依頼Ⅲ
「はじめまして、時間・探偵事務所、所長の紫木です」
さっ、と顔あげる佐々木摩莉ちゃん。
そして、顔色を変えてゆく。
悪い色に。
「……むらさ…ぎ、さん…?」
やっぱりかぁー。
「久しぶり、摩莉ちゃん?」
私は盛大に黒い笑顔を浮かべた。
「柔以、やっぱり知り合い?」
「そ。生前お世話になった方であります!」
と、ワザと茶化す風に言う。
「……して…。どうして、…あなたが…」
今ちょっと言ったんだけどね。
“生前”って。
「ははっ。過去のことは、とりあえず置いといて…。
―――――依頼、あるんでしょ?」
黙りこむ摩莉ちゃん。おーい、喋れぇー。
「…まっちょん、って憶えてる?」
お、急に喋りだした。
よく分かんないよ、摩莉ちゃんって…。昔から。
「クラスのムードメーカーのでしょ?」
「えぇ。――――――彼が最近私をつけてるみたいなの…」
杏ちゃんの用意してくれた資料を見る。
うん、嘘じゃない。
「そうみたいだねー。心当たりは?」
「…ないわ」
ダウト。
「わぉ…。困ったなぁー」
いや、全然困ってないんだけどね、本当は。
「で?摩莉ちゃん的には、どうしてほしいわけ?」
言葉の意味が分かっていないのか、首をかしげる摩莉ちゃん。
「まっちょんを牢屋にぶち込んでほしいの?それとも、摩莉ちゃんに謝ってほしいの?
――――――それか、まっちょん、目障りだから…とか言って、殺してほしいの?」
摩莉ちゃんの顔色がより一層悪くなる。
「違う!」
「そんなにムキにならなくても…」
「私は、あの時誓ったの!もう…もう、私のせいで誰も死なせないって…」
ふぅん…
「そのあの時っていうのは、もしかして私の時のこと―――――――かな?」
摩莉ちゃんが段々下を向いてゆく。
おーい。
「柔以、これ以上は」
だめだこりゃ。
「まっちょんの件は、対策を考えてあげるよ。護衛に、うちの事務所の人手配しとくから。
―――――勝手な行動は謹んでね?」
そういうと、何か言いたそうな杏ちゃんと莉久を引き連れて、私たちは喫茶店を後にした。
更新遅くなってすみません!
これからも、よろしくお願いします。