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言霊探偵 紫木柔以  作者: 雪りんご。
プロローグ
1/5

プロローグⅠ


こんにちは。

 

私はたった一人の言葉から再び(、、)この世に生まれた、紫木柔以(むらさぎにゅい)という者です。

私は一度、十七歳でその生を終えました。が、たった一人の、立った一言で、私は再びこの世に戻ってきました。

 

人間とは別の生命体、別の存在として再び生まれました。

 

存在名称は、『言霊』。


その言葉の通り、言葉に宿る力から生まれたので、そう呼ばれています。

そんな私はユーレイとは違い実体があるため、人の目に映るし、物に触れることも可能です。

もちろん、鏡にも映ります。


では、どこが人間と違うのか。


違うところは二つ。


一つ目は、戸籍がないことです。

元々、一度死んだ身なのでそれは当然のことです。


二つ目は、私の発する言葉には、特別な力がある、ということです。

例えば、私があなたに「近寄るな」と言えば、あなたは絶対に(・・・)私に近づくことは出来ません。


さて、こんな私ですが、仲間がいます。

榊原莉久(さかきばらりく)という、たった一人の心から生まれた存在名称『心の欠片』という男の子です。

莉久も私同様、一度死んでいるため戸籍はありません。

 

莉久と私の違いは、生まれ方、存在名称、そして、特別な力です。

莉久の特別な力は、相手の心を読み、心を通じて会話が出来る力です。


が、本人の性格に問題があ―――――――




「めずらしく静かにしていると思ったら…。ふざけていただけだったんだね」

「ふ、ふざけてなんかないじゃん!至ってマジメ、超マジメじゃん!!だって、嘘はついてな――――――」

…莉久、そんな怖い顔で私を睨まないで★


「睨まれて当然だよね?―――――そんなの紙に書いて…誰かに読まれたらどうするの?」

「別にバレてもいいじゃん」

いや、だからそんな怖い顔で私を見ないで!


「とにかく、これは焼却処分」

莉久はどこからかライターを取り出し、火をつける。


あぁ…私の最高傑作がぁ…



「次こんなことしたらどうなるか…分かってるよね、柔以?」



ヤバイ。目がマジなんですけど!?

お、落ち着いて、莉久!!話せば分かるって!!


「今までに話し合って分かり合えたことって、あったかな?」

目が…莉久の目が不気味に光っていて怖いんですけど…。


「―――――ていうか、莉久!さっきから、勝手に私の心を読むな!!」

「読みやすい柔以が悪い」

「どんな言い訳だ!!」

「こんな言い訳だよ」

くっ…口で莉久に勝てるわけないじゃん…。


「なんだ、分かってたんだ」

「ええい、黙れ黙れい!!」

どうせ私はアホで脳筋な女ですよぉ、だ。


「自覚していたん―――」

「勝手に読むなぁぁああ!!」

「柔以、うるさい。何時だと思ってるの?場所を考えてよね」

 

ここは、私が所長を務める『時間(ときはざま)・探偵事務所』の事務室。

今は、私と莉久以外に誰もいない。

私たちの家。


「自分の家でうるさくして何が悪いのさ!」

「僕の迷惑になってるっていう自覚…ある?」


アレ?莉久から冷気が発せられている気がするんですけど…。

てか、寒いんですけど…。


「さぁ?気のせいじゃない?」

いやいや…さっきより一層寒くなってる気が…。

あれか?私の感覚がおかしくなっちゃったのか!?


あ、そっかぁー。もうすぐ冬だもんねぇ…って、まだ九月にもなってないんですけど!?

「柔以、一人でボケて突っ込むのは、見てて痛々しいから」

「お前のせいだろ!!」


莉久はさっきから私とふざけながらも、一通の手紙を読んでいる。

何が書かれているのかまったく見当もつかない。


「それ、何読んでるの?」

「手紙」

「いや、そりゃ見れば分かるよ…」

莉久が深い深いため息をつく。


「仕事の依頼の手紙だよ」

「内容は?」

「ストーカー被害に遭ってるんだって」

「うわぁ…怖い世の中だねぇ…」

「それについては、僕も同意しかねるかな」

「依頼主の名前は?」

佐々木摩莉(ささきまり)、二十歳。現在府内では有名な、F大の理学部生」

佐々木、摩莉…。


 

「どっかで聞いたことあるような…」

あぁ!!

あの佐々木摩莉ちゃん、ね…。

 

「ふ…フフフフフフフフっ…」

「柔以、怖い。てか、気持ち悪い」

「それは、ヒドイ!」


「事実。――――で?この人と知り合いなの?」

「まぁねー。―――――依頼内容の事実検証は?」

「杏ちゃんが、今やってる。結果は、明日くらいに出るって」

「さっすが杏ちゃん。仕事が早いや」

杏ちゃんこと黒原杏子(くろはらあんず)は、『時間・探偵事務所』の情報処理を担当している姉御である。


姉御(それ)、杏ちゃんの前で言うと、ボコボコにされるよ?」

………。

 

杏ちゃんも、私たち同様一度死んでいて再びこの世に戻ってきた者だった。

この事務所はそんなメンバーで構成されている。


「そこはスルーするんだね」


杏ちゃんはさっきも言ったとおり、情報処理担当。


理由は単純明快。

存在名称が『情報』だから。

杏ちゃんは、杏ちゃん自信が死ぬ間際に、「すべての情報を手に入れたい」という思いから再び生まれた。


故に、杏ちゃんの存在名称は、『情報』。

生前は、マスコミだったらしい…。

 

「こう考えると、杏ちゃんは僕たちとは生まれ方は違うね」

「確かにそうかも。私と莉久は、呼び出された感じだもんね」

 

と、そこで事務所の扉が開いた。

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