依頼Ⅱ
いつも通り。喫茶店に入ると、杏ちゃんが既に来ていた。
私が一番最後だったから…
当然なんだけどね。
「遅い!待ち合わせの五十分前に来るのが常識でしょ!?」
いやいや…。
怒られるのは覚悟してたけど…
杏ちゃん、それは早すぎですよ★
「当たり前でしょ!事前に打ち合わせしないでどうするのよ、馬鹿!」
馬鹿って言われた!杏ちゃんヒドイよぉー…。
でもまぁ…、当然か★
「で、依頼主は?」
杏ちゃんが親指でクイッと指す先には、一人の女の人。
黒髪ロングヘアー。
大和撫子!!
俯いているせいで顔はよく見えないけど…。
ふふふふっ…。
彼女で間違いないっぽい★
色々楽しみだなぁ…。
何してあげようかなぁ…。
「柔以、依頼主と知り合い?」
「まぁ、ちょっとね。
人間色々なのさ!」
ドン引きの莉久。
え、何…?
「柔以に人間を語られるとか…
ドン引きするよ」
「あんだとコラぁ!!それ、どういう意味だよ!?」
「そのままに、決まってるじゃないか」
いがみ合う私と莉久を見て、杏ちゃんは額に手を当てている。
「もう…。いい加減に莉久も素直になりなさいよ…」
「これが僕の全力の素直だよ?」
「それはどうも、スミマセンデシタ」
杏ちゃんが棒読み…。
ある意味、怖っ!
「いやぁ~。みんな、相変わらずうるさいなぁ」
と、声がする方を向くと、金髪ピアスの男がいた。
一言で表すなら、チャラ男。
ナンパ野郎。
「柔以。それ、一言じゃないから」
あ、ほんとだ。
まぁ…いっか★
所詮、アイツはこんなもの★
「柔ちゃん、今ひどいこと思ってたやろ!」
「別に、そんなことないよー」
「とりあえずやなぁ…。
―――――ここ、俺の経営してる喫茶店やねんから、静かにしてな?」
あたりを見渡すが、客らしき人物は依頼主と、私たち以外に見当たらない。
「…客なんていないクセに」
ボソッと呟く。
「聞こえてるで!!
これ以上お客さん減ったら、経営やばいから…頼むから、静かにしてな?」
「気が向いたらね」
「ヒドいわぁ、柔ちゃん」
「今さらだね、琉緒」
「開き直らんといてぇな…」
尚も絡んできそうな琉緒を無視し、切り替える。
でないと、会話が前に進まない。
「―――――さ、依頼主を待たせるのもなんだし、仕事しよっか!」
こうして私たちは、依頼主である佐々木摩莉へ接触した。