7年間尽くして夫を弁護士にしたのに、私が襲われた時彼が助けたのは初恋の女だった
プロローグ
神谷直人が法科大学院を卒業し、司法試験に集中できるように、私は駅前のガールズバーで三年間、夜のシフトに入り続けた。
その後、直人は司法試験に合格し、司法修習を終えて弁護士登録をした。今では汐浜市にあるそれなりに規模の大きい総合法律事務所に勤め、企業法務や民事事件を中心に扱っている。地元でも少しずつ名前を知られるようになっていた。
私はとっくにガールズバーを辞め、汐浜駅東口にあるワインバーで働いていた。接客だけでなく、酒類の仕入れや取引先との調整、ワインの販売まで任されている。
あの夜、常連客の一人が酔った勢いで、私を倉庫へ続く従業員用の通路に追い込んだ。大河内という飲食関連会社の社長だった。横をすり抜けようとすると腰をつかまれ、壁際へ引き寄せられた。振りほどこうとした私の胸にまで手を伸ばし、もみ合ううちにブラウスのボタンが二つ飛んだ。
物音に気づいた店長が駆けつけ、ようやく大河内は手を離した。翌日、店長と一緒に防犯カメラの映像を確認し、該当部分を別に保存してもらった。警察から求められれば、映像も従業員の証言もすべて提供すると言ってくれた。
私はその資料を持って、直人の事務所へ向かった。
「直人、警察に行こうと思ってる」
映像を見終えた直人は、眉を寄せた。
「ほかに怪我は?」
「手首が少し痛いくらい。目立つ怪我はないよ」
直人はしばらく黙ったあと、法律相談の受付票を私に差し出した。
「今日は予約が全部埋まってる。とりあえず資料を事務局に預けて、相談の時間を取ってもらって」
私は受け取らなかった。
「ほかの弁護士に相談しに来たんじゃないよ」
「わかってる。でも、ここは法律事務所だ。千晴が俺の妻だからって、所内の手続きを飛ばすわけにはいかない」
結局、私は資料を持って受付へ向かった。
午前十一時、事務局のスタッフから待合スペースで待つように言われた。正午近くになってようやく一人の職員が出てきたので、私は立ち上がった。
「神谷さん、申し訳ありません。前のご相談がまだ少しかかりそうです」
そう言ってから、彼女は私の後ろにいた女性へ視線を移した。
「白石玲奈さんですね。神谷先生から伺っています。身の安全に関わる案件ですので、緊急対応になっています。こちらへどうぞ」
私はその場で動きを止めた。
白石玲奈。直人が大学時代に付き合っていた女性だった。
相談室のガラス壁には、ブラインドが完全には下りていなかった。玲奈は中へ入ると、椅子の横で少し立ち止まった。
「千晴さんの相談、後回しにならない?」
直人は彼女のために椅子を引いた。
「玲奈のほうが緊急性が高い。千晴ならわかってくれる」
私は手の中の受付票に目を落とした。
直人が初めて司法修習のためのスーツを着た頃、私たちは二十平方メートルにも満たない古いワンルームで暮らしていた。あの部屋で、直人は私を抱きしめ、弁護士になったら二度と千晴を一人でつらい目に遭わせないと言った。
今、彼は本当に弁護士になった。
私は被害の証拠映像を抱えたまま、夫の法律事務所の外で、いつ自分の番が来るのかわからない相談を待っていた。
1.彼女のほうが急ぎだから
夕方、直人が鞄を持って執務室から出てきた。まだ待合スペースにいる私を見つけると、明らかに驚いた顔をした。
「まだいたの?」
私は立ち上がった。
「仕事が終わるのを待つくらいなら、予約はいらないでしょ」
直人は数秒黙り、私の手首にそっと触れた。
「今日は俺の段取りが悪かった。玲奈は今、夫と別居していて、離婚調停もまだ終わってない。昨夜も森川が押しかけてきて暴力を振るった。耳も傷めてるし、その場には子どももいた」
直人は鞄を脇に置いた。
「地方裁判所に保護命令を申し立てる準備もある。診断書や警察への相談記録、そのほかの資料も急いで整理しないといけない。千晴の件を忘れたわけじゃない。受任する前には利益相反の確認も必要だし、俺は夫でもある。最初から私的な関係と事件を混ぜるのはよくない。確認が済んだら、きちんと相談できる弁護士を探す」
私は直人を見た。
「じゃあ、玲奈にはその手続きがいらないの?」
「玲奈の件は前から続いてる。離婚調停と保護命令のことは、以前から俺が担当してるんだ」
つまり、直人はずっと前から玲奈を助けていた。私は何も知らされていなかった。
そのとき、エレベーターの扉が開いた。玲奈が壁に手をつきながら出てくる。頬にはまだ薄い痣が残っていた。
「直人、また耳鳴りがしてきた……」
直人はすぐに駆け寄って彼女を支えた。そこでようやく玲奈は私に気づいた。
