率が高くなりますね。結果、エース=チームで一番スパイクが打てる人≒右打ち≒レフトってなるのです」
梨衣菜「そもそも、どうして右打ちはレフトに置かれるっスか?」
透「右利きがスパイクを打つ場合、自分の右側からトスが来たほうが打ちやすいからだよ」
梨衣菜「?」
実花「まりーな、ちょっとスパイクフォームのおさらいをしてみるよ。右利きは、こう踏み込んで……こう跳んで、こう右腕を振り上げる」
つばめ「見て分かる通り、利き腕である右腕を引くと、胸が右側を向くし、顔も右側を向くわね。当然、右側からトスが飛んできたほうが、ボールが見やすい。左側から飛んでくるボールを見るためには、首を左に捻って、左肩越しに見ることになる。やりにくいわね」
梨衣菜「おお、本当っス!」
音々「あと、アタッカーの利き腕がセッター側にあれば――つまりアタッカーの打点がセッター側にあれば、セッターがボールに触れる位置とアタッカーがボールを打つ位置が物理的に近付く。
互いのボールコンタクトの位置が近付けば、当然、トスからアタックまでの時間が短くなる。これは特にクイック攻撃で大きなアドバンテージになるわ。だから、右打ちがクイックに入る場合は、セッターの左側へ踏み込むのよ」
梨衣菜「なるほどっス!」
音々「で、そういう理由があるから、セッターは基本的にレフト側を向いているのね」
梨衣菜「ほほう!」
* ミドルブロッカー
万智「次に、ミドルブロッカー。その名の通り、センターでブロックをする人のことでぇす」
つばめ「私の本来のポジションはここ。センターは前衛三人の中心にいるから、ブロックをするときに、相手のセンターからの攻撃はもちろん、レフト・ライトからのサイド攻撃にも素早く対応できる。
ブロッカーという役割上、背の高い選手がここをやることが多いわ。『High-Q!!』では月島がそう」
実花「攻撃では、相手をかく乱するためにクイックスパイクを打つことが多いよ! 『High-Q!!』の日向はこの役割に適しているから、低身長ながらミドルブロッカーをやっているんだねっ!」
梨衣菜「おお、そういうことだったっスね!」
* セッター
万智「あとは、トスを上げる人」
梨衣菜「『High-Q!!』の影山、もといセッターっスね!」
音々「説明は不要ね。セッターはとにかくトスを上げるわ」
梨衣菜「霧咲殿は元セッターでしたっスね。で、宇奈月殿もセッター。今回はセッターが宇奈月殿ってことみたいっスけど、霧咲殿はセッターしないっスか?」
音々「ええ。今回のあたしは、あんたと同じミドルブロッカーよ。チームに複数人セッターがいる場合、ツーセッターってシステムを採用することもできるけど、今日は普通のワンセッター。だから、レシーブは常に宇奈月に返してね」
梨衣菜「まずレシーブを返せるかどうかわからないっス!」
ひかり「ボールに触っていただければなんとでもします」
* リベロ
万智「最後に、リベロだね。これは守備専門の特殊なポジション」
透「三園さんのポジションだね」
ひかり「『High-Q!!』でいう西谷です」
梨衣菜「ひたすらレシーブをする人ってイメージはあるっスけど、細かいルールは……と聞かれると全然わからないっスね」
ひかり「まあ、今回、私と北山さんは直接の関わりがないので、おいおい覚えていけば大丈夫ですよ」
梨衣菜「よろしくお願いしまっス! 守護神!」
ひかり「ベストを尽くします」
* マネージャー
胡桃「マネージャーはマネージャー」
梨衣菜「選手ではないっスね!」
胡桃「そう。高校生の大会では、監督1人、コーチ1人、マネージャー1人、選手12人の計15人までベンチに入れる。この15人のうち6人は常にコートの中だから、ベンチの椅子は、このように9脚あればいい」
梨衣菜「なるほどっス!」
* ローテーション1
万智「ローテーションに慣れてしまえば試合もなんとかなりまぁす!」
梨衣菜「ローテっスね、ローテ!」
つばめ「最初に決めたポジションから、サーブ権を得るごとに時計回りに一つずつ位置を移っていく。そして、バックライトの位置にきた人がサーブを打つ。ローテーションはこれが基本」
胡桃「今回の場合だと、初期配置がこれ」
―――ネット―――
藤島 霧咲 宇奈月
相原 北山 岩村
胡桃「そして、サーブ権を取ると」
―――ネット―――
相原 藤島 霧咲
北山 岩村 宇奈月←サーバー
胡桃「こうなるわけ」
北山「あれ? 自分、センターなのにバックレフトになっちゃったっス。これはこのままバックレフトをやらなきゃなんスか?」
実花「この位置は、サーブが打たれたら自由に入れ替わっていいんだよ」
ひかり「つまり、宇奈月さんがサーブを打った瞬間に、前衛も後衛も」
―――ネット―――
藤島 霧咲 相原
