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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第二章(城上女子) VS音成女子高校
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16(梨衣菜) 音成女子高校

 うっス、北山きたやま梨衣菜りいなっス!


 城上しろのぼり女子高校――通称:城上女じょじょじょバレー部(仮入部中)一年、身長は170あるっス!


 ところで、自分、バレーは『High-Q!!(マンガ)』を読んだだけのド素人っスけど、これがあんまフツーのことじゃないってのはなんとなくわかるっス。


 自分たちは今、主将の岩村いわむら殿に連れられて(なお、マネージャーの立沢たちさわ殿は体育館パルテノンに残って遅れてくるかもしれない新入生を待つらしいっス)、大きな川を越え、音成おとなる女子なる高校の体育館にやってきていたっス。


 それはそうと、だんだん『っス』『っス』言うの疲れてきたんで、省く。


 音成おとなる女子高校――通称:成女なるじょの体育館では、成女バレー部と思われる二十数人の集団が、輪になって柔軟体操をしていた。


「おはようございまぁーす。城上女子バレーボール部でぇす。今日もよろしくお願いしまぁす。はい、みんなも」


「「「よろしくお願いします!」」」


 自分たちが挨拶すると、成女バレー部からも挨拶が返ってくる。


「「「よろしくお願いします!」」」


 そして、輪の中から一人、自分と同じくらいのタッパの(恐らく)上級生が、愛想のいい笑顔を浮かべて駆け寄ってくる。


「待ってたわよ、万智まち! で、そっちが話をしてた仮入部の――って、これまた随分と豊作じゃない! どうしたの!?」


「ふふふぅ、日頃の行いがよかったのかもですぅ」


 頬に手を当てて嬉しそうに口元を綻ばせる岩村殿。相手の上級生は「違いないわ!」と岩村殿の肩を叩いて、自分たちの前に進み出た。


「私は音成女子高校バレー部のキャプテンを務めている、相原あいはらつばめ。三年よ。あなたたちは城上女じょじょじょバレー部の新入部員(仮)よね。よろしく」


 相原殿はさっと自分たちを一人ずつ見分して、最後に岩村殿に視線を向けた。


「万智、どこまで説明してあるの?」


「大体は来る途中にしましたぁ」


 そう。なぜ、自分たちが、川向こうにある他校の体育館にやってきたのか。


 聞けば、城上女バレー部は去年の三年生が引退して以来、半年以上に渡り、メンバー不足のため公式戦に出られなかったとのこと。


 個人競技のある水泳と違い、チームスポーツであるバレーボールでは、メンバー不足は練習メニューにも大きな影響を与える。


 そこで、岩村殿は顧問に相談して、最寄りの高校である成女バレー部の練習に参加する許可を得たのだそうだ。


 以来、岩村殿は、もっぱら成女でバレーの練習を行ってきた。成女バレー部の一員として練習試合に出場したことも二度や三度ではないとか。


 もちろん、新入部員がある程度入ってくれば、本来あるべき形――城上女の体育館パルテノンで練習することになるのだが、今はまだ仮入部期間中なので、本入部までは成女に通って練習すると言う。


「ま、そういうわけなのね。あなたたちも、ここが第二のホームだと思って遠慮なくプレーしてちょうだい」


 そう言うと、相原殿は振り返って成女メンバーの様子を見る。柔軟体操がちょうど終わったところだった。


「あなたたちの準備ウォームが終わったら、改めて全集するわ。更衣室の勝手は万智がわかってるから、適当に使って。それじゃあ、またすぐに」


 駆け足でチームの輪に戻っていく相原殿。


 背格好的には同じくらいのはずのその背中は、つい見入ってしまうほど、大きかった。


「よぉしっ! では、みんな、まずは荷物を置きに行きましょう!」


「「「はい!」」」





 ――十五分後・成女体育館


 というわけで、着替えとウォーミングアップを終えた自分たちは、総勢三十名規模の円の一部となり、本日二度目の自己紹介をしていた。


城上女じょじょじょ一年、北山梨衣菜っス! バレーは初心者っス! バレーを始めようと思ったきっかけは、週刊少年ジャンクの――」


 自分の自己紹介で、場の盛り上がりは宇奈月うなづき殿の声芸(?)時を越えて最高記録を叩き出した。同志が多くて嬉しい。


「え、えっと……城上女じょじょじょ一年、藤島ふじしまとおる、です。よろしくお願いします……」


 が、上には上がいるもので。


「藤島透って……」「どなた?」「北地区の〝黒い(Headlong)鉄鎚(Hammer)〟って言って」「落山らくざん中の子だよね~」「あー……」「ああ、あの岩みたいな1番!」「去年の県選抜のエースですよ」「県内最強の高一ルーキーってことじゃねーか!」「それと一昨年も選抜メンバーだったとか」「んあっ。そっか、とーるか」「まーたえらい大物が来たねー」


 トリを飾った藤島殿――その体格からして只者じゃないとは思っていたけれど、本当に有名人だった。


 曰く、去年の県選抜チームのスターティングメンバー。


 要するに、この県にいる今の高校一年生でベストチームを作るなら、そのうち一人は藤島殿でほぼ確定ってこと。


 注目を浴びる藤島殿は、しかし、周囲の賛辞の声に恐縮しきって顔を真っ赤にしていた。


「はい、そこまで! じゃあ、練習を再開するわよ! ラインダッシュから! 城上女のみんなも、ここからはこっちに混ざってやってもらうから、よろしくね!」


「「「よろしくお願いします!」」」


「さ、て。ミナミ!」


「ヘーイ!」


 部員たちがコートの片側に集まっていく中、相原殿は副キャプテン(フルネームは覚えられなかった)のミナミ殿を呼んで何事かのやり取りを済ませると、自分のところへやってきた。


「北山梨衣菜さん、でよかったわよね。私は相原つばめよ」


「はい、北山っス! 自分がどうかしましたか、相原殿」


 相原殿はふわりと微笑んで、綺麗な発音で話す。


「成女では、初心者には必ず一人以上の先輩を教育担当として当てるようにしているの。本来、キャプテン・副キャプテンは例外で担当は持たないんだけど、あなたには特別に私がつくわ。わからないことがあったら、何でも聞いて」


「あ、ありがとうございまス! しかしながら、なぜ自分が特別待遇っスか?」


「私も『High-Q!!』の日影が好きだからよ」


 結論:世界は今日も平和!

登場人物の○女子率:90%超


<バレーボール基礎知識>


・中学県選抜について


 JOCジュニアオリンピックカップ全国都道府県対抗中学バレーボール大会。


 という大会が、毎年クリスマスから年末にかけて行われます。


 都道府県によってばらつきはあると思いますが、お話のモデルである県では、インターミドル(全国中学校体育大会)が終わった8月末に、県内の中学から選抜された選手でチームが組まれます。


 その後、土日などを利用して練習会を行い、大会を迎えます。

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