「千晴さんもいたんだ。ごめん、こんな時間まで待ってるなんて知らなくて」
私は玲奈を見なかった。
「玲奈は予約してたの?」
直人の声が少し低くなる。
「千晴、玲奈は森川からの暴力やつきまといが続いてる。それに子どものこともある。千晴のほうは防犯カメラの映像が残ってるし、店長も協力してくれる。今すぐ身に危険が迫ってる状況ではないだろ」
「だから、私は待っていられるってこと?」
直人が眉をひそめた。
「そういう意味じゃない」
玲奈が直人の袖を軽く引いた。
「大丈夫。私、一人で病院に行くから」
一歩踏み出したところで、玲奈の身体がふらついた。直人はすぐに腕を支えた。
「無理するな」
それから私を見る。
「千晴も顔色悪いよ。今日は先に帰って」
事務所を出たあと、直人は私のためにタクシーを呼んだ。ドアが閉まる直前、身をかがめて言った。
「家に着いたらLINEして」
車がまだ交差点を抜ける前に、玲奈が事務所のエントランスから出てきた。直人は自分のジャケットを脱いで彼女の肩にかけ、そのまま駐車場へ向かっていった。
あのジャケットは、直人が初めて一人で法廷に立つ前に、私が一緒に選んだものだった。
高すぎると言って嫌がる直人を無視して、私はその場で値札を外した。これから人前に立つ仕事をするんだから、一着くらいちゃんとしたものを持っていなきゃ、と言った。
直人は、仕事が落ち着いたら今度は千晴に一番いいものを買うよ、と笑った。
収入は年々増えていった。けれど、その約束が果たされることはなかった。
タクシーが走り出してしばらくすると、スマートフォンの画面が光った。
玲奈からLINEが届いていた。
「今日は本当にごめんなさい。急に耳鳴りがひどくなって、直人に病院まで付き添ってもらうことになりました」
少しして、もう一通届いた。
「ずっと一緒にいる千晴さんなら、直人のことを一番わかってますよね。今だけは事情が事情なので、少しだけ理解してもらえたら助かります」
返信はしなかった。
直人が私に一番よく言ってきた言葉がある。
千晴は本当に物わかりがいいな。
昔は、それを褒め言葉だと思っていた。けれど、長い間譲り続けていると、周りはそのうち忘れてしまう。その人にも、譲りたくないときがあることを。
その夜、私は家に着いたと直人へ連絡しなかった。
直人から確認の連絡が来ることもなかった。
翌朝目を覚ますと、隣の布団は使われた形跡すらなかった。
直人は一晩帰ってこなかった。
結婚してから、私たちは昔の古いワンルームを出て、駅にもう少し近い、寝室とリビングが分かれた賃貸マンションに引っ越していた。引っ越してきたばかりの頃、直人は仕事が安定したら、次は書斎のあるもう少し広い部屋に住もうと言っていた。
身支度を済ませ、私は事務所へ向かった。昨日、ボイスレコーダーと一部の資料を直人の執務室に置いたままにしていたからだ。
受付のスタッフが私を見ると、すぐに立ち上がった。
「神谷先生は昨夜、白石さんの保護命令申立てに関する資料整理をされていて、今朝はそのまま弁護士会主催の無料法律相談へ向かわれました」
「私の資料は?」
「先生の執務室の保管庫に入っています。こちらでは開けられません」
会場を教えてもらい、私は一人で市民会館へ向かった。
ロビーには法律相談を待つ人が何人もいた。臨時相談室の前まで行くと、長椅子に座っていた玲奈が立ち上がった。
「千晴さん、直人を探しに来たの?」
「自分のものを取りに来ただけ」
「今、私の離婚調停の資料を見てもらってるところ。森川が子どものことも財産分与のことも争ってきてて、結構大変なの」
私はそれ以上答えなかった。
近くで待っていた中年の女性が、玲奈がずっと直人の書類ケースを持っているのを見て、笑いながら声をかけた。
「ご主人、お忙しそうですね。奥さんがずっと付き添っていて、仲がいいのね」
玲奈は一瞬黙った。訂正はしなかった。
「最近、本当に忙しくて。私にできることくらいはと思って」
ちょうどそのとき、臨時相談室の扉が開いた。書類を持った直人が出てきて、私を見るなり眉をひそめた。
「どうしてここに?」
「ボイスレコーダーを取りに来たの」
玲奈が横に立った。
「千晴さん、直人は昨日ほとんど寝てないの。資料は事務所にあるんだから、なくなるわけじゃないでしょ。終わるまで待てない?」
何か言おうとした瞬間、玲奈の肩にかかっているものが目に入った。深い青緑色のショール。縁には白い木蓮の刺繍が入っている。
「そのショール、どこから持ってきたの?」
玲奈が肩元を見る。
「これ?」
私は手を伸ばした。直人がすぐに私の手首をつかんだ。
