40.譲れない戦い①
早朝にセンテッドを出発し、夕方にはリオレッドの街に到着した。
センテッドとリオレッドを結ぶ道は舗装されており、昨日よりも移動はだいぶ楽だった。
門番にバレル子爵の娘と伝えると、事前に連絡がいっていたようで、そのままリオレッド伯爵邸に案内された。
今回おれやメープル、レクチェはベルの護衛の扱いを受けており、別室で話が終わるのを待っている。
30分後ぐらい待つとベルとリオレッド伯爵の話が終わったようで、戻って来た。
「先生、リオレッド伯爵が宿の手配までしてくださったみたいで、これから案内してもらえるそうです」
おれたちは伯爵の使いに案内され、予約されている宿に向かった。
「すごいな。こんなところに泊まれるとは……」
「わたしたちも貴族が泊まるホテルに……」
リオレッド伯爵が手配してくれた宿は、街で一番の高級宿。
各部屋に風呂も付いており、部屋の広さも今までとは比べ物にならない。
受付で鍵が二つ渡され、ベル用と護衛用ということだった。
「二部屋か……おれは別の宿を探すから、明日の朝迎えにーー」
「「それはダメです」」
「それはダメだよ」
おれの提案は即座に否定された。
「今日の先生は私の護衛なので、私と一緒の部屋でいいとおもいませんか?」
ベルは恥ずかしそうに提案をする。
「アルス君は護衛なんだからあたしたちと一緒の部屋でいいよ。普段も一緒に生活してるんだから」
レクチェも負けじと言い返す。
「え?普段も一緒に……先生? 結婚してないって……先生嘘ついてたんですか?」
「してないよ。レクチェ。ムキになりすぎだ。変な誤解が生まれたじゃないか」
「どういうことですか?」
少し涙目になりながらベルがおれに聞いてくる。
不穏な空気を察したメープルが間を取り持つ。
「ベルさん説明しますから、いったん部屋に入りましょう。ここだと目立ちすぎますので……」
高級宿の受付前で騒ぐ客はおれたちぐらいで悪目立ちしている。
「ならアルス君、一旦女性陣とアルス君で部屋分けでいい? どうするか決まったら部屋にいくよ」
おれはレクチェに言われた通り、いったん別の部屋で待つことにした。
◆◆◆◆
【girls side】
部屋に入るとレクチェの言葉が気になってしかたないベルが口を開いた。
「で、どういうことですの? 先生と一緒に住んでるって」
「ベルさん落ち着いてください。まずわたしたちの自己紹介からしますね。わたしはメープルです。アルスさんの専属のギルド職員です。主に依頼のサポートや困りごとのお手伝いをさせていただいています」
メープルが話し終わると、続いてレクチェが自己紹介を始める。
「あたしはレクチェ。ギルドの受付嬢をしているわ。アルス君には返しきれないほどの恩があって、アルス君のためなら何でもするわ」
「私はベルよ。今は先生に魔法を教わっているわ。で、二人は先生とどんな関係ですの?」
ベルの質問にメープルとレクチェは顔を見合わせる。
「あたしたちってアルス君とどんな関係っていえばいいんだろうね? 一緒に住んでだいぶたつけど……」
「まだ、恋人にはなれてませんし……」
「メープルは専属なんだから、アルス君が冒険者を続けていく限りは一生のお付き合いじゃん。アタシは……」
「では二人とも先生の恋人ではないんですね」
ベルは明らかにほっとした表情を浮かべる。
「そうだけど、あたしはアルス君が好き。いずれは結婚してアルス君に恩を返していきたいって思ってるよ」
「わたしも……一生アルスさんをサポートができたらって思ってます」
二人の思いを聞き、ベルも自分の思いを口にし始めた。
「私は……私も先生が好きです。先生と結婚してもっと私を見てほしい、一緒に出掛けたい……もうお父様にお願いして婚約も解消してもらったわ」
メープルとレクチェは10歳の女の子が一生懸命に話す姿を温かく見守る。
「そっかぁ。やっぱりか。アルス君かっこいいし優しいもんね」
「わたしたち似たもの同士ですね」
「でも、結婚できるのは1人だけ……私、それは譲れない……」
ベルは自分の決意を二人に伝えた。
「あたしもアルス君を独り占め出来たらって思ったこともあるけど、メープルと二人で支えていけたらなーとも思ってるよ。メープルにも幸せになってほしいしね」
「でもそしたらあなたは先生と結婚できなくーー」
「別にアルス君との結婚は一人だけしかできないってことはないと思うし……」
「どういうこと? もしかして先生は貴族なの?」
「アルス君は貴族じゃないけど……Aランク冒険者にだったら必ずなるから」
メープルが補足する。
「ベルさんもご存じだと思いますがAランク冒険者になると、男爵位と同じ特権が与えられます。そうすれば3人まで妻を持つことが許されるようになります」
ベルはメープルの説明を聞き、レクチェの言っている意味を理解した。
「ベルさんはアルス君を独り占めしたい?」
レクチェが尋ねる。
「……少し考えさせて」
ベルはそう言って、寝室に入っていった。
【girls side】終わり切れなかったので次に続きます。
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