夜空に煌めく星よ、この星の空まで導いて
私は目を開ける。 周囲はもう夜方、冷えた風が吹き付ける山脈の峰。
暗闇の中、下から近付く、不思議な光の反射を覗くと、綿毛のように浮く、空より軽い鉱石の波がはっきりと見える。
地上に広がる星空を眺め、私は微笑んだ。
ついこの間まで、ここでは大雨が降っていた。じめじめとした足音が星たちに近付く私の足元から響いた。
意識するだけで、空腹が腹の肉を引き裂くような感覚を覚えた。
もう三日間、まともなものは何も食べていなかった。すばしっこい灰色の動物を、口にしたぐらいだった。
決死の思いで降りようとした道は、土砂が崩れて降りれず、ただ奇跡的に誰かが来るのを待ち望んでは、もう居られなかった。
軽い気持ちで、親に黙って山を昇ることが、これだけの孤独と苦しみを、私に与えてくるなんて思わなかった。
それでも私がほほ笑んだのには、理由があった。
それは、空飛ぶ鉱石の童話だ。
その鉱石の群れに乗って、空に進んでいく少女が、宝物を見つける。そして、魔法で地上に帰還する。 そんな童話。
自分では、どうしていいか分からなくて、そんな童話でも、命をかけてみようと思った。地面で丸まりながら、そんなことを考えていたら、星たちは斜面を登って、私の目の前に近付いてきていた。
一瞬逃げようと思い、振り返り走ったけれど、親からつけてもらった大切なリュックが鉱石に引っかかり、地上が、1人、2人分…もう着地出来ないぐらいに遠く離れて行って、怖くて目を閉じた。
しばらく目を閉じていると、体が上がっていく感覚がなくなって…目を開けるとそこには大きな岩たちが、ふわふわと浮いていた。
リュックにそのまま引っ掛かっているのも怖かったので、真下に来た瞬間に、体をゆすると、星たちが割れて、私は白い霧の中、大岩の上に落ちた。
その上にあった、草の実の様なものをがつがつと食べると、すぐに体が動かなくなって、眠くなってきた。
周りを見渡しても、魔法使いもいなくて、ただ薄暗い空間に沢山の光があるだけ。
魔法なんてなかった、でもお腹の痛みは、少し引いていた。それでよかった。
”寝る子は育つ”
そんな母の言葉を思い出しながら体の力を抜いた。
「来世はいい子にそだつから、許してね。お母さん」
手足がしびれて、もう尾っぽすら重くて動かない。
…暫くして目を覚ました。夢だったのか、私は地面の上で眠っていた。
死んだと思ったのに。ふと見慣れた赤レンガの家が目に入る。
窓に飛び乗って入ると、お母さんが泣いていたので、舌で舐めた。
驚いたように見たお母さんに、一言鳴きかける。「にゃーん」(ただいま)って。
乾いた入れ物に水が注がれ、鉄の食べ物入れにカラカラと食事が注がれたのを見て、家の中のカーペットにゆっくり飛び降りた。




