鈴と箏
巫女館に住むことになった鈴丸。ちょっと苦労が多いかも?
頑張れ鈴丸!
「鈴丸、ここがあなたの部屋。」
見習い巫女の琴音がつんけんしながら部屋を教えてくれた。男の子の僕が巫女館に住むのが気に入らないんだ、きっと。それとも夜中に起こされたからかしら。
「厠は出て右、この館からは出ないこと。いいですね。」
言われなくったてどこにも行ったりしないよ、って僕は心の中で琴音に舌を出した。琴音は夏ねえより少し年上で背が低い。それを気にしてか、〝巫女は俗世とは関わらないもの〟って言ってあんまり人と話さないようにしていたから、僕も話すのは初めてだった。でも、こんなにつんけんされたんじゃ仲良くなんてできないや。みんなと仲良くしなさいって先生は言ってたけど。
「巫女様は?」
僕が聞いたら
「巫女様はお忙しいの。だからあなたの相手ばかりはしていられないの。」
って言われた。琴音って意地悪なのかな。それとも巫女だから?
「理由は知りませんけど、あなたがいるのは夏至までの半年だそうね。くれぐれもあたくしの邪魔だけはしないでちょうだい。」
僕、絶対琴音の部屋にだけは行かないようにしよう……。
次の日から僕は巫女館にいる人たちのお手伝いをすることになった。館には琴音のほかにも若い見習い巫女がいた。ちょっぴり太めで愉快な朱里、三つ編みおさげがかわいい弥奈、のっぽの桜子の三人だ。この人たちは琴音よりずっと僕に優しかった。
「あのぉ、お水を持ってきたんですけど。」
僕の隣の部屋は琴音の部屋だった……。それで僕の一番初めの仕事が琴音の部屋に水桶を持っていくことだったんだ。
「そこに置いておいてちょうだい。」
せっかく持ってきたのに振り向きもしない。いやなの。僕は残り三つの桶を順番に配りに行く。朱里の部屋に行ったら内緒だよ、ってお菓子をくれた。桜子も弥奈もお礼を言ってくれた。僕は琴音のことは気にしないことにした。水桶を配り終えたらさあ、次は掃除だ。ちなみに僕に次に何をしたらいいか教える役は琴音になったらしくて、なんであたくしが、ってぶつぶつ言いながら僕の行く先々に現れては、ここが汚れているとか、埃が落ちてるとか言ってまわった。僕だって琴音とずっと一緒なんてやだよ。その上僕は琴音が現れるたびに、桶をひっくり返したり滑って転んだりして、すごくきまりが悪かった。
性格が合わない人って誰にでもいますよね。鈴丸と琴音も急に仲良くなるのは無理みたいです。でも、頑張れ鈴丸。
応援しましょう!