「千晴。ここ、人がいるから」
私は直人を見た。
「それ、お母さんが私に残してくれたものだよ」
直人の手から少し力が抜けた。
「今朝、資料を取りに家へ戻ったときに見つけたんだ。今日の会場、冷えるから玲奈に貸した」
「それが私にとってどれだけ大事なものか、知ってるよね」
母の体調が一番悪かった頃は、針を持つことすら難しい日が多かった。それでも時間をかけて縫ってくれたショールだった。白い木蓮も、母が一針ずつ刺したものだ。
引っ越しのときでさえ、私は業者の段ボールに入れず、自分の腕に抱えて電車に乗った。
直人は、それを知っていた。
廊下の向こうから、子どもの声がした。
「直人さん!」
五、六歳くらいの男の子が走ってきて、直人の脚にしがみついた。直人の表情がすぐに柔らかくなり、しゃがみ込んで子どもの顔を見る。
「陽翔、今日はちゃんとお母さんの言うこと聞いてたか?」
玲奈はショールを肩に引き寄せた。
「最近、玄関の外で音がするだけで怖がるの。夜もあまり眠れてなくて、直人に会いたがることが多いんだ。まだ小さいから、気にしないであげて」
私は何も言わなかった。
三人が並んで立っている姿は、思っていたほど胸に刺さらなかった。
その代わり、不思議なくらい頭が冷えた。もう、離れたほうがいいのかもしれない。
2.八十万円の示談書
夜十時を過ぎてから、ようやく直人が帰ってきた。
私はリビングで、以前から知っていた弁護士にメッセージを送っていた。玄関の音がしたので、スマートフォンの画面を閉じる。
直人は紙袋をダイニングテーブルに置いた。昔、私が好きだった店のカニ焼売だった。
「今日、市民会館では悪かった。ショールは玲奈がクリーニングに出した。明日には戻ってくる」
直人は椅子を引いた。
「千晴がつらい思いをしてるのはわかってる。でも玲奈はまだ離婚調停中だし、森川の暴力も続いてる。保護命令が出るまでは、放っておけない」
私は直人を見た。
「玲奈の代理人なの?」
「離婚調停と保護命令については、俺が担当してる」
そんなに前から彼女を助けていた。
私は今日まで知らなかった。
直人は私を見たまま続けた。
「玲奈の状況が落ち着いたら、ちゃんと距離を取る。俺たちも前みたいに戻れる」
私は答えなかった。直人が私に隠れて玲奈の案件を扱い始めた時点で、もう以前と同じではなかった。
翌日の午後、事務所から来るように連絡があった。
会議室の扉を開けると、大河内がソファに座っていた。私を見るなり、薄く笑う。
「神谷先生の奥さんって、あなただったんだ」
私は直人を見た。直人はすぐには目を合わせなかった。
大河内が脚を組む。
「あの日はみんな飲んでたしね。ずっとテーブルでワインを勧めてくるから、ちょっとした冗談くらいに思ってたよ」
私は鞄を脇に置いた。
「防犯カメラには全部映っています。私を従業員用通路へ引っ張ったのも、先に身体を触ったのもあなたです」
直人が手を上げた。
「千晴、まず座って」
私は直人を見た。
「どうしてこの人がここにいるの?」
直人はテーブルの上の書類を一つ手に取った。
「千晴が資料を預けたあと、事務所で利益相反の確認をした。大河内社長の会社は少し前から、うちの別の企業法務チームと顧問契約を結んでる。だから事務所として千晴の依頼は受けられないし、俺も代理人にはなれない」
そこまでは理解できた。
しかし直人は、そのあと別の書類を私の前へ滑らせた。
「相手から解決金八十万円の提示が出てる。受け入れるなら、民事上の賠償についてはこの示談書で終わらせられる」
私は書類を見下ろした。
「大河内さんに頼まれて、これを私に渡してるの?」
「条件を伝えてるだけだ」
「警察は?」
直人は少し間を置いた。
「もちろん警察に被害を申告することはできる。映像を見る限り、民事上の不法行為だけでなく、刑事事件として捜査される可能性もある。ただ、本格的に捜査が始まれば、従業員への聞き取りもあるし、映像全体も提出することになる。ネットや周囲の反応が大きくなる可能性も考えておいたほうがいい」
私は顔を上げた。
「それで?」
「全部わかったうえで決めてほしい」
私は示談書の端をつまんだ。
「直人は、受けたほうがいいと思ってるの?」
数秒の沈黙。
「一番リスクの少ない方法だと思う」
私は示談書を真ん中から破った。
「じゃあ、もう話すことはない。別の弁護士を探す」
破れた紙をテーブルに落とした。
私は席を立った。
その夜、押し入れからスーツケースを出した。
自分のものは思ったほど多くなかった。本当に必要なものだけなら、スーツケース一つで足りる。
