ねたばれ1
『ねたばれ』は、城上女バレー部の日常を主に台詞で四コマ漫画風に描くものです。過度な期待はしないでください。
<登場人物>
宇奈月実花:バレー大好き少女。一年生。声が大きい。
三園ひかり:中学時代はリベロ。一年生。背が低く、癖っ毛。
藤島透:中学時代はレフト。一年生。背がとても高い。
霧咲音々:中学時代はセッター。一年生。バレーなんて興味ない、と言っているが……。
北山梨衣菜:中学時代は水泳部。一年生。漫画『High-Q!!』に感銘を受けた。
岩村万智:城上女バレー部・主将。二年生。テディベアに似ている。
道重幸子:中学時代はバスケ部。一年生。透、音々のクラスメイト。
星野珠実:中学時代はバスケ部。一年生。幸子と同中。実花、ひかりのクラスメイト。
* 身長差1
――体育・ミニゲーム後・色々あって談笑中。
幸子「にしても、藤島さんって本当に背高いよねー。何センチあるの?」
透「この間の身体測定では……181センチ、だった」
音々「ちなみに、前に計ったときからは?」
透「……2センチ伸びてた……」
実花「ひかりんはー?」
ひかり「私は前に計ったときから1センチも伸びてませんよ」
珠実「ひかりん、150ある?」
ひかり「いえ。147センチです」
幸子「藤島さんとは34センチ差かぁ」
珠実「おっ、ぎゅっとしやすい身長差に近いね!」
透「ぎゅ、えっ!? な、なにそれ!?」
珠実「ネットで良く見るコピペだよ。32センチの身長差が一番ぎゅっとしやすいんだってー」
透「ぎゅっ!? 三園さんに、ぎゅっと……!!」
ひかり「藤島さん? 大丈夫ですか? 顔真っ赤ですよ?」
音々(あれ? 『に』……? 『を』じゃなくて?)
* 身長差2
幸子「同じやつで、キスしやすいのが12センチ差ってのもあるよね」
珠実「12センチ差って実際どんなもんなの?」
音々「あたし(172)と道重(159)くらいね」
ひかり「それを言うなら、私(147)と道重さん(159)がぴったりです」
幸子「なんと! これは両手に花ならぬ上下に花ですな!」
珠実「検証してみましょうよ! 検証!」
実花「よしっ、じゃあ、まずはひかりんからだ! むちゅー!」
ひかり「おいやめろです」
* 身長差3
珠実「あと、理想のカップルは15センチ差らしいよ。さあ、みんな自分の身長に15を足すのだ!」
幸子「私、174! ほどよい!」
珠実「私は176! こんなもんね!」
ひかり「162ですか。なるほど」
音々「187は……あまり見ないわね」
透「えっと、私、196になるんですがそれは……」
実花「大丈夫だよ、とーるう!」
透「えっ?」
実花「私、180だよ!」
ひかり「いや大丈夫の意味がわかりません」
* バスケットボール
幸子「いやー、でも話せば話すほど、藤島さんの背の高さがわかるわ」
透「あはは……」
珠実「ねえ、藤島さん! ちょっとダンクに挑戦してみない?」
透「え? い、いや、さすがにダンクは無理だよ。中学のときやってみたけど」
音々(やってみたんだ……)
幸子「でも、2センチ伸びてたんでしょ? 今ならいけるかも!」
珠実「そうだよ! 藤島さん、ジャンプ力もすごいし!」
透「じゃ、じゃあ一回だけ……たぶんご期待には副えないからね……?」
実花「はいっ、ボールどーぞ!」
透「あ、ありがと」
わしっ。
幸子(ええっ!? ボール片手で持った!?)
珠実(すごいナチュラルに片手持ちしたわ!)
音々(バスケットボールを片手で持てる女子初めて見た……)
ひかり(さすが藤島さんです)
透「えっ? な、なに……?」
* バスケットゴール
透「え、えっと、じゃあ……行きますっ!」
幸子・珠実「頑張って! 藤島さんならできる!」
透「む、無理だってばー」
音々(と言いつつできてしまいそうな気がする)
ひかり「頑張ってください、藤島さん」
透「えっ、が、わ……わかったよっ!!」
だっだっだっ、
透「えいっ」
実花「おおっ!」
幸子・珠実(跳んだ!)
音々・ひかり(高いっ!)
透「やっ!」
がんっ!!
幸子・珠実・音々・ひかり(リング直撃!?)
実花「おおおー!」
透「あぅぅ、やっぱり無理だったかぁ……」
幸子(藤島さん、なんかしょんぼりしてるけど!)
珠実(バスケットゴールのリングの高さは305センチ!)
音々(片手持ちしたボールをリングに直撃させるってことは)
ひかり(最高到達点は一体どれほどになるのやら)
透(ううぅ……みんな黙っちゃった。変な空気になっちゃったよぉ……)
実花「ねっ! とーるう! もう一回もう一回!!」
* High-Q!!
――音成女子へ移動中
梨衣菜「ところでっス!」
音々「なによいきなり」
梨衣菜「自分、まだ三園殿の意見を聞いてないっス!」
ひかり「私の意見、とは?」
万智「もちろん『High-Q!!』のことだよねぇ?」
梨衣菜「いえっス! その通り!」
ひかり「あー……」
実花「私も聞きたいなー! ぜひぜひ!」
透(わ、私も気になる……! すごくっ!)
ひかり「まあ別に隠すつもりはないので言いますが」
梨衣菜「お願いしまっス!」
ひかり「日向総受けです」
梨衣菜「ふぉぉぉぉおぉぉ総受けとな!!」
万智・実花「おぉー!!」
透(三園さんは総受け……!? 三園さん総受けっ!?)
