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46.王都上級ダンジョン

 バレル領を出発して7日が経過した。

 帰りのことを考えると王都にいられるのもあと4日だ。


 おれたちは2手に分かれて行動をしてる。

 おれ、レクチェ、ベルはダンジョン探索、メープルには魔法の本を探してもらっている。



 王都には超級、上級、中級の三種類のダンジョンがある。

 超級にチャレンジしてみたいとこだが、Aランク以上じゃないと入れないそうだ。

 今回はベルとレクチェもいるので無理はできないが、上級に入ることになった。


 王都の上級ダンジョンは70階層まである。

 最下層付近はAランクパーティでもミス1つで命を落としかねない難易度だ。


 今回おれたちは最下層を目標にしていない。

 Bランク、Cランク、Eランクの3人では実力不足もいいとこだ。


 ただいくら上級といえども、浅い階層では低ランクのモンスターが出現する。

 奥に行くにつれ、モンスターが強くなるのはどこのダンジョンでも共通事項だ。


 ダンジョン探索目的は2つ。

 小さめの宝珠と金策だ。


 上級ダンジョンの中層ぐらいでモンスターをせん滅し、宝珠を集める。

 と同時にモンスターの素材の依頼も受けており、同時に金策もこなす作戦だ。



 ダンジョンの内部はバレルのダンジョンとさほど違いはなかった。


 上層はベルの魔法の練習のため、彼女に任せおれとレクチェはアシストに専念する。

 電波探知で敵の位置を把握し二人に伝える。

 数が多ければ魔法で先制攻撃をし、敵の数を減らす。


 王都のダンジョンはマップが公開されているのとレクチェが潜ったことがあるらしく、最短距離で降りていく。


 王都の上級ダンジョンの特徴は動物系のモンスターが多く出現する。

 上層階ではボアやアルミラージ、エレキゴートなど比較的戦いやすいモンスターが多い。


 ベルはまだモンスターに対する恐怖が少し見られたが、おれとレクチェがいるという安心感と持ち前の精神力でモンスターを討伐していく。



「次で20階層だね。ベルちゃん大丈夫?」


「まだ魔力は大丈夫です」


 ベルはまだまだ元気と口では言っているものの、少し疲労が見えてきている。


 まだ19階層とはいえど、かなりの回数の戦闘をこなしている。

 直接的なダメージは無いとはいえ、魔法の発動でも体力や集中力をかなり使っている。


「レクチェ、次の階層のボスは何が出現するんだ?」


「たぶんウルフだったはず。動きが早いんだよねー」


(今のベルには厳しそうな相手だな。素早く動く敵に対応できるか……)



 小休憩を挟んで次の階層に下りるタイミングでベルが話しかけてきた。


「先生、次のボスまでは私一人で戦いたいです」


 おれは小休憩のあいだ悩んでいた。

 ボス相手にベルがどこまで戦えるのか、見てみたい。

 ただ今の状態のベル一人に任せても大丈夫なのかそこが心配であった。


「ベルちゃんもやる気だし、ここのボスは任せてみたら? 厳しい戦闘経験から得られるものは多いしね。どうにかしてもアルス君なら助けられるでしょ?」


 レクチェの一言が後押しになり、ウルフはベル一人で戦うことになった。



 階段を下りたフロアの中央にはウルフがおれたちを待ち構えていた。


 おれとレクチェは壁際により、戦闘の邪魔をしないようにしつつ、いつでも助けに入れるように準備をする。


 先制して攻撃をしたのはベルだ。

 ウルフに狙いを定め、魔法を放つ。

水球(ウォーターボール)


 しかしウルフの動きは素早く、距離が離れているためなかなか当たらない。


 だからと言って近距離まで引き付けてしまうと、今度はウルフの鋭い爪や牙の餌食となってしまう。

 ベルもそれを理解しているのか、近距離に接近されると水弾(ウォーターバレット)でけん制し、ウルフとの距離を保っている。


 お互い決定打となる攻撃ができずに時間だけがゆっくりと過ぎていく。



「――来る」


 なかなか自分の間合いに接近させてもらえないことに痺れを切らしたウルフは急加速し、ベルに接近する。

 左右に身体を揺らしながら、ベルの正面に突っ込んでいく。


 横にいたレクチェも不穏な空気を感じ取り、助けに入ろうと身体に力が入る。

 おれはレクチェの肩に手を置いた。


「アルス君?」

 後ろを振り返るレクチェ。


「ベルなら大丈夫。防げるよ」

 おれにはベルの魔力が一気に高まるのを感じていたからだ。



 ベルはウルフが自分に飛び掛かろうと地面を蹴った瞬間、新たな魔法を発動する。


風壁(ウインドウォール)


 自分の正面に厚めの空気の壁を発生させる。

 空中にいたウルフは突然出現した見えない壁を避けきれず、ぶつかる。


 風壁自体にはそこまでの防御力は無いが、ウルフ程度の体重のモンスターなら十分に耐えられる。

 空中で踏ん張りがきかない状態ならなおさらだ。


 さらにベルの杖を持っていない方の手には水球(ウォーターボール)の準備が完了しており、至近距離で動きを止められてしまったウルフに避けるすべはなかった。


 ウルフとの戦闘はベルの勝利で終わった。




「ベルよかったぞ。風壁(ウインドウォール)を使えるようになっていたのか?」


  ベルは笑顔で近づいてくる。

「はい! 先生の氷盾(アイスシールド)を見ることが多かったので、盾や壁のイメージができてました。今回は盾だと小さくて、怖かったので風壁(ウインドウォール)を選択しました」


「いい作戦だった。素早いモンスターにも冷静に対処できてる。だいぶ成長したね」

 思わずベルの頭を撫でてしまう。


 頭から手をはなすと、名残惜しそうにこっちを見つめていたが、ここでのんびり立ち止まってるわけにもいかない。


「ベル、ドロップがあるかもよ。見に行こう」



 おれとレクチェでウルフの処理をすませ、身体ごとアイテム袋に入れる。


「ありました。宝珠です」

 ベルの手には小さな宝珠が握られていた。


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