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48.奴隷と怪しい薬

 早朝、宿のチェックアウトを済ませ、スミスの家に向かった。

 

 集めた宝珠、瓶に詰めた血液と足りない素材代として金貨10枚ほど渡し、スミスに別れを告げた。


 全部完成するには約一年ほどかかるそうだ。


 ◆◆◆◆


 おれたちは周囲を警戒しながら王都を出た。

 今のところ誰かにつけられている感じはない。


「王都からは普通に出れたが、どこか仕掛けてくるか?」


「まだ、王都を出てすぐだから……。昨日あそこで仕掛けてこなかったことを考えると、表立ってはうごきたくないのかな」


 今回敵の襲撃があったときは、まずはおれが戦う予定だ。

 レクチェにはベルとメープルの護衛を任せている。

 もちろんベルにも自分のことを守るように言い聞かせている。



 そのままリオレッドに向かって移動をしていると、前方に10人ほどのグループが不自然にも動かず止まっている。

 後方にも二人、おれたちのスピードに合わせて一定の距離を保っている奴がいる。


 まだ何の被害も受けてないのでこちらから手を出すわけにもいかないが、おれたちを待っているのは間違いないだろう。



 道を変更し、その集団をかわそうとするが、おれたちの動きを見て移動を始める。


「間違いないな。レクチェは後方を頼むぞ。ベルとメープルは馬を下りて、おれとレクチェの間から絶対に出ないこと」

 三人とも頷き、隊列を組む。


 王都の方に戻っても良いが、もう戦闘は避けられそうにない。


 そのまま前方の集団との距離が近づいていく。


 1人を除いて全員に首輪が付けられており、奴隷のようだ。

 目はうつろで、何を考えているのかわからない。


 20mほど離れた場所まで近づき、話しかける。


「何かおれたちに用か?」


「……」

 返事はない。



 首輪の付いていない男が合図をすると奴隷たちは一斉に何かを口にし、急に苦しみはじめた。


 うぐぅ。

 ぐおぉ。


 筋肉がパンパンに膨れ上がり、腕や足の血管が浮き出る。

 関節がありえない方向に曲がっている奴もおり、やばい薬であることは間違いない。

 目は充血し、ぎょろりとおれの方を見る。



「ぐぉぉあ」

 前方の奴隷がおれに襲い掛かってくる。

 かなりのスピードで距離を詰めてくる。


 こちらも、準備していた魔法で迎え撃つ。


氷檻(アイスプリズン)


 おれは氷でできた檻で奴らを囲み、こちら側に来れないようにする。


 奴らは氷檻(アイスプリズン)に対して体当たりや素手で殴り、壊そうとする。


 ドン、ドン


 痛みを感じていないのか、自分たちの負傷はかえりみず、氷に向かって攻撃を繰り返す。

 大量の出血や骨折をしているのに狂気に満ちた表情で、暴れまわる。



「レクチェ、後ろは?」


「動きはないよ。こっちを観察してるかんじかなぁ」


「了解」




 氷檻(アイスプリズン)が壊れたタイミングで、水波浪(ウォーターウェイブ)を放ち、氷束縛(アイスバインド)で奴隷たち全員を捕えた。


「んがぐお」


 下半身を氷で固められ身動きできないが、無理やり力で脱出しようとする。


 ピシっ、ピシっと氷にひびが入っていく。


「これでもまだ動くのか……」


 おれはさらに氷束縛(アイスバインド)に魔力を込め、奴隷の首から下をすべて凍らせた。




「アルス君お疲れー」


「後ろの二人は?」


「逃げられちゃったみたい。何も仕掛けてくる感じじゃなかったし、ただ見てるだけだったよ。アルス君の方は全員捕まえた?」


 よくみると、最初に指示をだしていた男がいない。


「こっちも一人逃げられたみたいだ。こいつらは何なんだ? 何かを飲んだと思ったら急に身体が変化して……」


「メープルは知ってる?」


「そんな薬知らないです。わたしも見てましたけど、あれは何だったんでしょうね」


「そうか。薬に関しては後で調べるとして、この奴隷たちどうしようか」


 目の前で凍り付いている奴隷たちの後処理を相談する。


「もう、殺してあげた方が彼らのためだとは思うけど……」

 レクチェはちらっとおれの方を向く。


「もとには戻してあげれないか?」


「今すぐには厳しいですね。見たところ犯罪奴隷のようですし、治せたとしても、彼らに戻る場所は……」

 いつもは優しいメープルも厳しい意見だ。


「先生は優しすぎます。私たち命を狙われたんです。普通はもう少し怒りますよ」

 ベルはおれの平和ボケした対応に呆れている。


「まぁ、その優しさがアルス君の良さでもあるんだけどね。あとはあたしが処理してから、追いつくから先に進んでおいて」


 レクチェがおれに代わって処理をしようとする。

 その発言に一瞬ほっとしてしまう。


(違うだろ。レクチェに殺人をさせるわけにはいかない)


「レクチェも先に行っておいてくれ、処理はおれがする。気を使わせてごめん。ベルには見せたくないから早く先に……」




 レクチェたちが出発し少し経った後、すべてを燃やし尽くした。


(せめて、これ以上痛みを感じないように……)


 おれは奴隷たちに手を合わせ、レクチェたちを追いかけた。



 ◆◆◆◆

【side ???】

「あいつやばかったなー。こんな安い依頼料でやる仕事じゃないぞ」


「俺たちの場所も完全に把握されてたし、魔法もAランク並み。せっかく用意した奴隷たちもすぐに倒されちゃったね」


「あとは報告すれば終わり。もうこの件からは手を引こうや」


「さすがにプヤットの奴も追加報酬してくれるだろ」


「それもそうだ。追加報酬のあとに情報を渡すことにしよう」

ここまで読んでくださってありがとうございます。

節目の10万字を超えました。


あと少し2章が続く予定です。

良ければ続きも楽しんでもらえたらと思います。

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