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ラストバトル  作者:
4/6

ラストバトル−2 sideヒロイン

高名な占い師が告げた。

−この子は世界を救うだろう。

あいつはそれを聞いて、私を殺さずに呪った。

人の期待と、自分の命を秤にかけ、私が苦悩するのを楽しむために。

だけど私はもう迷わない。

彼が愛するあの森を。

彼が生きるこの世界を、守りたい。


ただ一人無事にその足で立ち、弓を構える彼に、私は叫んだ。

「撃ってええ!」

額から後から後から流れてくる血も、今は気にならなかった。

深いダメージに、地に膝をついても、今は前を向いていた。

今を屈しては、全てが無になってしまう!

「いいのか、人間よ、私が死ねば、その女も死ぬ!」

世界を支配しようとする憎い相手が、私を呪ったその相手が、嘲うかのように告げる。

彼の弓を引くその手が、びくりと震えたのが見えた。

ひどい事を言っていると、自覚はあった。

それでも、彼しかいなかった。

他の仲間たちは深い傷を負い、地に倒れ、動くこともままならない。

だから、彼に言うしかなかった。

「撃って!!」

彼の無表情なその瞳が、この距離で何故か、揺れているのがわかった。

敵の狂気を思わせる笑い声が響く。

「撃ってぇ!」

見つめる先で、彼の揺れる視線は私から、敵へと移った。

その目が怜悧な輝きを帯び、唇が硬く引き結ばれる。

「お前は女を殺すのかッ」

敵の息を呑む気配に、微笑んだ。

−ありがとう。


  『生きて帰れたら、俺と結婚』


「呪いあれ!」

彼の声と共に、力を帯びた矢が、まっすぐに敵へと向かっていく。

仲間たちが力を削いだその相手は、身動きできずにそれを、額へと受けた。

「うぐあああああああああ」

凄まじい叫びを聞くと同時に、目の前が白くなる。

倒れるその時は、やけにゆっくりと感じられた。

堅い地の感触。

私の意識は、そこでぷつりと途切れた。


生きて帰れたら、結婚。

約束を、守れなくてごめん。

だけど本当に、大好きだった。

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