異世界転生という次の人生に迷ったら@異世界転生の女神・十萌
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どうぞよろしくお願いいたします。
私の名はゴッデス・十萌。
ゴッデスというのは、英語で『goddess』と書いて女神のこと。
なので、ゴッデスは苗字ではなくて肩書みたいなものかしら。
名前は十萌と書いて『ともえ』
異世界転生の女神、十萌です。よろしく。
大きなテーブルを挟んで正面に立っている一人の男にそう言った。
「女神様?」
男は今の状況を全く理解していないようだ。
ここがどこで何故自分がここにいるのか、そして何故女神がここにいるのか。
女神と名乗った女性は、いかにも本や絵画に出てくる女神的な白いワンピースを着ている。
顔立ちは童顔で、まだ二十歳にもなっていないであろう綺麗な肌艶は少女のようにも見える。
ただ、女神と言うからには年齢などその百倍、千倍は超えているのかもしれない。
そして、小柄な女神の体よりも大きな翼が背中から生えており、神々しく神秘的な雰囲気が漂っている。
女神が座る椅子の左右にはランタン台があり、その上にランタンのような明かりが置かれている。明かりはその二か所だけであるが、強い光を放っていて二人をしっかりと照らしているので明るく感じる。
男が周りを見渡すと、白地に黒いマーブル模様の大理石のような石が敷かれた床と、ギリシャの遺跡で見るような神殿の柱が何本も立っている。
壁と天井が真っ黒なのは、奥の方まではランタンの光が届いていないためだ。その先が広いのか狭いのかどのようになっているのかまでは分からない。
十萌は手元のファイルを見ながらそれを読み上げるように、男に向かって淡々と話す。
「高野修、二十七歳、富山県出身、現在愛知県名古屋市で一人暮らし、独身、恋人無し、友達無し、人付き合いは仕事の関係者のみ。そして、大学卒業後今の物産イベント会社に就職して五年目。仕事ができない上司の元で朝早くから夜遅くまで仕事。苦労していたようですね」
修は十萌の話を切って言う。
「そんな事より、ここはどこなんだよ? なんで俺はこんな所にいるんだ? 俺は仕事で忙しいんだ! 明日も早く仕事に出なくちゃいけないんだよ!」
十萌は、修の少し怒った顔を見て言う。
「ここは異世界転生の神殿。そして私はその異世界転生を司る女神。国によっては閻魔様って呼ばれたりもするけれど」
「は?」
――修はこの異世界転生の神殿に来るまでの記憶を遡った。
・‥…――☆・‥…――☆・‥…――☆
そうだ。今、俺は名古屋から大阪に出張で来ている。
明日から市民ホールで物産展が開催されるので、その会場設営のためだ。
ふと会場を見ると違和感がある。
アルバイトに任せていた会場レイアウトの設営だが、左右逆になっているではないか。アルバイトに問いただしたところ、俺の上司の指示に従って設営していたとの事だった。
上司が企画書をしっかり見ていなかったのが原因である。
当の上司は、物産展に出店する店舗の方々と慰労会と称して、アルバイトに設営を任せてさっさと道頓堀へ呑みに出てしまっていた。
慌てて俺が上司に連絡するが、答えはこうだ。
「そうだったけか? ごめんな、直しといてくれ」
たったそれだけだ。
物産展の開始時間が遅れる事は、我が社にとっては万死に値するだろう。
大急ぎでレイアウトの手直しにかかるが、アルバイトを遅くまで拘束できないので、ほぼ一人で手直しをした。
必死に直して完成させた頃にはもう深夜一時を回っていた。
明日は物産展初日。朝早くから打ち合わせやお客様誘導などで忙しくなる。とりあえず、風呂と仮眠のために滞在先のビジネスホテルへと向かった。
もう、クタクタだった。
滞在先のビジネスホテルの前にある交差点は、真夜中にもかかわらず交通量が多く、横断歩道がない。
向こう側に渡りたかったが、こんな所を強引に渡れば事故にあっても文句は言えないだろう。