インターホンが鳴った。直人が帰ってきたのかと思った。
しかし、ドアの向こうにいたのは玲奈だった。
玲奈は玄関のスーツケースを見るなり口を開いた。
「本当に出ていくつもりなの?」
私は中へ入れるつもりはなかったが、玲奈は勝手に一歩踏み込み、玄関へ入ってきた。
「今日、大河内さんのこと聞いた。直人はようやく今の立場まで来たの。事務所には企業の顧問先だってある。もし本当にこの話をネットまで広げたら、最初に名前を出されるのは直人だよ」
私はスマートフォンを手に取った。
「出て」
玲奈の表情が硬くなる。
「ずっと夜の酒場で働いてきた人が、こんなことを大きくして、本当に自分のためになると思ってるの?」
私は玲奈を見た。
「玲奈。もう一度だけ言う。出ていって。これ以上うちに居座るなら警察を呼ぶ」
玲奈は数秒、私をにらんでいた。やがて黙って背を向け、エレベーターの扉が閉まったあと、私は玄関の鍵をかけた。
3.あの一瞬、彼はまた立ち止まった
翌朝、地元の匿名掲示板に一本の投稿が上がった。
ある弁護士の妻が、長年夜の店で風俗まがいの仕事をし、隠し撮りした映像を使って企業経営者から金を取ろうとしている――そんな内容だった。私が昔ガールズバーで働いていた頃の写真も何枚か載せられていた。本来なら普通の接客写真なのに、周囲を切り取られ、酒瓶を持って客の前に立つ私だけが残されている。
さらに、市民会館で撮られた映像まで出回った。玲奈のショールに私が手を伸ばした、その数秒だけを切り取ったものだった。投稿はすぐにXへ転載され、私は風俗で働いていたことにされ、パパ活をしていたとも書かれた。客を誘ってセクハラをでっち上げ、示談金を取ろうとしている、と断定する書き込みまで増えていった。
昼頃には、今勤めているワインバーの名前と、私たちが住むマンションの外観写真まで投稿された。部屋番号までは出ていないが、近所の人ならどの建物かすぐにわかる。
店には嫌がらせの電話が入り始め、店長は公式SNSを一時的に閉じざるを得なかった。
直人からも電話がかかってきた。
「千晴、ネット見た?」
「見た」
「陽翔の幼稚園の保護者LINEにまで回ってる。玲奈が、今日は陽翔を幼稚園に連れていけないって言ってる。ひとまず短い声明を出してくれないか。当日の認識には双方に食い違いがあって、今後は警察と弁護士に任せるって。それ以上、騒ぎを広げないほうがいい」
私は窓のそばに立った。
「私が言うことは一つだけ。大河内さんは私の身体に触った」
電話の向こうが数秒静かになる。
「千晴、全員が引けなくなるところまでやる必要があるのか?」
私は電話を切った。
午後、昨日連絡した弁護士に会いに行くつもりで準備していた。
突然、玄関のドアが激しく叩かれた。開けた瞬間、五十代くらいの女性が中へ押し入り、頬を平手で打たれた。
勢いで靴箱に身体をぶつける。
「あんたでしょ! あんな店で働いてるくせに、うちの主人にセクハラされたなんて言ってるのは!」
大河内の妻だった。
廊下の左右で次々に住人のドアが開き、スマートフォンをこちらへ向ける人までいる。女性がもう一歩近づいてきたので、私は手を上げて遮った。
「もう一度触ったら、今ここで警察を呼びます」
後になってわかったことだが、ネット上で私の住む地域やマンションの外観について、誰かが彼女に情報を渡していた。
そのとき、エレベーターが開いた。
直人が足早に出てきた。その後ろには玲奈がいた。
朝からネットには、私の住所を突き止めて家まで行き、本人に説明させろという書き込みが出ていた。直人はそれを見て事務所から駆けつけたらしい。玲奈はそのとき直人の執務室で、保護命令に関する追加資料を整理しており、事情を聞いてどうしても一緒に行くと言ってついてきたという。
私の頬に残る赤い痕を見て、直人がすぐにこちらへ歩き出した。
その腕を、玲奈がつかんだ。
「直人……こういうの、森川が暴れたときのこと思い出す……」
直人の足が止まった。ほんの一瞬だった。けれど、私ははっきり見た。
数メートル向こうから、直人が私を見ている。
「千晴、先に中へ入って鍵をかけて。ここは俺が対応する」
私はその場に立ったまま、七年前のことを思い出した。
あの頃、直人はまだ法科大学院の学生だった。仕事帰りに酔った客たちに絡まれた私を見つけると、一人で間に入ってきた。口元を切り、白いシャツを血で汚しながら、それでも私の前から退かなかった。
そのあと私を抱きしめ、もう二度と千晴を一人でこんな目に遭わせないと言った。
七年後、私は自分の家の前で殴られた。
直人は目の前にいた。それでも、別の女性に腕をつかまれた瞬間、彼は足を止めた。
