9(透) リバウンド
三園さんの二連続得点で、4点差まで追い上げられた私たち。
「落ち着いてー! 一本、取っていこう!」
そう言った道重さんは、何やら霧咲さんに助言をばしている。
再び、私たちのオフェンスからスタート。
ボールを持つ霧咲さんに、また三園さんが走り込んでいく。
それを見た霧咲さんは、食いつかれる前に、道重さんにパスを出す。
ボールをもらった道重さんは、ライバル(?)の星野さんと二、三のバスケ部的なやり取りをして、すぐに別の子にパス。
その子が、また霧咲さんにパス。
霧咲さんは、また別の子にパス。
パスを回していく作戦。私はゴール下で待機しているが、今のところパスが回ってくる様子はない。
つまり、今の私に期待されているのは、シュートじゃないってことだ。
コート上をぐるぐるとめまぐるしく飛び回ったボールは、最終的に道重さんに行き着いて、星野さんを強引に振り切った道重さんは、若干体勢を崩しながらシュートに行く。
この軌道は外れる――でも、大丈夫。
私がリバウンドを取って、決めればいいんだ。
私はボールだけを目で追う。空中戦で負けることなんてない。跳ね返ってきたボールに手を伸ばせば、それは自ずと私のボールになる。
なる、はずだった。
がんっ、
とボールがリングに弾かれる。私から見てやや左。よし。これなら一歩踏み込んでジャンプすれば手が届く。
なのに、その一歩が、踏み出せない。
なぜ――?
「そこなお嬢ちゃん!! 腰が高いぜっ!!」
声のするほうを見る。悪戯っぽい笑顔を浮かべた宇奈月さんと目が合った。
えっと、これ、あれだ、漫画で読んだ……スクリーンアウトってやつ! すごい、びくともしない!
「とうっ!!」
私を抑え込んでいた宇奈月さんが、ボールに向かって跳ぶ。
「させるか……!!」
そこにもう一人、ボールに手を伸ばす人が現れる。私と逆サイドでリバウンドに備えていた霧咲さんだ。
ボールから見た二人の位置はほぼ同じ。踏み込みのタイミングもほぼ同時。
霧咲さん、頑張って――!!
「やっりーい!!」
果たして、取ったのは宇奈月さんだった。
「ほいっ、たまみー!!」
そこから、
「ナイスリバン、ミカミカ!!」
相手チームは瞬時にパスリレーに移り、ちょうど五人全員が一度ずつ触れて、
「任されました、よっと」
アンカーの三園さんがまたしても速攻のカウンターを決める。
スコアは、10―12。
「ちょっとターイム!!」
道重さんの声で、一旦、時計が止まった。