プロローグ 〝強さ〟の証明
『あなたにとって、強いバレーボール選手とは、どんな選手ですか?』
――月刊バレーボール二月号『春の高校バレー特集』より抜粋
ここぞというときに決めてくれるアタッカー。
どんなボールが来ても食らいついて拾うレシーバー。
変幻自在なトス回しで相手を翻弄するセッター。
鋭いクイックで敵コートを切り裂くセンター。
強烈なスパイクをびしゃりとたたき落とすブロッカー。
流れと得点を一撃で掴み取るサーバー。
チームの大黒柱として全員を引っ張っていくリーダー。etc……。
もちろん、正解はない。
言い換えれば、どれもが正解。
人の数だけ答えがある。
そんな問いに、彼女は、こう答えた。
『強いバレーボール選手とは、〝勝てる〟選手です』
夏のインターハイ、秋の国体、春の高校バレーの三冠を成し遂げた北鳴谷学園。
その立役者にして、
高校女子バレーボール界に颯爽と現れた若き〝女王〟。
九条綺真は、言った。
『チームを勝利に導くことが、何よりも〝強さ〟の証明であると、私は思います』
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某県某市。エイプリルフール、春うらら。
桜並木の大通りを全力疾走する少女が一人。
頭頂部のやや後ろ、高い位置で結んだ長い黒髪が、風になびく。
少女の名は、宇奈月実花。
年齢15歳。
身長165センチ。
体重ヒミツキログラム。
城上女子高校、新一年。
少女は走る。
左手に、緑と赤に彩られた、真新しい五号球を抱えて。
<バレーボール基礎知識>
・月刊バレーボールについて
月刊バレーボールは、日本文化出版より発行されているバレーボール専門誌である。
というのがWikipediaの説明。この国で最も歴史があり有名なバレーボール専門誌です。
・バレーボールのボールについて
バレーボールのボールにはいくつか種類があります。
小学生の大会で使う軽量4号球。
中学生の大会で使う4号球。
高校生〜一般の大会で使う5号球。
軽量4号球と4号球は、サイズが同じで重さが違います。5号球は、4号球より大きく、重いです。
(具体的には、軽量4号球と4号球はどちらも直径20センチ。重さは、軽量4号球が200〜220グラム、4号球は240〜260グラムで、約40グラムの差があります。5号球は直径21センチ。重さは4号球より20グラムほど重いです)
また、公式戦で使われることが多いのは、二大メーカーである『ミカサ』と『モルテン』のカラーボールです。
ミカサのカラーは黄色と青。
モルテンのカラーは赤と緑。
両者は、規格は同じですが、見た目はもちろんのこと、感触や空中での挙動などに微妙な差異があります。公式戦では大会ごとに使用球が変わります。なので、普通、どの学校のバレー部も両メーカーのボールを所持しています(片方だけで練習していると、もう片方が公式戦で使われたときに少なからずプレーに影響が出るからです)。