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51.時間の経過

 王都から帰ってきて1年と少々の歳月が経過した。


 おれは今だにCランクのままだ。

 Bランク試験の受験資格を満たすためにコツコツ依頼をこなしている。

 バレルのギルドの依頼はあまりレベルが高くないため、時間がかかってしまっている。


 そのためおれとレクチェとメープルとの関係はいまだに婚約状態のままだ。


 バレンシア王国では15歳から結婚ができる。

 現在おれは17歳。

 レクチェとメープルはそれぞれ20、19歳と結婚してもおかしくない年齢に達している。


 Aランクに昇格し次第改めてプロポーズをするつもりだ。



 ベルの家庭教師の方も順調だ。

 冒険者のランクもDに上がり、魔法の技術や魔力量も1年前とは大違いだ。

 水魔法はB、風魔法もCまで成長しており、Bランク冒険者並みの戦闘力を身に付けている。

 もちろんハイブリット魔法も習得しており、ミノタウロスをソロで倒せるようになったため、最近は対人戦を練習している。



 ベルとの関係性も少し変わった。

 家庭教師の無い日でも家に遊びに来るようになり、行動を共にすることが多くなった。

 レクチェやメープルとこそこそと話していることもあり、何かを企んでいるようだが……。



 最近のちょっとした悩みはベルから身体的な接触が多いことだ。


 ベルは初めて会ったときから身長が一気に伸び、身体が大人の女性に近づいている。

 胸も大きくなっており、女性としての魅力が高まっている。


 貴族の間でもベルの魔法と容姿については噂になっており、バレル子爵からもベルに婚約の申し込みが多いと聞いている。


 貴族は早くから婚約するらしく、ベルにもそろそろ婚約者ができてもおかしくない。


 それなのに魔力の補給や、魔力回路の拡張をしてくれとせがんでくる。

 もう十分成長しているだろうと断ろうとすると、目に涙がたまり始めるので、断り切れない。


 子爵もおれを信頼してくれているためなのか、全然止めてくれないし、むしろ個室でさせようとしてくる。


 ベルも子爵も何を考えているのか……。




 気付けばあと少しで家庭教師も終わりだ。

 教え子の新しい門出はうれしくもあるが、悲しさも感じる。


 ベルの実力なら、間違いなく学校でもトップをとれると自信をもって送り出せるが、どうもおれ自身ベルに対して入れ込んでいるところがあるようだ。


(こっちにきてからの初めての教え子だもんな……)


 おれはベルの王都行きの護衛を頼まれており、貴族学校の入学前日までが先生としての最後の仕事となる。




 今回王都に行くのはおれ、ベル、メープルで今からその最終打ち合わせだ。



「では、予定通り明日出発ですね」


「以前話した通り、泊まる場所なんかはこちらで用意しておく。先生には万が一の時の対処をお願いする。あとはこれを……」


 バレル子爵はおれに一枚の封筒を渡してきた。


「これは?」


「その封筒はベルの家庭教師が終わったタイミングで開けてくれ。それまでは絶対に中は開けてはならんよ」


 おれは何が書かれているか気になりながらも、そのままアイテム袋に収納した。


 子爵との打ち合わせが終わった後、ベルと話をしようとするが、今日は不在らしい。

 おれはベルに会うのをあきらめ、自宅へ帰った。



 ◆◆◆◆

【girls side】

 アルスが打ち合わせをしているころ、女性陣は喫茶店で話をしていた。


「ベルはどうなの? アルス君との関係」


 うつむきながらベルは話す。

「……まだ、告白まではできてません」


「もう少しでアルス君と会えなくなるんだよ。早く伝えないと……」


「そう、ですよね。この一年だいぶアピールしたつもりだったんですが……。私ダメかもです」

 ベルはレクチェやメープルがアルスと婚約したことを知っており、自分が出遅れていることを痛感していた。


 貴族学校に入学してからは外出に制限がかかる。

 夏休み等は戻ってこれるが、アルスと過ごせる時間は今までと比べるとかなり少なくなる。

 残り限られた時間をどう過ごすか。

 この過ごし方で今後の人生が大きく左右されることをベルは理解していた。



 メープルが優しくベルの頭を撫でる。

「アルスさん言ってましたよ。最近ベルとの距離が近くて、戸惑ってるって。それはベルちゃんのことを意識してるからですよ」


「あとはアルス君、自分の生徒に手を出すのが怖いって話してたね。だから……」


 ベルはレクチェの言葉を聞いて絶望する。

「私。先生の生徒じゃない方がよかったのかなぁ」

 不安な気持ちが口からポロリと出てしまう。


 慌ててレクチェはフォローを入れる。

「ちがうちがう、ベルを落ち込ませるつもりで言ったんじゃないよ。ベルが生徒じゃなくなったら、OKもらえるかもってこと。告白するタイミングは、アルス君の家庭教師が終わって、入学式の間の時間。そこしかないよ」


「ベルちゃん、明日から王都に行くでしょ? そこでアルスさんをおとすしかないよ。わたしは邪魔しないようにお留守番しておくから」


「メープルさん一緒に来ないんですか?」


 事前の話では、アルス、メープル、ベルで行くことになっていた。


「わたしが行くと、アルス君とベルちゃんの時間が短くなってしまうでしょ。ベルちゃんには最後のチャンスをものにしてほしいなって思って……」


 メープルの言葉でベルの目から涙が零れ落ちる。



 レクチェはベルに封筒を渡した。

「これ、ベルが告白した後に必要になると思うから、渡しておくね」


「これは?」


「あたしとメープルができる最後のサポートよ。次に会うときはお嫁さん仲間よ」

 レクチェはベルに微笑む。


「レクチェさん、メープルさんいろいろとありがとうございました。おかげで少し元気が出ました。明日から頑張ってきます」


 宣言したベルの目に涙はなかった。


2章終了まであと少しです。

【レーズンサンドからのお願い】

少しでも

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「続きが気になる」

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