早く帰りたい一心で、左右から車が来ないのを確認してさっさと渡ろうとした。
だが、その歩道の横には階段があり、交差点の下に通っている地下道へと続いていた。
俺は地下道の階段を降りたが、登った記憶がない。
気が付いたらここにいたのだ。
☆――…‥・☆――…‥・☆――…‥・
(――もしかして……)
修は嫌な予感がした。
決して、地下道を抜けたらここにやって来たわけではない。
「そう、あなたは地下道の階段から落ちて、現在意識不明の重体です」
「あの時は仕事で無茶苦茶疲れていて、ふらふらで帰っていたからなぁ……」
「まだ死んでいませんが、魂が抜けているのでいつ死んでもおかしくありません」
ああ、何という事だ。あの時、地下道ではなく交差点を強引に渡れば良かったかな。人生の二択で正しい方を選んだばかりに不幸になった。そんな気持ちにもなってしまう。
しかし、修は仕事の事が気になって仕方がなかった。
「あの、他の皆はどうしているか分かりますか?」
「他の皆? ……あなたの身の回りの方の事ですか? 少しお待ちなさい」
十萌が机の上に手をかざすと、そこがモニターの様になって何かを映し出す。
両親が映像となって浮かび上がる。何事もなかったかのように寝ているようだ。おそらくまだ会社から事故の連絡がいっていないのだろう。
救急隊に運ばれた時の様子が映し出される。どうやら、通行人に倒れている所を通報されたようだ。もし俺が生きて戻ることができれば、彼には本当に感謝しなければならない。
持っていた名刺や資料を見てくれていれば、病院や警察の方から会社に、いや上司にすぐに連絡が入るはず。
しかし、次に映し出された映像では、上司は飲み会の後ビジネスホテルに一人戻って幸せそうに爆睡している。携帯コールには全く気が付いていない。
ふと、修は苦労に見合わない仕事だったんだと改めて思うと、本当にもうどうでもよくなってきた。
何かから解放された気分になった。
「あの……人間て、死んだら地獄とか天国とか行くんですか?」
十萌はファイルを見て修に言う。
「基本的にはそんな感じですね。生前の行いで行き先が決まります。でも、元の世界にあるあなたの肉体は、頭にたんこぶがあるくらい。傷はたいしたことありません。魂を戻せばすぐにでも今まで通りの生活ができるでしょう」
「あのろくでもない上司の元に戻るのもなぁ」
仕事の事を思い出すと、上司が連想されてしまって少し拒否反応が出た。
「今回は打ち所が悪かっただけで、運が悪い事故でした。あなたは人並みにまじめで目立った悪事もないし、今後の人生の選択をさせてあげましょう」
そう言って、修に問いかける。
「異世界転生して人生を一からやり直すか、元の世界に戻ってあの体で人生を続けるか、選んでください。あなたの次の人生の希望を叶えましょう」
「最近流行の異世界転生か……それも面白そうだな」
とは言え、修は異世界での人生やり直しに魅力を感じたが、いきなりそう言われても即答できないでいた。
すると、十萌は修に優しい声で言う。
「すぐには難しいかしら? それでは、七十二時間の猶予を与えます。じっくりと今までの人生を振り返ってよく考えなさい」
「七十二時間……たった三日ですか?」
まだ頭の中が整理できていない修は思わずそう言った。
「七十二時間の壁、簡単に言うとそれが人命救助のタイムリミットです。それまでに答えを出してください」
十萌はパタンとファイルを閉じた。
「カロン、彼をテラスに案内しなさい」
十萌に呼ばれたカロンが暗闇から音も立てずに現れた。
黒いローブを纏い、大きな鎌を持った西洋の死神のような姿をした老人である。
「高野修様、どうぞこちらへ」
カロンのしゃがれた声に不安を感じる修だったが、今はその言葉に従うしかなく、案内されるがまま暗闇の中へ消えて行った。
「はい、次の方通して――」
十萌の声が遠く後ろで聞こえた。どうやらここへ来る人間は修だけではないようだ。
