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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第一章(城上女子) AT城上女子高校
14/374

12(透) 勝者

 それから、試合はあからさまなスリーポイント合戦となった。


 霧咲きりさきさんと、宇奈月うなづきさんの、一騎打ち。


 暗黙の了解というか、両チームとも二人のシュートの邪魔をしない空気になっていた。


 霧咲さんが一本決めて、宇奈月さんが一本決めて、霧咲さんが一本外して、宇奈月さんが一本決めて、霧咲さんが一本決めて、宇奈月さんが一本外す。


 といった具合の、一進一退、互いに譲らぬ神経戦が続き、


 ついにスコアは、19―21。


 残り試合時間、7秒。


 タイムアウト以降、私、まるっきり外野だよ……。


「霧咲っ!」


 道重みちしげさんから霧咲さんへパス。先ほどから無口なスリーポイントマシーンと化している霧咲さんは、懸命に跳びすが三園みそのさん(コート上で彼女だけがこのスリーポイント合戦の空気を破ろうと必死だった)を寄せ付けず、シュートを放つ。


 ボールは、しかし、がつっ、とリングに阻まれ、落ちてくる。


 残り時間、4秒。


 このリバウンドを私が取って、決める。あるいは、適当に時間いっぱいボールを回せば、私たちの勝ち。


「ていやー!!」


 跳ね返ったボールに真っ先に反応し、食らいついたのは宇奈月さん。先ほどから八面六臂の大活躍。


 でも、


「させないっ!!」


 負けっぱなしは嫌だ!


「わはっ!?」


 ボールを掴んだのは、私だった。ポジション的には宇奈月さんのほうがいいところにいたけれど、私の身長ならそれくらいのハンデはハンデにならない。跳べさえすれば、こっちのもの。


 がっちり両手でボールを掴み、落ちていく、空中。


 笑顔の宇奈月さんと目が合って、思わず、私も笑みを返す。


 よし……これで、私たちの、


「隙ありです――」


「っ!?」


 一瞬、私は何が起こったかわからなかった。


 何か、小さな影みたいなものが足下から這い上がってきて、気付いたら、私の手からボールが消えていた。


 着地際で三園さんにスティールされたんだ、と理解したのは、試合が終わってから。


「宇奈月さんっ!」


「あいよー!!」


 私からボールを奪った三園さんは、着地と同時に走り出していた宇奈月さんに、バウンドパスを送る。


 宇奈月さんがボールを手にする。


 残り、1秒。


「わっ――しょおーい!!」


 えええぇ!?


 走っていた宇奈月さんが、謎の掛け声とともにボールを思いっきり放り投げた。


 そこで、ホイッスル。


 まさか……!?


 笛の音を遠くに聞きながら、私はボールの行方を追った。


 ボールは、すぅーっと、吸い込まれるようにゴールへ、


 ――ぱしゅ!!


 瞬間。


 しんっ、と体育館中の時が止まった。


 そして、私たちや、見ていた人たちの思考が現実に返ってきたところで、やっと歓声が上がる。


「「「わあああああああああ!!」」」


 ブザービーター――と、道重さんが小さく呟くのが聞こえた。


 最終スコアは、22―21。


 勝者、一年二組スーパースターズ

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