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細い針
陽光が煌く雪景色に紅き薔薇を散らす。
ナルチーゾの冬はそう、長くはないが、とても冷え込む。
凍った花びらを足で踏んで砕く。赤が一面に散らばっていく。
白い道を紅く染めるのが好きだ。
これは、そう、雪のカンバスに紅を散らしていくのだ。
純白の煌くカンバスに、紅く女神を描く。
紅き薔薇で描かれた女神の横顔はどこか知人に似ている気がした。
雪と薔薇で描かれた刹那の芸術は彼の目に留まることは無いだろう。
儚く消えていくこの芸術を知るのは己のみとなるだろう。
しかし、ウラーノ・ナルチーゾにとってそんなことは些細なことに過ぎない。
ただ、ひと時楽しむことが出来れば、これは意味のあるものなのだから。