プロローグⅡ
「ただいま。――――――何々、二人して私の噂してたの?」
ニコッ、と微笑む杏ちゃん。
杏ちゃんの笑顔が怖い。
後ろに、鬼が見えてるんですけど…。
「うん。杏ちゃん、仕事が早いねって」
「まぁね。―――――――そうそう、今回の依頼の件なんだけど、確かにここ数ヶ月男が付きまとっているみたい」
ナイス!莉久!!
上手くかわした!!
「男と依頼主の関係は?」
「小中高と大学が一緒の腐れ縁的な関係。男の名前は、松野孝之」
松野孝之…。
あぁ!思い出した!!まっちょんだ!!
「柔以?」
「なんでもなーい」
私は笑顔で首をかしげる二人を誤魔化した。
摩莉ちゃんの次は、まっちょんかぁー。
懐かしいなぁ…。
てことは、私は生きていたら二十歳なわけかぁ…。
てか、まっちょんてば、摩莉ちゃんをストーキングしてるんだ…。
「依頼主には、明日の午後一時半にいつもの喫茶店に来るように手紙を出しておいたよ」
「了解!」
「喫茶店は、いつも通り人払いを頼んでおいたわよ」
「ありがとう、杏ちゃん」
さすが杏ちゃん!
私がしようとしてたことを全部やってくれてるっ!
「どういたしまして。柔以のお願いだからね」
「――――――んじゃ、明日に備えてもう寝よっか。杏ちゃんも、お疲れ様。
力、いっぱい使って疲れたでしょ?今日はもう寝た方が良いよ?」
「えぇ、そうするわ。―――――それじゃ、おやすみ」
「おやすみ」
「おやすみー」
杏ちゃんにおやすみを告げると、自分まで眠くなってきた。
「ふぁ~……ねむっ」
私は大きなあくびを一つした。
「間抜けな顔」
「うっさい!眠いんだから、仕方ないでしょ!?」
「はいはい」
莉久に良いように遊ばれている気がするのは、気のせいか…?
「気のせいだよ」
また勝手に読まれた。
もういいや。
気にしてたら、寝られないしね。
「さて、私たちも寝よっか。明日は力をたくさん使わないといけないだろうし」
「そうだね」
珍しく、私の意見に同意する莉久。
そんなに明日疲れたくないか!?
「誰だって自ら疲れるために行く人はいないよ」
いちいち読むな!!
反応がムカつく!!
「おやすみ、莉久」
とりあえず、強制終了を告げる。
「おやすみ、柔以」
私はそう言い残すと、そそくさと自分の部屋に戻り、布団へダイブして、深い眠りへと落ちていった。