私は何も言わなかった。そのまま背を向け、階段へ走った。
外は雨だった。
傘も持たずに走り、通りまで出た頃には、頬の痛みが平手打ちのせいなのか、冷たい雨のせいなのかもわからなくなっていた。ただ、あのマンションから離れたかった。
交差点を渡ろうとしたとき、突然、強いヘッドライトが目に入った。直後に、鋭いブレーキ音が響いた。
振り向くことしかできなかった。次の瞬間、身体が宙へ投げ出された。
三十分ほどあと。マンション前の騒ぎをようやく収めた直人のスマートフォンに、見覚えのない市内番号から着信が入った。
「神谷直人さんのお電話でよろしいでしょうか」
「はい」
「汐浜警察署交通課です。神谷千晴さんが先ほど交通事故に遭い、汐浜中央医療センターへ救急搬送されました」
直人はスマートフォンを握ったまま動かなくなった。
「容体は?」
「現在、重体です。病院で緊急処置が行われています。できるだけ早く病院へ向かってください」
4.事故のあと、私は別の弁護士を選んだ
直人が汐浜中央医療センターへ駆け込んだとき、スーツは雨でびしょ濡れになっていた。
救急処置室の扉は閉ざされている。廊下に立つ直人は、普段仕事で見せる冷静さを完全に失っていた。
しばらくして、看護師が書類を持って出てきた。
「神谷千晴さんのご家族はいらっしゃいますか?」
直人がすぐに前へ出た。
「夫です」
「頭部を強く打っていて、頭蓋内圧が上がっています。現在、緊急手術の準備を進めています。こちらの緊急連絡先の確認をお願いします。担当医からもすぐにご説明します」
直人が持つペンは、ずっと震えていた。
玲奈が陽翔を連れて病院へ来たときも、直人は救急処置室の前に座ったままだった。
「直人、あんまり自分を責めないで。千晴さんが事故に遭うなんて、誰にも予想できなかったよ。それに、もともと夜の店で働いてたし、最近はいろんな人と揉めて――」
直人が勢いよく顔を上げた。
「もういい」
玲奈が目を見開く。
「直人?」
直人は玲奈を見た。
「さっき、マンションで千晴が殴られたのを見た。すぐに行けたのに、玲奈に腕をつかまれて、俺はまた止まった」
玲奈の顔から血の気が引いていった。
直人はもう一度長椅子に座り、それきり何も言わなかった。
廊下の奥から靴音が近づいてきた。
濃い色のスーツを着た男が、若い弁護士を一人連れて歩いてくる。直人はその顔を知っていた。個人的な知り合いではない。弁護士業界で名前を聞いたことがあったのだ――黒崎悠真。
都内の大手総合法律事務所に勤務したあと、汐浜へ戻って拠点を構え、企業紛争や危機管理、大型の民事事件を主に扱っている。
悠真は直人の前で立ち止まった。
「神谷先生。昨日、千晴さんから連絡をいただいています。今朝、大河内氏の件、ネット上の名誉毀損やプライバシー侵害、それから離婚協議について正式にご依頼を受けました」
直人の表情が変わった。
「離婚?」
「まずは協議で進めます。合意できなければ、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます」
悠真は手元の資料をファイルに戻した。
「大河内氏の件については、千晴さんが回復してから、ご本人の意向を確認したうえで警察署へ同行します。現時点の映像を見る限り、民事上のセクハラだけでなく、不同意わいせつ罪に当たる可能性もあります」
直人が手を握りしめる。
「俺たち夫婦の問題です」
悠真は静かに直人を見た。
「千晴さんは、私の依頼者でもあります」
それだけ言うと、悠真はナースステーションへ向かった。それ以上、二人が言い争うことはなかった。
5.彼はようやく玲奈の嘘を知った
翌朝、悠真の事務所から、直人の勤務先へ正式な通知が送られた。
千晴はすでに別の代理人へ依頼している。今後、大河内氏に関する件と離婚協議について、夫婦間で直接連絡を取ることはしない。
同じ頃、玲奈の家事事件にも動きがあった。
森川との離婚調停はまだ続いていた。玲奈の代理人である直人のもとに、森川側から新たな資料が提出された。婚姻中のメッセージの記録、玲奈がほかの男性と交際していたことを示す資料、そして親子関係をめぐる手続の中で提出されていたDNA鑑定書も含まれていた。
直人は一枚ずつ資料をめくり、陽翔の鑑定結果を目にしたところで手を止めた。
森川と陽翔の間に、生物学上の父子関係は認められなかった。
玲奈が事務所へ来ると、直人は資料を机の上に置いた。
「森川側が調停に出してきた資料だ。陽翔は森川の子じゃないのか?」
玲奈の顔色が変わった。何も答えない。