暗闇に少しずつ目が慣れてくると、そこは西洋の城や屋敷で見られるデザイン性豊かな鉄の柵が並ぶテラスの中だった。
テラスの向こう側は薄暗いが、大きな川が流れているのが分かる。まるで海ではないかと思えるほど大きく、対岸が見えない。
テラスは川に突き出したように建てられており、雄大な川を一望できるようになっている。実に見事な景色だ。
そこにはいくつものテーブルと椅子が並べられていて、小洒落た喫茶店のように見える。
初めて夜の川を見た修は、少し怖い気もしたが、その絶景に見惚れていた。
いろいろと考えるには良い場所である。
そこへ音も立てずにカロンが来て、紅茶とケーキをテーブルに並べた。
「そうそう、その鉄の柵は錆びている所もあってな、外れるかもしれん。くれぐれも、もたれ掛かって川に落ちぬように。この川は三途の川。川にはあの世に行きそびれた亡者が泳いでおるので、引きずりこまれてしまうぞ」
親切心で話しているカロンであろうが、その言葉はあまりにもホラー要素が強すぎて、修はもう気軽にその景色を見る気にはなれなかった。
そして、出された紅茶とケーキは本当に食べても大丈夫なのだろうかと、急に不安になった。
「あ、あの、カロンさん、異世界転生したら次の人生ってどんな事するんですか?」
「さぁ……、儂にはよく分からぬ。そもそも、どんな事をするのかは自身が決める事じゃろうて。自身がやりたい事、成りたいものを女神様に伝えなされ」
そう言って、カロンは建物の中へ入っていった。
ふと、修は思う。
「異世界転生しても、こっちの世界で死んだ事になれば労災って降りるのかな? 一応、出張中の事故ってことだし」
田舎にいる両親に保険とかちゃんと支払われるのだろうか。両親もあのダメ上司もその辺がきちんと処理できるんだろうかと不安になる。
修は自分の人生を振り返ると、のめり込むような趣味も娯楽も特になく、学校と家の往復、社会人になってからは仕事に追われている日々、そんな事の繰り返しだった。
「新しい世界で無敵の勇者とかやるのも面白いかな」
学生の頃に読んだ異世界冒険小説の事が思い浮かぶ。
それはそれで楽しい異世界転生人生に思えたが、十萌はただ異世界転生すると言っただけで、無敵の勇者になれるとは言っていない。
ひょっとしたら、その他大勢の国民かもしれないし、悪魔にやられる噛ませ犬的な兵士になるかもしれない。
「そういうの、ちゃんと聞いておくべきだよな」
紅茶を飲み終えた修は、テーブルの端に立てられているメニューを手に取った。
「追加頼んでもいいのかな……。三途の川の渡し賃とか持ってないけど」
そう言って中を開いてみたが、メニューと思ったそれは、アイドルのライブコンサートのチラシだった。
修は、雰囲気がオープンテラスの喫茶店のようだったので、それをてっきりメニューと思っていただけだった。
「なんだこれ? 俺がいた世界のチラシがなんでこんな所に?」
パラパラとチラシを見るが、聞いたこともない名前のアイドル達ばかりだ。
もともと芸能関係にはあまり興味がない修には、最近の人気アイドルすらよく分らなかった。
ライブ会場は、修が住んでいる街の隣街のようだが、隣街には大きなライブ会場はない。
おそらく地下アイドルやインディーズバンドが使うような小さなライブハウスであろう。
「仕事以外の事ってほとんどしていなかったから、こういうのってよく分からないな。なんか元の世界でも取り残された感じがする……」
三途の川を眺めながら修は決意した。
「やっぱり、異世界転生しよう。無敵の勇者になれなかったら、異世界で今やってる仕事みたいな物産展イベント運営をしよう。今度は良い上司の元で働けるといいな」
修は心が決まったので十萌に会わせて欲しいとカロンに頼んだ。
カロンに連れられてしばらく歩くと、最初に来た場所へ案内された。
そこには正面の大きなテーブルを挟んで異世界転生の女神、十萌が座っている。
