45.鍛冶師
ギルドからの帰り道、滞在日も残り少なくなり王都で何をするかの話題となった。
「せっかく王都に来たんだしアルス君は何かしたいことないの?」
「そうだな……せっかくだから、この魔白金で武器を作ってもらいたいな。あとは魔法に関する本も買っておきたいし、王都のダンジョンにも潜ってみたいな」
「だいぶ盛りだくさんね。魔白金を扱える職人か……心当たりあるけど行ってみる?」
おれたちは宿で留守番をしていたベルを迎えに行き、レクチェの案内で商業地から少し離れた地区に足を運んだ。
ギルドの周辺とは違い、人通りもそこまで多くはない。
何軒かの家から煙が立ち上り、カンッ、カンッ、カンッとリズムよく金属を叩く音が聞こえる。
どうやら鍛冶職人たちが集まっている地区のようだ。
その中の1軒にレクチェが近づき、珍しく緊張した面持ちでドアを開けた。
「おじさんいるー? スミスおじさんー、レクチェだけど……」
「んー? レクチェ? ……お前あのレクチェか?」
スミスと呼ばれる男性が家の奥から出てくる。
身長は低く、寸胴の体型をしている。
口元には白いひげを生やし、年齢を感じさせる。
服の下から見える腕は丸太のように太く、火傷の跡がいかにも鍛冶師という雰囲気を放っている。
(ドワーフだ)
「どのレクチェかはわかんないけど、数年前までスミスおじさんに短剣を鍛えてもらってたレクチェだよ」
少し照れながら、スミスに顔を見せる。
「お前生きてたのか……。3年前に冒険者を辞めるって言いに来た以来じゃろう。あの時は心配したぞ。ボロボロの格好で、死んだような目でここにきて……。それからまったく全然姿を見せないからもう死んじまったのかと……」
スミスは目を大きく開き、信じられないといった表情を浮かべる。
「あの時はほんとにきつくて……心配かけてごめん。今はギルドの受付嬢やってるんだ」
「後ろのはお前の連れか?」
「うん。今の仲間だよ。とっても良くしてもらてる」
「そうか。お茶ぐらいしか出せないが、上がっていけ」
レクチェと会えたのがうれしかったのだろう。
スミスは頬をほころばせながらおれたちを家に上げてくれた。
家の中に入ると作業場が広がっており、炉の熱気がこもっていた。
炉のそばには作っている途中の剣や、叩いていたであろうハンマーが置いてあった。
出されたお茶を飲みながら30分ほど待っているとレクチェとスミスの話も落ち着いたようだ。
「アルス君アレを見せてもらっていい?」
おれはアイテム袋の中から魔白金を取り出しスミスに渡した。
スミスは魔白金を軽くたたいてみたり、光にかざしたり……。
「この金属は何じゃ? 魔銀に似ておるが……」
首をかしげながら金属の正体を尋ねる。
「それはねー。魔白金だよ」
「魔白金!? そんなもんどこで手に入れた?」
「たまたまダンジョンで手に入っちゃった。これスミスおじさんなら加工できる?」
「もちろんじゃ。是非わしに任せてくれ。時間はかなりかかると思うが、必ず良い武器にしてやろう。お代も材料費だけでいい。どんな武器にする? 長剣か? 槍か? 魔剣もいいのー」
手には魔白金を持ったままで、手離す気が全く無いようだ。
子供のように目を輝かせながら、どんな武器を作ろうかすでに考え始めている。
「アルス君どうするの?」
「その魔白金で杖代わりにもなる短剣を頼みたいが……できるか?」
「杖代わりか……。魔白金なら、魔力をよく通すからできるかもしれんな。あとは小さめの宝珠があればいいと思うが……」
おれは持っていたミノタウロスの宝珠2つをスミスに渡した。
「これは大きすぎじゃ、短剣の組み込むには大きすぎる。小さいのは無いのか?」
おれが無いと伝えると、スミスは材料の話を始めた。
「せっかくの魔白金武器じゃ。素材にもこだわりたい。お前たちで小さめの宝珠を探してきてくれんか?上級ダンジョンに入れば小さめの宝珠なら簡単に見つかるじゃろ。せっかくだからこの大きい宝珠は杖にしてはどうかの? 強力な魔法が撃てるぞ」
「他に必要な素材は?」
「あとはそうじゃなー、武器使用者の血液が欲しいの。魔力の流れを制御するために魔力回路を入れるがその時につかうんじゃ」
「分かった。短剣はおれとレクチェ、杖はおれとベル用で作ってほしい。血液は宝珠の時に一緒に持ってくるよ」
そう伝えるとスミスは部屋の奥に行き、武器の構想を練り始めてしまった。
「こうなると、スミスおじさんは何も聞こえなくなっちゃうんだー。よほど魔白金を加工できることがうれしいんだろうね。でもアルス君いいの? 貴重な魔白金であたしの短剣まで作ってもらって」
「あの私の杖も……。先生いいんですか?」
「もちろん、魔白金はたくさんあるからね。もちろんメープルには今度違うものを用意するよ」
レクチェやベルはプレゼントをもらっているのに自分だけもらえないのは悲しいだろう。
おれはメープルに何をあげるか頭を悩ませるのであった。




