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じょばれ! 〜城上女子高校バレーボール部〜  作者: 綿貫エコナ
第一章(城上女子) AT城上女子高校
13/374

11(ひかり) スイッシュ

 ……あれ?


 なんだか、タイムアウトを経て、霧咲きりさきさんの雰囲気が変わったような。


 気のせいかもしれません。


 あ、いや、


 ――っしゅ!!


 ……気のせいなんかじゃありませんでした。


「嘘でしょ、スリーポイントって……!?」


 と開いた口が塞がらないのは星野ほしの珠実たまみさん。私も概ね同様の反応です。


 相手チームの作戦は、タイムアウト前と同じ、細かくパスを回していくものでした。このままリバウンド勝負に持ち込むのか、隙を見て藤島ふじしまさんへのパスを狙うのか、さてどう来ますか……と、考えているうちに、攻撃の起点である霧咲さんへとボールが戻って、その次の瞬間。


 あの人、私のことを丸無視して、やおらシュートモーションに入りやがりました。


 ええ、まあ、成す術なんかありませんよ。170超の人が頭の上で構えたボールに、147センチの私の手が届く道理がありません。


 実質フリーの霧咲さんから放たれたスリーポイントシュートは、果たして、見事なスイッシュ。


 10―15


 背筋が凍りましたね。


 いえ、もちろん、プレーそのものも素晴らしいのですが、それよりも、あの霧咲さんの雰囲気です。


 氷の司令塔――丘中(おかちゅう)の〝(Snow on)(the Edge)〟。


 あの人、プレー中、集中が高まれば高まるほど、まったくの無表情になるんですよね。まるで機械みたいな、といいましょうか。淡々と、正確に、戦略的に、ボールを回して、ゲームを優位に進めていく。


 その時と同じ顔をしています。スリーポイントシュートを決めても、眉一つ動かしません。先ほどまでとは集中の度合いが違います。


「い、一本、取り返しましょう!」


 さすがの星野さんもスリーポイントは想定外だったのか、動揺しています。


 ひとまず、といった風にポイントガードの私のところへパスが回ってきます。


 ただ、せっかくボールを頂いたはいいものの、これはかなり攻めにくいですね。マッチアップの相手は変わらず霧咲さんですが、ドリブルで抜こうにも、まるで別人のように隙がなくなってます。


 裏に控えている道重みちしげさんも怖いですし、どうにか、パスを回して相手をかく乱していきましょう。


宇奈月うなづきさんっ!」


 私は一番近くにいた宇奈月さんへパス。同時にインサイドに切り込みます。


 ぬぬ、霧咲さん、ついてきます。仕方ありません。もう一度ターンして、宇奈月さんからパスをもらって、今度こそ――。


 って、あれ?


 宇奈月さん? ん? は?


 あなた、そんな、ボールを掲げてジャンプ、ちょ、本気で何をしているんですか!?


「てーいっ!!」


 スリーポイントラインの外側、宇奈月さんが両手で放ったボールは、綺麗な放物線を描き、


 ――っしゅ!!


 ……入りやがりました。


「嘘でしょ、スリーポイントって……!?」


 と開いた口が塞がらないのは道重幸子(さちこ)さん。デジャブです。


 スコアは、13―15。


 試合残り時間、約3分。


 これは、いやはや、どうなってしまうのでしょう。

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