依頼Ⅰ
―――――チュンチュンッ
…小鳥の鳴き声?
その声で、私は目を覚ました。
時計を見ると既に一時を回っていた。
「え…?」
あぁ、深夜一時か。
ん?
深夜一時でも、小鳥って鳴くんだぁ…。
へぇ…。
枕もとの時計には、『PM』と表示されている。
『PM』?
=『午後』?
『午後』一時…!?
「えぇぇぇぇええええ!?莉久ぅぅうう!!!
なんで起こしてくれないのさぁ!?」
急いで着替えて事務室へ向かうと、莉久は事務所を出る直前だった。
「おそよう、柔以。杏ちゃんは、随分前に出たよ。―――――じゃ、僕も先に行くね」
と言うと扉を開けて出て行く莉久。
「おいコラ待てぇええ―――!!」
私は急いで扉へと向かう。
莉久は悪趣味なことに、そんな私を見ながら、笑顔で扉を閉めようとする。
「悪趣味とは失礼な」
悪趣味という言葉がおきに召さなかったのですね…。
「別に、そんなことないよ」
「なら、その扉を閉めるなー!!」
静かに微笑む莉久。
悪魔だ。悪魔がいる…。
いや、ある意味では悪魔すら超えている!
魔王だ、魔王!!
「ほら、早くしないと置いて行くよ?」
莉久は涼しい顔をしながら、扉を確実に閉めていく。
置いていく気、満々じゃん!?
「待ちなさいってー!!」
私が扉を通ろうとした直前に、扉はむなしくも閉じていった。
全力で走っていた私は、そのままの勢いで扉にぶつかった。
莉久め…。
私が扉にぶつかると分かっていて閉めたな…!!
ふ…ふふふふふっふ…。
「待てコラ莉久ぅぅぅうううう―――――――――――!!!!!」
私は閉じた扉を再び開け、再び走り出し莉久の後を追った。