目覚め。のち、吃驚仰天
遅くなりまして申し訳ないです。
そして文章短くて又も申し訳ないです。
こんな不定期更新ですが、読んでくださっている皆様本当に有難うございます。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
「・・・ん」
耳に届く微かな鳥の鳴き声。何処からか漏れる光。それらが鈴蘭を覚醒へと誘った。
――ふぁあー・・・朝?
まだ完全に覚醒仕切らない彼女の視界はボヤけている。
正直まだ眠い。温もりを手放したくない彼女は起き上がらず、ベッドの中でもぞりと身じろぐ。
――とんっ・・・
「・・・?」
おでこに何か硬いものが当たった。
何だろう・・・?
眠気でぼーっとする頭で考えてみるが、それすら億劫に感じ、とりあえず触ってみた。
触れてみると、それは暖かい。私はその温もりを求めてそっと暖かいそれに頬ずりをした。
――とくん、とくん・・・
規則正しい音は私に安心とまどろみを与え、覚醒しかけた瞼を重くする。
深い闇に沈みかけたその時、身体全身に振動が走った。
私ではない。これは自分自身が揺れているのでなく、頬を伝って起こった振動。
どうやら、私の頬に触れている何かが揺れているのだろう。
そんなことをぼんやり考えていると、頭上から声がした。
「お前、大胆だな」
笑いの混じった、テノールの声。すとんっと私の中に響くそれには聞き覚えがあった。と、それを認識した瞬間、私は深い闇から這い上がった。眠気は弾丸の如く飛び去り、訪れたのは体中の血液の逆流。
サッと血が引いたかと思えば、今度は身体が燃えてしまうほどの熱をもつ。
私は驚き過ぎて、パクパクと口を鯉の様に開閉していた。
それを見ていた彼はまたクックッと喉を鳴らして笑う。そう、先程の振動はこれだったのだ。私が頬をすり寄せた正体。私に腕枕をして隣で寝ていた、
・・・上半身裸の変態、もとい殿下。
「うぎゃあああああああああ――――っ!!?変態がいるぅ―――っ」
やっと出た声は寝起きの所為か掠れていた。私は叫ぶと共に跳ね起き、ベッドから飛び降りる。肩を怒らせ、フーフーっと鼻息荒く呼吸する私を見て、またもや殿下が笑いだす。
「っくくく・・・可愛いな」
唐突に言われた言葉に私は顔中、いや、全身真っ赤に火照った。目を細めて言う彼の声音は何処までも優しく、甘く、色気むんむんだったのだ。
黙れっ!異性に耐性の無い私に色気を振りまくなっ!そんなもの振りまいたところで何も返ってこないぞっ!!
「う、う、うるさいっ! 変態っ 何であんたが一緒に寝てんのっ!!」
吃りながらも何とか振り絞って出た声に少しホッとした。私の問いに、上半身を起こした殿下は小さく欠伸をし、前髪を掻き上げる。
そんなちょっとした仕草でさえ絵になる。私は舌打ちしたい衝動に駆られた。当然、内心では心置きなくしていたが。何よりこんな変態に少しでも魅入ってしまったのが悔やまれる。
そんな私の心の葛藤に水を差すように、殿下は淡々とした口調で答えた。
「何でと言われても、これは俺のベッドだ。寝ていて当たり前だろ」
何だ、それは。私が求めている答えと違う。
少し冷静を取り戻し始めた私は、さも当然のように言い切る彼を睨んだ。
「誰のベッドかを聞いたんじゃない。何故私がアンタと一緒に寝ていたのか、その理由を聞きたいの」
そう、この際誰の寝床なのかはどうでもいい。私が知りたいのは一緒に寝ていたという点だけだ。
「何だ、覚えてないのか?」
殿下は少し目を見開いて私に問うた。
私はというと、眉間に皺を寄せて、少し寝癖の付いた頭を傾げる殿下を凝視している。
昨日、一体何が起きた?
私は朝一番、回転しづらい脳みそを洗濯機の如く掻き回し、記憶を探った。