修は、十萌に先ほど考えた次の人生について話し、異世界転生を希望する事を伝えた。
「もちろん、そういう世界に転生できますが、無敵になれるかは自分の努力次第です。スキルや知識を活かすのはあなた次第ですからね。目標や情熱を持ち、周囲からの信頼を得られなければ仮に無敵になっても何もできませんよ」
「ははは、ただ無敵だからって何でもできるってわけじゃないのか」
無敵の勇者も漠然となりたいだけで、修には目標があるわけでもなかった。
それなら、異世界で今の仕事のような事ができればいいだろう。
目的もノウハウもしっかりとあるので、十萌に第二希望を伝える。
「分かりました。本当にそれで構いませんか? それって転生希望じゃなくて、転職希望じゃないのかしら?」
十萌の言葉に、修はハッと気が付いた。
元の世界と同じ事をするためにわざわざ異世界転生をする必要などない。
むしろ異世界に持っていけない住み慣れた世界、築き上げてきた人脈を捨てることになる。
「ありがとございます、女神様。俺、やっぱり元の世界で今までのスキルや努力を活かして生きていきます。それともう一つ、元の世界で新しい自分の生き方も見つけようと思います」
そう心を決めて、修は元の世界に戻っていった。
☆ ☆
修が気が付くとそこは病院のベッドだった。
どうやら二日ほど気を失っていたようだ。
修の手には三途の川のテラスで手に取ったチラシがしっかりと握られており、異世界転生の女神の事が夢でなかったことを証明している。
もちろん医者や看護師達は、修がそのチラシをいつ手に入れたのか不思議でならなかったようだ。
とはいえ、修も夢なのか現実なのかあやふやだったので、退院した翌日、意を決してチラシの場所に行ってみた。
やはりそこは実在する場所で、雑居ビルの地下にある小さなライブハウスだった。
「やっぱり、あれは夢じゃなく本当にあった事だったんだな」
修は、どことなくホッとした気持ちになった。
そして、職場に復帰した修はその状況を見て愕然とした。
案の定というべきか、修の事故の対応はもちろん、その間不在だった時の仕事も滞っており、修の上司は何一つできていない。
「さすがにこの有り様じゃ、もうここでは仕事ができないな。どんなにやりがいがあっても、ここには不安しかない」
そう思った修は、翌日辞表を出して会社を去った。
――それから、二か月後。
物産展イベントの会社を辞めた修は、すぐにショッピングモールの広報として転職に成功していた。
現在、そこでイベントを管理している。
もちろん求人のタイミングもあったが、五年間で身に着けた前の職場でのノウハウが買われたようだ。
いろいろな業者との調整があるので、たまに残業もあるがそれは仕方のない事だ。
ただ、仕事のフォローをしてもらえるので、安心して仕事に打ち込める。
おかげで修は、プライベートも充実させることができるようになっていて、新しい自分を見つけていた。
今日も仕事を終えた修は、急いでタクシーを捕まえる。
「今日に限って残業が入るとはなぁ……間に合うかな」
そう言って、タクシーの運転手に行き先を告げた。
「姫君達のご招待に遅れる事は万死に値する」
今からだと、家に戻って風呂に入って着替える時間はない。
いつもなら風呂で身を清め、戦闘服に身を包み、武器防具を握りしめて戦場へと向かう。
だが、今回はそれでは間に合わない。
戦闘服や武器防具は、姫君達の城で揃えればよい。今はとにかく先を急がなくてはいけない。
幾多の困難を乗り越え、次の歩道橋のある大きな交差点を右折すれば残り数十メートルでたどり着く。
しかし、その大きな交差点で信号待ちというラスボスが立ちはだかり、修の乗るタクシーを止めてしまったのである。
「運転手さん、ここでいいです」
そう言って、金を払ってタクシーを降り、歩道橋を駆け上がって行った。
そして、交差点を下に見ながら歩道橋を走り、階段を駆け下りた。
――あと少しだ。
残り時間は後僅かだが、間に合いそうだ!
