クリスマスギフトは年賀状
「ねえ、このお守りっていつから付けてる?」
そう言いながら、美紀は僕のスクールバッグのお守りを無遠慮に触る。もっとも、担ぐようにして持っているから彼女の手元は見えないので、『感触から、彼女がお守りを触っているのが分かる』の方が正確かもしれない。
12月25日。吐く息が白い、2学期最後の帰り道。空が茜付いた16時頃だった。
互いの家が徒歩数分の所にある僕達は、いつもようにどうでもいい事を話しながら帰る。
「ああ、中学の時、大会前にバスケ部の皆で買ったら、3年くらい」
「そうだっけ?あれ、大会の結果って…」
「初戦敗退。せっかく買ったのに、全く勝てなかった」
「え、縁起悪くない?このお守り」
そう言いながら、彼女はお守りを触り続ける。
「まあ、そういう時のお守りって『皆で一致団結しよう』みたいなニュアンス強いし。だから気にせずに思い出として付けてる」
「本当、冷めてるのかそうじゃないのか、よく分からないね。ーーーあ、もう着いちゃった」
僕の家が、すぐそこに見えた。
「そう、だね」
今日で、彼女は引っ越してしまう。2つ隣の県だから行けない事はないけれど、会う頻度は今よりずっと減ってしまうだろう。
「……じゃあ、向こうに行っても元気で。また今度」
「……うん。またね」
付き合ってるわけでもない、ただの幼馴染の僕達は、こんな別れ方しかできなかった。僕は名残惜しむように手を振りながら、玄関の扉を閉じた。彼女も扉が閉じるまで、僕に手を振ってくれた。
すぐに自室に逃げ込むと、僕はスクールバッグを乱暴に投げ捨てベッドに横たわる。
何も伝えられなかった。そんな後悔が押し寄せて、ただ茫然と虚空を見つめる。
数時間ほど経ち、ふとスクールバッグに目を向けると、はがきが1枚落ちていた。
なんだろう、と気になって手に取ると、『あけましておめでとう』の書き出しから始まった、美紀からの年賀状だった。
ああ、さっきお守りを触っている時に、横のポケットに入れたのか。
きっと暫く僕が気が付かないで、年が明けてから見ると思っていなんだなと納得して中身を確認すると、新しい住所、年賀の挨拶と、今までの感謝、それと私をどう思ってくれていたのかが綴られていた。
最後は、『今年もよろしくね。出来たら、ずっとその先も』で締められていた。
だから僕も、美紀に年賀状を出した。『今年もよろしく』と、『僕の気持ちは、直接会って伝えるから、少しだけ待ってほしい』と書いて。