岩村 北山 宇奈月
音々「って感じに、各々の定位置に移動するのね」
万智「でも、サーブが打たれるまでは、最初の位置関係を守らないと反則になりまぁす」
梨衣菜「コートポジションを守る……」
ひかり「自分から見て、前後左右のプレイヤーとの位置関係さえ気をつければ大丈夫です。
バックレフトにいた場合、サーブが放たれるまでは、フロントレフトより後ろ、バックセンターより左にいなければなりません。
あるいは、フロントセンターなら、フロントレフトより右、フロントライトより左、そしてバックセンターより前にいなければなりません。
この位置関係さえ守っていれば、例えばフロントセンターがバックライトより後ろに行ったり、バックレフトより左に行ったりすることも可能です。
位置関係を守らなくてはならない相手は、自分の前後左右のプレイヤーだけ。斜めにいるプレイヤーや離れているプレイヤーとは、直接の関係はありません」
梨衣菜「サーブを打ったらすぐ入れ替われるのに、どうして律儀に位置関係を守る必要があるっスか? どの道すぐ定位置に動くなら、最初から入れ替わってても問題ない気がするっスけど」
ひかり「味方がサーブを打つときは、確かにその通りですね。入れ替わるのがサーブを打つ前でも後でも、どの道全員が定位置につくので大差ないです。
ですが、相手がサーブを打ってくるときは、そうもいきません。打つ前に入れ替われるなら、こちらはベストのポジションでサーブカットに臨むでしょう。
しかし、実際は打った後に入れ替わらなければならないので、それができません。入れ替わっているうちにサーブが来てしまうからです」
つばめ「サーブカットから攻撃をするとき、そのパターンやフォーメーションがローテーションの影響を強く受けるのね。ま、この辺りはやってみないと実感湧かないと思うわ」
梨衣菜「ふむむむ……」
* ローテーション2
万智「それからぁ、ローテーションと言えば、なんといっても前衛と後衛でぇす!」
つばめ「自分が前衛にいるときは、特になんの制限も無し。でも、後衛にいるときは、フロントゾーンからのスパイク、それにブロックができなくなるの」
梨衣菜「フロントゾーンっていうのは、アタックラインより前のスペースっスよね!」
実花「そう! だから、ネット際でスパイクが打てるのは、常に前衛の三人だけってことになるんだよ!」
音々「セッターが前衛にいるときは、前衛三人のうちアタッカーが二人ってことになるから、攻撃力が下がるわ。
プロの世界だと、これを解消するために、セッターの対角にバックアタックの打てるスーパーエースを置くことが多いわね」
梨衣菜「バックアタック?」
透「後衛の選手でも、バックゾーンからならスパイクを打つことができるんだよ。ジャンプするときに、踏み切り足がアタックラインを超えていなければいいの」
ひかり「ちなみにリベロはバックアタックも打てません。正確に言うと、『ネットより高い位置から返球すること』を禁じられています」
梨衣菜「なるほどなるほどっス」
万智「チームのメンバーごとに、得意な攻撃や決定力は当然違うから、ローテーションによって攻撃にバリエーションが生まれるんだねぇ」
つばめ「ちなみに成女では、エースの鞠川千嘉、キャプテンの私、それにセッター対角の芽衣が前衛にいるときが、一番攻撃力が高いローテになるわ」
胡桃「マリア様ローテね」
梨衣菜「今回のうちのチームだとどうなるっスか?」
ひかり「最も平均身長が高くなるのは、藤島さん、霧咲さん、相原先輩が前衛のときですね」
梨衣菜「うおっ、確かに全員の身長が自分(170)以上っス!!」
万智「逆に私、梨衣菜ちゃん、実花ちゃんが前衛のときは大変そうだねぇ」
梨衣菜「自分が初心者で、宇奈月殿はセッターだから、攻撃はほぼ岩村殿一人に頼ることになるっスもんね」
つばめ「まあ万智なら心配は要らないでしょ」
胡桃「そうだね」
万智「えへへ」
* ローテーション3
ひかり「あとは、前衛同様、後衛もローテーションごとにメンバーが異なり、守備のフォーメーション、位置ごとの役割も色々あるのですが」
つばめ「細かいことは抜きにして、今回は、レフトの人がバックレフト、センターの人がバックセンター、ライトの人がバックライトを守ることにしましょう」
万智「サーブカットは、基本的な五人レシーブ体制。Wのカシオペア型フォーメーションを取りまぁす」
胡桃「細かくはそのつど作戦ボードで教えてあげる」
梨衣菜「あざっス!」
* 最後に
万智「どんな競技でも慣れるまでは大変だと思いますぅ。が、何よりも大切なことは、元気な挨拶とスポーツマンシップでぇす! 明るく楽しく、味方も相手もお互い怪我のないよう、正々堂々プレーしましょーぅ!」
「「「はい!」」」