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53.クラス分け試験

【side ベル】


 貴族学校には同世代の貴族の子供が入学する。

 1学年30名程度で、魔法の技能や剣術の腕前で3クラスに分けられる。

 魔法、剣術どちらで試験を受けてもよいということになっている。


 入学前の魔法の試験は2種類。

 魔力量の測定と魔法実践だ。


 私が門をくぐって試験の受付に向かうと周囲からはこそこそと話し声が聞こえる。


「あれが噂のバレル家の娘か……なかなか顔もいいな。俺の妾にしてやってもいいな」

「あなたの家柄じゃ難しいんじゃなくって? 侯爵家からも婚約の申し込みがあったらしいわね」

「ふんっ。あんな奴うわさだけだろ……。この世代のトップは俺様だ」


(煩わしい。先生以外誰とも婚約するつもりないのに……)


 ベルは外野の声をシャットアウトし受付を済ませた。



 集合時間に遅れる者はおらず、すぐに試験は始まった。


「では次。ベル・バレルさん。――こちらの水晶に魔力を込めてください」


 ベルは言われた通りに右手をかざし、魔力を込める。


「520!?」

 試験官は驚きのあまり、数値を声に出してしまう。

 周りにいた試験官も信じられないといった表情で魔力測定用の水晶の周りに集まってくる。



 それをみて受験者たちもざわつき始める。


「おい、あいつ500台出したってよ」

「今日の最高記録でも200台だったぞ」


 魔力量だけでは正確に強さを測ることはできないが、ベルの出した520という数値はBランク上位の魔法使いの並みの値であった。


 ベルは表情こそ平静を装っていたが、内心は喜んでいた。


 次は隣の会場に移動してからの魔法実践の試験だ。


 魔法実践とは言いつつもただの的当てである。

 的は動かないし、魔法耐性の加工のされた的に向かって自分の自信のある魔法を撃つだけ、魔法を発動する時間も無制限である。



 生徒の中には(カッター)系魔法を発動している生徒もいたが、ベルのレベルには遠くおよんでいなかった。

 魔力をじっくり練り、見栄えを意識した完成度である。

 到底モンスターや対人戦で使用できるレベルには達していなかった。



 ベルはハイブリット魔法や大魔法を披露したい気持ちをぐっとこらえ、水球(ウォーターボール)を選択した。

 アルスから自分の必殺技は軽々しく見せてはダメと言われていたからである。



「では、ベル・バレルさん。魔法実践の試験開始です」


 魔力量の測定で目立っていたベルは会場にいるほとんどの人の視線を集めていた。


 ベルは開始早々、流れるような魔力操作で魔法を放った。

水球(ウォーターボール)


 ゴキン


 魔法は的に直撃し、根元から折れてしまった。


 かなりの威力であることが証明され、試験官たちはベルの実力を高く評価していた。


「これは……すごいですね。すでに私よりも魔法の威力が上です……」

「今年の主席は彼女になりそうですな」



 生徒の半数は試験官たちと同じ評価であったが、使用した魔法が水球であったことや、的がもとから壊れていたのではないかと実力を疑う声も上がっていた。


「あいつは水球(ウォーターボール)、俺は氷刃(アイスカッター)。魔力量じゃ負けていたが、技能ならおれの方が上かもな」

 なんて言いふらす生徒もなかにはいた。


 ベルの試験が終わるころ、剣術試験の会場からも歓声が上がっていた。



 ◆◆◆◆


 アルスが学校の前でベル待っていると、そこにある男が現れた。


「アルス? アルスじゃないか」


 おれは自分の名前を呼ばれ顔をあげる。

 そこにいたのはリートであった。


「リートさんどうしてここに?」


「教え子が貴族学校の試験を受けてるからその出迎えだ。アルスも同じだろ?」


 おれはあの時のリートさんの大けがを思い出し、右腕の方を見てしまう。


「あぁ、右腕か? あれから王都の教会に行ったけど、このレベルの大けがじゃ聖女か教皇クラスじゃないと治せないって言われてしまってね。流石にそこまでの伝手はないし、このままでもいいかなって思ってるよ」


「そうだったんですね……」


「もう冒険者はしてないから、そこまで不便なこともないよ。ところでアルス、バレル子爵の娘はアルスが指導してるんだよな?」


「えぇ、そうですよ。リートさんの代わりに教えることになって……」


「あの子王都でもかなり噂になっててね。相当な魔法の使い手だって話だったけど、実際どうなんだ?」


「どうなんでしょう。他の生徒を見たことが無いので何とも言えないですね。ただ、約2年間は魔法の勉強をみっちりしてきたので、その辺の生徒に負けてはいないと思ってます」

 おれは胸を張ってそう答える。


「そうか。満足いく指導ができたならよかったな。俺の方も半年間の期間でできることは全部教えたんだが……さすがにそんなに甘くはなかったな」




「先生―。お待たせしました」

 ベルの声が遠くから聞こえる。

 手を振ってこちらに走ってくる。


「じゃあ、ベルが来たので……。また、どこかでゆっくり話したいですね」


「そうだな。会いに行くよ」


 おれとリートさんと別れ、ベルと一緒に宿に帰った。


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