直人は玲奈を見た。
「玲奈は今まで、森川が理由もなく疑って、行動を束縛して、そのうち暴力を振るうようになったって言ってたよな。森川が暴力を振るったことに、どんな理由があっても正当化されない。それとこれは別だ。そのうえで聞いてる。どうして俺にずっと隠してた?」
玲奈はゆっくり視線を落とした。
「知ったら、直人まで私を見捨てると思ったから。陽翔は直人のことが好きだし、あの子にも頼れる人が必要だったの」
「だから俺に嘘をついてよかったのか?」
玲奈が勢いよく顔を上げた。
「じゃあ、直人は? 大学のとき、酔った勢いで私と関係を持ったのは誰? 妊娠したってわかったあと、今は産めないって何度も言ったのは誰だった?」
直人の身体が固まった。
玲奈は直人を見つめた。
「私は手術を受けた。そのあと家の経済状況まで悪くなって、大学も辞めた。直人はそのまま勉強を続けて、法科大学院へ行って、司法試験に受かって、弁護士になった。ずっと私に負い目があったんでしょ?」
執務室が静まり返った。
それこそ、直人が長い間手放せずにいたものだった。
若かった自分の選択で玲奈の人生を壊した。直人はずっとそう思い続けていた。だから玲奈が再び現れ、「怖い」と口にするたびに、自分が助けなければならないと思った。
過去の負い目を埋めようとするたびに、その代わりに何を削ってきたのか。直人は、それを考えてこなかった。
大河内の件も、私が入院したからといって止まったわけではなかった。
私が正式に警察へ被害を申告するつもりだと聞き、ワインバーの店長から悠真へ連絡が入った。過去二年間に退職した女性スタッフのうち二人が、大河内から似たような行為を受けたと個人的に相談していたという。
本人たちの了承を取ってから、悠真は二人に連絡した。一人は警察に事情を話すことに同意し、もう一人は当時交わしたメッセージを今も保存していた。
大河内は、私が示談書に署名すれば、それで終わると思っていた。
けれどもう、一枚の示談書で済む状況ではなくなっていた。
私が意識を取り戻したのは、事故から四日目だった。
最初に見えたのは、ぼんやりした天井の光だった。目を開けたことに気づいた看護師がすぐに医師を呼んだ。
「水野さん、聞こえますか。無理に話さなくて大丈夫ですよ」
私は口を開こうとしたが、声が出なかった。
看護師がナースコールを確認し、そばに立った。
「焦らなくて大丈夫です」
医師の診察を受けてから、自分が頭部の手術を受けたこと、左脚も骨折していること、この先もしばらく入院とリハビリが必要になることを知らされた。
状態が安定し、ICUから一般病棟へ移ってから、悠真が病室へ来た。
ICUでは面会が厳しく制限されていた。悠真はベッド脇の椅子に座った。
「神谷先生も今日、来ています」
私は少し黙った。
「会う」
「本当に?」
「うん」
悠真は、それ以上聞かなかった。
病室の扉が開き、直人が入ってきた。
記憶の中より少し痩せて見えた。ベッドのそばまで来ても、すぐには近づこうとしなかった。
「千晴、ごめん。玲奈のことも、今は全部知ってる。すぐに許してくれなんて言える立場じゃない。でも、こんなことになるとは本当に思ってなかった」
私は謝罪には答えなかった。
「あのショールは?」
直人が一瞬戸惑う。
「家に戻してある」
「いらない」
「どうして?」
「玲奈に渡した日から、私にとってはもう終わったから」
直人の唇がわずかに動いた。
私は続けた。
「大河内さんに触られたとき、最初に思ったのは直人に相談することだった。事務所で午前中ずっと待った。そのあと、お母さんが残してくれたショールを玲奈が着けてた。次は、大河内さんがあなたの事務所の会議室に座ってて、直人は私に示談を勧めた」
少し息を整えた。
「最後は、自分の家の前で殴られた。直人は、それを見てた」
直人がうつむいた。
「千晴……」
「一つ一つなら、昔の私はたぶん許してた。でも、もうこういう生活はしたくない」
悠真が用意していた離婚条件の書類をベッド脇のテーブルへ置いた。
私はそれを直人のほうへ押した。
「まずは話し合いで決めたい。まとまらないなら、家庭裁判所で離婚調停にする」
直人は書類を見つめたまま、長い間動かなかった。
「どうしても、離婚したい?」
「うん」
今度は、もう少し待ってくれとは言われなかった。
6.もう、私は待たない
退院しても、私は元のマンションには戻らなかった。
悠真がリハビリ先の病院に通いやすい短期のマンスリーマンションをいくつか探してくれ、その中から自分で選んで契約した。直人には衣類や私物をまとめてもらい、引っ越し業者を通じて送ってもらった。
