1、【誕生の目覚め…?】
「ん…ん〜……ん?」
目を開けた瞬間、ステンドグラス越しの眩しい光が視界に突き刺さる。思わず手で顔を覆った。
背中がやけに冷たい。手をついてみると、床はコンクリートのように硬くて冷ややか。
起き上がって後ろを振り返ると、十字架に似た、装飾がやたら尖っていてゴシックめいた巨大なオブジェが立っていた。どことなく厨二心をくすぐるデザイン。
そこに寝かされていた自分を思い浮かべてーーーふと考える。
……これ、他人から見たら完全に生贄では?
しかも、寒い。いや、めちゃくちゃ寒い。体温が抜けていく。
まるで氷の中に閉じ込められていたような寒さだーーーって、あれ?
自分の身体に違和感。なんか、ちっちゃい。細い。軽い。
「……少女、かよ」
たぶん身長140cmくらい。華奢な体つきに金髪のロングヘア。完全にどこかのファンタジーに出てくるテンプレ少女じゃん。しかもなぜかーーー全裸。え、ちょっと待って、状況おかしくないか。
俺……いや、あたし? それとも「私」とか言うべきか。いや、もう面倒くさい。「あたし」でいい。なんでもいいや。
まず驚いたのは、前世の記憶を持っていることだった。 前は三十路になるまでまったく思い出せなかったのに、今回は目覚めてすぐ全部つながっている。
一つ目の人生は監禁と兵器としての生。二つ目はうつ病に苦しみながら静かに暮らしていた中年男性。そして三つ目ーーー今は、金髪の少女になっている。
だけど不思議なことに、今この幼女として生きてきた記憶は、まったく存在しない。え、想定外すぎる……。そんなパターンあるんだ?
必死に思い出そうとしたけれど、記憶は空っぽのまま。
体を震わせながら周囲を探索してみると、建物の外観はまるで中世の古城。しかもやたらオシャレ。 けれど、誰もいない。人っ子一人見当たらない。
……え、これからどうすればいいの?
まずは、食べ物の確保だよな。今はまだお腹は空いてないけど、衣食住は生きる基本。
とはいえーーー寒い。いや、さっきよりはマシだけど、肌がピリピリするレベルで寒い。
うん、とりあえず「食」が最優先。その次に「衣」。「住」に関してはこのお城があるし、当面はなんとかなりそう。 服は見当たらないけど、森があるなら葉っぱ隊って選択肢も……ってそれは最後の手段だ。
……せめて肌着くらい欲しい。切実に願う。心の底から。




