フリーデン国際高等学校の秘密
フリーデン国際高等学校は、華やかな校舎と最先端の教育施設を誇る名門校として知られていた。しかし、その裏で行われていた遺伝子改造技術の存在が、ある事件をきっかけに暴かれることとなった。
ヴェルデ共和国軍大佐ユリウス・ヴァレンティンがこの秘密を握ったのは、アジアン・コモンウェルス連合国による突然の襲撃がきっかけだった。戦場となった校庭には、改造人間である生徒たちの悲鳴と炎の匂いが立ち込め、無垢な日常が一瞬で崩壊していた。ユリウスはその光景を目にしながら冷静に通信を繋ぎ、ヴェルデ共和国の本部に詳細を報告した。
「フリーデン国際高等学校は、国際法を破り遺伝子改造技術を用いていた。アジアン・コモンウェルスの行動は、それを正当化する一端かもしれない」
報告を受けた政府は驚愕し、同時に世界各国に波紋を広げる事態となった。
事件が明るみに出ると、改造人間――ネオ・ヒューマンの存在は激しい議論を呼び起こした。
「彼らはただの兵器なのか。それとも、ひとつの命として尊重すべき存在なのか」
国連の会議場では、各国代表の声が入り乱れていた。
その中で若き政治家アナスタシア・エリオットは、一歩も引かずに壇上で叫んだ。
「彼らは私たち人類が生み出した未来です! 彼らを切り捨てることは、自分たちの罪を隠蔽するのと同じではないですか?」
彼女の声は、秘密組織「オーロラ」にまで届いていた。この組織は、改造人間の人権を守るために影で活動しており、アナスタシアの信念に共鳴していた。
「救出作戦を決行する」
リーダーが静かに告げた言葉に、オーロラの戦闘部隊のエースパイロット、レオ・アルトマンが応えた。
「了解。ターゲットの位置と状況を詳細に」
レオの目は鋭く、冷静さの中に炎を宿していた。彼の乗機は黒く流線型を描く最新鋭の戦闘機。かつての戦場で幾度となく死地をくぐり抜けた彼は、この任務をただの命令以上に感じていた――アナスタシアの理想を実現するために。
一方その頃、ヴェルデ共和国の軍基地では、改造人間である生徒たちが厳しい拘束下に置かれていた。
白い照明がやけに冷たい部屋で、生徒たちは次々に精密検査を受けていた。リオンの番が来ると、彼は静かに診察台へと座らされた。
「落ち着いて。すぐに終わる」
研究者が低い声で告げたが、その表情には不安が滲んでいた。
検査が進むにつれ、研究者の手が震え始めた。タブレットに映し出された結果を見た瞬間、彼は慌てた様子で部屋を飛び出していった。
「何があった?」
ユリウスが声を荒げると、研究者は息を切らしながら答えた。
「ティアティラの遺産が……見つかりました。」
「何?」
ユリウスの眉間に深い皺が刻まれる。研究者が震える指でタブレットを差し出すと、そこにはリオンの顔が映し出されていた。
「彼の遺伝子が、ティアティラの遺伝子と一致しました。彼がその者です」
ユリウスは静かにタブレットを受け取ると、リオンの顔を見つめた。脳裏に浮かぶのは、ヴィマナのコックピットから出てきた少年の姿だった。
「因果か……」
低く呟くユリウス。その目は鋭くも何かを迷っているようだった。
「ヴィマナの解析はどうなっている?」
「未知の技術が使われており、解析が難航しています」
研究者の報告に、ユリウスは額に手を当てた。その仕草には、ただの任務とは違う複雑な思いが滲んでいた。
「これは、神が与えた試練なのか……それとも、人類への罰か」
ユリウスの胸に渦巻くのは使命感か、それとも後悔か。彼自身にも、その答えはまだ見えなかった。