私たちの間に残っているのは、離婚と財産分与の話だけだった。
双方の代理人を通じ、何度か協議が行われた。
預貯金、家電、家具、賃貸物件の退去に関する負担まで離婚条件として整理した。離婚届には、成人二人の証人にも署名してもらった。
汐浜市役所へ行った日、直人は先にロビーで待っていた。私は杖をついて中へ入った。
窓口で離婚届が受理された。その日、私たちの婚姻関係は終わった。
私は旧姓に戻った。水野千晴。
身体が少しずつ回復してから、悠真に付き添ってもらい、警察署で大河内から受けた行為について正式に被害を申告した。
店からは防犯カメラの映像一式が提出された。店長や当日勤務していたスタッフも事情聴取に応じ、以前退職した女性スタッフの一人も、自分が受けた類似の行為について警察に話してくれた。
事件として捜査が進み始めた。
ネット上の匿名投稿も、そのまま消えて終わったわけではなかった。
悠真は発信者情報開示の手続きを進め、いくつかの匿名アカウントの利用者を特定していった。そのうち一つは、玲奈のアカウントと何度も個別に連絡を取っていたことがわかった。
玲奈は、私が直人から離れようとしていることに腹を立て、自分の知っている情報の一部を相手へ渡したと認めた。私が住んでいる地域、マンションの外観、昔働いていた場所。すべての投稿を玲奈自身が書いたわけではなかったが、玲奈が渡した情報が、その後の誹謗中傷や住所特定を広げる材料になった。
その点についても、損害賠償を含めて処理することになった。
大河内の会社も、内部調査を始めた。
女性従業員への行為だけでなく、私的な支出と会社経費の区分が不明確な支出が複数見つかったという。刑事責任の問題に発展するかどうかは、警察や関係機関の判断に委ねられた。
大河内の妻も、自分の弁護士を立てて離婚と財産分与の手続きを始めた。
玲奈の望んだような結末にもならなかった。森川との離婚問題は引き続き家庭裁判所で扱われ、DNA鑑定や婚姻中の交際関係も争点の一部になった。
その後、森川は最悪の選択をした。
ある夜、ハンマーを持って玲奈の住む部屋へ押しかけた。大きな物音を聞いた近隣住民が通報し、警察が駆けつけたとき、玲奈はすでに重傷を負って倒れていた。
両脚に深刻な怪我を負い、その後も何度か手術を受けたが、後遺症が残った。森川は現場で身柄を確保され、傷害事件として刑事手続が進められた。
ニュースでその件を見たとき、私は数十秒で画面を消した。
夫婦の間にどれだけ嘘があったとしても、それはそれだ。森川が暴力を選んだことは、別の問題だった。
直人の法律事務所でも、大河内の件について内部調査が行われた。
問題になったのは、事務所と大河内の会社との間に顧問関係があることを知りながら、直人が個人的に示談へ関与したことだった。さらに、正式に私から依頼を受けていない段階で私のボイスレコーダーや原資料を保管していたこと、弁護士という立場を使い、事務所の顧問先に有利な内容の示談を繰り返し勧めたことも調査対象になった。
調査のあと、直人は事務所を辞めた。
私も関係資料をそろえ、直人が所属する弁護士会に懲戒請求を行った。
その後の手続を経て、直人には一定期間の業務停止処分が下された。期間終了後も弁護士資格そのものは残ったが、以前のような大企業の案件へ戻ることはできなかった。
後から聞いた話では、シェアオフィスの一室を借り、債務整理や比較的小規模な民事事件、書面作成などを一人で扱うようになったらしい。
7.まずは自分の足で立ちたい
リハビリを続けていた頃、私はもう一度、悠真の事務所を訪れた。
事務所は駅から近く、窓の外には川沿いの景色と電車の線路が見えた。悠真は机の引き出しから透明なファイルを取り出した。中に入っていたのは、何年も前の救急外来の領収書で、紙の端は少し黄ばんでいる。
私はしばらく見つめてから、ようやく思い出した。
「まだ持ってたの?」
「捨てられなくて」
ずっと昔、ガールズバーの夜勤を終え、アパートへ帰る途中だった。コンビニの近くで、一人の若い男性が倒れているのを見つけた。腹部を押さえ、顔色は真っ白だったので、私はすぐに119番した。
病院では胃穿孔と診断された。治療が始まって間もなく家族にも連絡がついたが、到着するまでの間、入院に必要な用品を私が買い、会計の際にはその日の医療費の一部も一時的に立て替えた。
命に別状がないことを確認してから、私は翌日の仕事があったので先に帰った。
そのときの男性が、悠真だった。