と、思った後の記憶がない。
☆ ☆
私の名はゴッデス・アンナ。
ゴッデスというのは、英語で『goddess』と書いて女神のこと。
なので、ゴッデスは苗字ではなくて肩書みたいなものかしら。
異世界転生の女神、アンナです。よろしく。
大きなテーブルを挟んで正面に立っている修にそう言った。
「女神様?」
どこかで聞いた下りだ。
修は見覚えのある神殿の様子を見てすぐに理解した。
「不幸にもあなたは歩道橋の階段を踏み外し転落しました。幸いにもたんこぶ程度ですので、このまま元の世界に……」
「分かったから、早く! 早く、元の世界に早く戻してください! 遅れるから!」
アンナの言葉を遮って修は言う。
「あ、あの、転生の話とかまだ何も……」
「そういうのは分かってますから、今すぐ戻してください!」
修はそう言って、半ば強引にアンナの力で元の世界にさっさと戻してもらった。
「な、なんなの! 私、異世界転生の女神なのよ。神様の話くらい聞きなさいっての」
アンナは、納得できない様子で後ろに控えているカロンに八つ当たりする。
「今夜もお酒が旨くなりそうだわ。カロン、仕事終わったら付き合いなさいよ」
「やれやれ、また愚痴酒ですか? 十萌様みたいに、趣味を副業にするのも良い気分転換になりますぞ。収入も増えますし」
そう言って、やれやれという感じでカロンはため息をついた。
しかし、居酒屋でいつものように適当に愚痴を聞き流していれば旨い酒をタダで呑めるので、カロンにとってはそこまで嫌な誘いではないようだ。
☆ ☆
ここは、雑居ビルの地下にある小さなライブ会場。
異世界転生の神殿で手にしたチラシの場所だ。
ライブ会場のホールには、物販が所狭しと並んでおり、観客で混み合っている。
今夜は、地下アイドル達が歌って踊るライブの日である。
そして、中では……
「ま、間に合った!」
頭にできたたんこぶを押さえながら、息を切らして立っている修がいる。
「良かった! 今回も姫君達にお会いできるぞ!」
物販で買ったライブTシャツを着て、ペンライトを振りかざし、生写真を懐に忍ばせる。
装備は万全だ。戦闘開始である。
給料の半分以上をここで課金する。
これは浪費でも貢ぎでもない。
仕事とプライベートを両立して、趣味に投資しているだけである。
ここではたくさんの仲間もできた。
互いに切磋琢磨するように推しを語り、情報を交換する。
とはいえ、修は通ってまだ二か月なので、初めて対面する地下アイドルの子もまだまだいる。
今夜、一番最初に歌う子もそうである。
初めての子は、ノリや雰囲気が分からない。
そこは長年通っている仲間に情報を伝授してもらったりする。
とはいえ、やはり初対面は不安ではある……。
――はーい!
今夜の一番目は私だよ!
みんなー!
私の名前を十回呼んでっ!
観客たちが声を合わせて名前を呼ぶ。修は教えてもらった通りに皆に合わせる。
萌☆ 萌☆ 萌☆ 萌☆ 萌☆ 萌☆ 萌☆ 萌☆ 萌☆ 十萌ーーー☆彡
すると、小さな羽根の付いたリュックを背負ったロリィタファッションの十萌がマイクを持ってステージに現れた。
「今夜も来てくれてありがとう!! みんなの天使、十萌だよ! きゅんきゅんしていってね!!」
十萌がそう言って観客達に笑顔で手を振った。
小さな羽根の付いたリュックが背中で揺れ動くと可愛さが倍増する。
まるで今夜の十萌は可愛い天使のようだ。
観客は一斉に沸き立ち、拍手をする。
観客の最前列、そこにはペンライトを握って立っている修がいた。
十萌と修は思わぬ再会に、お互い時間が止まったように固まった。
「め、女神様、何してるんですか?」
「あなたが元の世界で見つけた新しい自分ってこれ?」
さすが女神だというべきだろうか、ステージの上から言葉ではなく心で話しかけてくる。
「き、今日は女神じゃなくて天使なの」
十萌は顔を赤くして修に言った。
伴奏の音楽が流れ始めると、時間が再び動き始めたかのように十萌はきゅんきゅん歌い出す。
そして修はペンライトを振りかざして音楽に合わせて踊る。
今夜もライブハウスは、地下アイドルたちが入れ替わり立ち代わり歌って踊り、そこはまるで別世界のような空間だった。
その後、修が十萌推しになるまで時間はかからなかった。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
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