56.再開
おれはベルを送り出した後、中央ギルドに向かった。
もうすぐ始まるBランク試験を受けるためだ。
Bランク試験が近いからか、以前来た時よりも冒険者の数が多く、ピリついた雰囲気を感じる。
ギルドの受付で確認すると、メープルが事前に申し込み等を済ませてくれており、到着受付のみで済んだ。
試験は3日後から始まるらしく、それまでは、ただ待つことになりそうだ。
事前にメープルから教えてもらっていた通り、試験は3種類。
Bランクとして最低限の知識を有しているか、知力試験。
モンスターを討伐する戦闘力を有しているか、モンスター討伐試験。
護衛等を請け負うための対人の戦闘力を有しているか、対人戦闘試験。
戦闘関係の二つの試験は毎年試験内容が同じで特に心配はしていないが、知力試験に関しては、毎年内容が変更される。
昨年は薬草に関するペーパーテストが実施されたらしい。
(戦闘力には自信があるが、一番の難所は知力試験だよなぁ)
ベルと一緒に勉強したり、メープルやレクチェからもモンスターや素材に関する知識を教えてもらったが、正直自信はない。
最初に知力試験は当日の朝に内容が発表されるらしく、どんな試験形式かはわからない。
どうにかペーパー試験だけは避けたいところだ。
試験までの時間つぶしに依頼を受けようとギルドの依頼掲示板を見ていると、背後から声をかけられた。
「アルス君、久しぶりー」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはレクチェとメープルがいた。
「どうして……?」
おれはレクチェたちが王都にいる状況がのみこめず次の言葉が出てこない。
「そんなに驚かなくても……。立ち話も何だから、そっちのカフェに行こうよ」
レクチェたちに連れられ、近くにあるカフェに移動する。
飲みものを注文した後、本題に入る。
「で、どうしてここに?」
「心配で来ちゃった。アルス君の大事なBランク試験っていうのもあるけど、正直ベルの件が気になって待っていられなかったの。で、どうなったの? ベルから告白されたんでしょ?」
「うん、まぁ……ベルとも婚約したよ」
おれは照れながら答える。
自分で言うのはなんとなくむず痒い。
「よかったです。わたしたちベルちゃんの背中を押していたので、これでダメだったら……」
不安そうな表情だったメープルもおれの答えに安心したのか、少し目が潤んでいた。
「逆にメープルもレクチェもこれで良かったのか? 手紙にはOKと書いてあったが、婚約者ってそんなにぽんぽん増やしていいものじゃないだろ? てっきり怒られるとばかり……」
「うーん、多分ベル以外の子だったら怒ってたよ。これ以上ぽんぽん婚約者を増やされたら困るけど、ベルのアルス君への思いを知ってしまったからね。あの子ならいいかなって思えるぐらいにはアルス君にぞっこんだったし、上位の貴族からの婚約を断る覚悟までされたら認めざるを得なかったわ」
「申し込まれた婚約を断るのってそんなにまずいことだったのか……」
おれは驚きながら聞き返す。
「そうですね……。婚約を断ること自体はそこまで珍しいことではありません。ですが、自分より上位の貴族から、しかも子爵家の娘が、二つも上の位の侯爵家の長男からの婚約の申し込みを断ることは、かなり異例のことだと思います。貴族としての立場も絡んでくるので、バレル子爵も複雑な気持ちだったと思いますよ。娘が好きな人と結ばれてほしい気持ちと、政治的な立場の問題がありますから」
「そうか……そこまでの覚悟でベルを送り出してくれたんだな。おれもできるだけ子爵の力になってあげないとな……」
「そこまで気にしなくてもいいとは思うけど……。まぁ、バレル子爵も侯爵との関係を築くよりもアルス君との関係を優先したのかもね。今は中級ダンジョンのおかげでだいぶ経済的に豊かになっているけど、少し前までのバレル領は、お金もなくて今より人口も少なかったから、もう少しで男爵に降格されるって噂もあったから」
「そうなのか?」
「そうですよ。バレル領が豊かになって来たのは中級のダンジョンが見つかってからです。ダンジョンでとれる鉱物や冒険者のおかげで人口も増加してますし、バレル子爵もアルス君には感謝してると思いますよ」
おれがバレル領や子爵の力になれていることはうれしいことだが、それは偶然が重なって起きたことだ。
これ以上の期待をされても少し困る。
Cランクの冒険者一人にできることなんてたかが知れている。
ただ、侯爵とのつながりよりも、娘の気持ちや、おれとの関係を優先してくれたバレル子爵に嫌な気持ちはしない。
何か力になれることがあれば、バレル子爵の力になることを決意した。
少し休憩を頂いてました。
週2~3回の更新を目標にまたこれから頑張ります。