音々「ちょ、藤島! 急にふらふらしてどうしたの!? あとさっきからみんなが話してるやつなんなの!? 気になるんだけど!!」
* 布教用
梨衣菜「わかったっス! 霧咲殿! 自分、明日『High-Q!!』全巻持ってくるっス!」
音々「えっ? 全巻を一気に? 有難いけど、北山は困らないの? 毎日読むくらい好きな漫画なんでしょ?」
梨衣菜「問題ないっス! 布教用っスから!」
音々「え、えっと、その……不教養でごめん」
梨衣菜「? 何を言ってるっスか、霧咲殿」
音々「あたしもあんたに同じことを言いたい」
* 後日
――後日・霧咲家
音々「で、これが『High-Q!!』。バレーを題材にした少年漫画なのね。どれどれ」
読書中。
音々「ふーん……この影山ってやつ、なかなかやるじゃない」
読書中。
音々「面白いわね……」
読書中。
音々「……ふう、読み終わった」
音々「………………」
音々「どうしよう。読み終わったけど北山たちが何を言ってたのかわからない」
* さらに後日
音々「はい、北山。ありがとう」
梨衣菜「いかがでしたっスか!?」
音々「とても面白かったわ。まだ続くみたいだし、せっかくだから一巻から集めてみようと思う」
梨衣菜「それは何よりっス!!」
音々「でも、その……なんだっけ? 日影?」
梨衣菜「そう! 日影っス!」
音々「悪いんだけど、ちょっと、意味がよくわからなかったわ。どういうことなの?」
梨衣菜「日向が攻め! 影山が受けってことっス!」
音々「っ! わかったわ!」
梨衣菜「おおおお!!」
音々「で、でも、漫画を読んだ限りでは、影日、って言えばいいの? 影山が攻めで日向が受けに思えたけど」
梨衣菜「よし、霧咲殿! ちょっと戦争するっスか!!」
音々「えええぇー!?」
* 攻め受け
音々「ま、待って! あたしなんか変なこと言った?」
梨衣菜「変ではないっス! 趣味嗜好は人それぞれ! ただ自分とは相容れないというだけっス!」
音々「で、でも、やっぱり、日向だと性格的にも遠慮しちゃうし、影山が攻めるのが普通なんじゃない?」
梨衣菜「逆に考えるっス! 日向は性格的に強気に出れるタイプじゃない――だからこその攻めだと!!」
音々「う、上手くいかないんじゃ……?」
梨衣菜「そこがいいんじゃないっスか!? ぎこちなくても、ちょっとくらい下手でも、好きだから頑張れるんス! 足りない分は気持ちでカバーっス!!」
音々「な……なるほど」
梨衣菜「わかってくれたっスか!?」
音々「え、ええ。そうね。好きだから……自分から一歩踏み出す。うん、素敵だと思うわ」
梨衣菜「霧咲殿ー!!」
* 納得
音々(よし。ようやく北山たちが何を話していたのかわかったわ)
音々(みんなが話していたのは、誰が攻めて、誰が受けるのが似合うか、ってことだったのね)
音々(対人練習で、スパイクを打つ『攻め』。それをレシーブする『受け』)
音々(あたしは、上級者の影山がスパイクを打って、レシーブの下手な日向がそれを受ける……のが普通だと思った。実際、そういうシーンはあったし)
音々(でも、北山的には、逆なのよね)
音々(日向は影山ほど上手くないけど、バレーが好きだから、自分から一歩踏み出して、受けるだけじゃなく攻めもやってみる、と)
音々(日向はアタッカーだもんね。対人ではレシーブ側がトスを上げることになるから、そういう意味で、セッターの影山が受けに回るのは自然なこと)
音々(三園の言ってた総受けってのは……たぶん、誰からのスパイクでも受けるってことよね。人懐っこい日向が色んな人に『スパイク打ってください』って頼みにいくイメージかしら。リベロの三園らしい発想だわ)
音々(他にも専門用語があるみたいだけど……基本は攻めと受け。よし、これで次からは話についていけるわ!)
* さらに納得
梨衣菜「あ、そうっス、霧咲殿!」
音々「なに?」
梨衣菜「『High-Q!!』以外にも、楽しめる作品ってまだまだいっぱいあってっスね!」
音々「へ、へえ(バレーの漫画ってそんなにたくさんあるの……?)。例えば?」
梨衣菜「もう完結したっスけど、『白子のバスケ』っていう漫画もなかなか良いっスよ!」
音々(ん……バスケ? ああ、攻めと受けってことかしら。いや、でも、ディフェンスなら『受け』じゃなくて『守り』な気が……)
梨衣菜「あと、『Freedom!』っていう水泳のアニメとか!」
音々(え? 水泳で攻め受け……? クロール攻め、水飛沫受け、的な?)
梨衣菜「『泣虫ペダル』っていう自転車競技の漫画とか!」
音々(自転車!? どういうこと? コーナー攻めとか、上り坂受けとか、そんな感じ!?)
梨衣菜「『進軍の巨人』とか!」
音々(それ知ってる! でも、あれで攻め受け? 巨人総攻めってこと!? だとすると壁総受け? は?)
梨衣菜「他にもたくさんあるっス!!」
音々「ごめん、北山。あたし『High-Q!!』だけでお腹いっぱいだわ」
梨衣菜「そっスか! ま、興味が湧いたらいつでも言ってくださいっス!!」
音々「う、うん、ありがとう……」
音々(結局よくわからなかったけれど、深入りしないほうがいい世界だというのは、よくわかったわ)




