あなたの言葉は私を傷つけるものでしかない
「期待してるわ」
「よく頑張ったわね」
「さすが私の子」
小さいときから常に監視されているような気分だった。
あの人は私をとても愛していたのだと思う。
ただ、愛し方に問題があった。
常に「期待」「期待」「期待」
子供に過度な期待をしてはいけないと、誰も教えてはくれなかったのだろう。
私だって教わったわけじゃない。
ただ、経験として知っているのだ。
「まぁ、流石ね」
驚いたように魔女が私を見る。
「才能はあるわ。もう、弟子は取らないつもりだったけれど、貴女のことは教育したくなったわ」
貴女が望むならだけどと魔女は言う。
「おのね、ずっと魔女になりたかったんだ」
思い切って言ってみた。
「魔女に?」
「そう、魔女に。ずっとずっとなりたかった」
魔女になるために沢山勉強も修行もしたし、両親を満足させるだけの成績も維持した。
「残念だけど、貴女は魔女にはなれないわ」
魔女は微笑んだまま言う。
「どうして?」
「貴女は王になるからよ」
魔女はくすりと笑う。
「貴女は望まれてきたの。この国に。そしてそれが必然」
ああ、この人もかと思う。
小さいときから常に監視していたのはこの人だった。
この人は私を見定めていたのだろう。
そして私はその期待を満たしてしまった。
常に「期待」「期待」「期待」
勝手に過度な期待をして、勝手に失望していく。
私が望んだわけではない。
ただ、世界がそうだったのだ。
私はずっと期待されている。
そして勝手に失望される。
期待と失望は常に私の周りにあり、決して消えない。
必然という都合の良い言葉に隠されて。