後日、悠真は一度私を探し出し、立て替えたお金を返してくれた。それからは共通の知人を通じ、たまに近況を耳にする程度だった。私が結婚してからは、ほとんど連絡も取っていなかった。
悠真は領収書をファイルへ戻した。
「結婚したって知ってからは、こちらから連絡しないほうがいいと思ってました。だから、数日前に千晴さんから突然メッセージが来たときは驚きました。送られてきた資料を見て、初めて今まで何があったのか知ったんです」
私は少し笑った。
「じゃあ今回助けてくれたのって、昔の恩返し?」
悠真も笑った。
「最初は少し、そういう気持ちもあったかもしれません。でも途中から、それだけじゃなくなりました」
執務室が静かになった。
しばらくして、悠真が口を開いた。
「千晴さん。好きです。いつかまた誰かと一緒にいたいと思える日が来たら、その相手に俺を選んでもらえたらと思っています」
私はしばらく黙ったあと、首を横に振った。
「悠真さん、ありがとう。今回、悠真さんがいなかったら、本当にどうなってたかわからない。でも今は、答えられない」
悠真は何も言わずに聞いていた。私は自分の手を見つめた。
「ずっと直人の人生を中心に生きてきたんです。直人が勉強するなら私が働く。司法試験を受けるなら、直人が受かれば私たち二人の生活もよくなるって思ってた」
「本当に弁護士になってからは、もう少し我慢しよう、もう少し待てば昔みたいに戻れるって、自分にずっと言い聞かせてた。気づいたら、自分がどんな暮らしをしたいのかもわからなくなってた」
私は顔を上げた。
「直人と別れたばかりで、すぐ悠真さんの手をつかんだら、私にとっては依存する相手を変えただけになってしまう気がするんです」
悠真は長い間、私を見ていた。
「わかりました。じゃあまずは、自分の人生をやってみてください」
私は笑った。
「はい」
8.CHIHARU
一年後、私は自分の店を開いた。
駅前で一番家賃の高い一等地ではなく、汐浜駅東口から少し歩いた、人通りの安定した商店街の一角だった。以前は十年以上続いた小さな飲食店だった場所で、一階の店舗はそれほど広くない。壁際にはワイン、日本酒、クラフトビールを並べ、窓際には試飲のできるハイテーブルをいくつか置き、奥には小さなストックルームもある。
この一年でリハビリを終え、交通事故に関する損害賠償の手続きもほぼ片づいた。開業前には酒類販売業免許を取得し、店内で試飲や軽食を提供するために必要な営業上の手続きも済ませた。
内装や設備の費用には、それまでの貯金に加え、離婚時の財産分与で受け取った分と、交通事故の賠償金を使った。
店の名前は、シンプルにした。CHIHARU。
昔は、夜に「酒を売っているだけ」と見られることも多かった。
けれど実際に自分で店を持つと、あの頃身につけたことが全部役に立った。酒類の卸業者を何社も知っているし、どのインポーターなら納品が安定しているかもわかる。客の好みを聞いて、どんな一本が合うか考えることもできるし、酔いが回っている客に、もう一杯勧めてはいけないタイミングもわかる。
どれも、少しずつ自分で覚えてきたことだった。
オープン初日には、昔から付き合いのあった仕入れ先の人たちも何人も顔を出してくれた。
店先で挨拶をしていると、ふと道路の向こうに人影が見えた。直人だった。
普通の白いシャツを着ている。以前より少し痩せて見えた。
道路越しに、一瞬だけ目が合った。
私はすぐに視線を戻した。
店の中には、待っている客がいる。
しばらくすると、入口から聞き覚えのある声がした。
「千晴さん。オープン初日から客を店先で待たせるつもりですか?」
振り向くと、悠真が開店祝いの花を抱えて立っていた。
「いつからお客さんになったの?」
「今日からです」
私は花を受け取った。
「じゃあ、まず何か買って」
「初回来店の割引は?」
「ありません」
悠真が笑った。
私も笑った。
カウンターへ戻ったあと、もう一度道路の向こうを見ると、直人の姿は消えていた。
探そうとは思わなかった。棚から試飲用のグラスを二つ取り出し、開けたばかりのワインを少し注ぐ。
悠真が片方を受け取った。二つのグラスが軽く触れ、澄んだ音がした。
昔の私は、人生のいちばんいい結末は、誰かの一番苦しい時期を一緒に乗り越えて、その人が成功したあとも隣にいることだと思っていた。
けれど、自分の人生の価値を、誰かと最後まで一緒にいられたかどうかで決める必要はなかった。
この一年で、私はもう一度、自分の脚で歩けるようになった。
自分の名字に戻った。
そして初めて、自分の名前を掲げた店を持った。
今ならわかる。水野千晴が、どんな人生を送りたいのか。
――完――




