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36.ベルの気持ち

「くっ……降参だ」


 決着がつくと、戦いを見守っていたベルがとんできた。

「先生っ。よかった、かっこよかったです。ここもそこも火傷が……早く治療しないと」


 ベルは安心と心配が入り混じり、軽くパニックになっている。


「ベル、安心して。このぐらいなら、ポーションで治るから」


「先生が無事でよかったです。私のせいで先生に迷惑をかけて……」


「もういいから。ベルはおれの名誉を守ってくれた。その代わりにおれがベルを守った。お互い様だ」


 おれとベルが話をしていると、ラッシュを拘束していた氷が溶け、帰ろうとしている。


「ラッシュ、約束だ。今後ベルには一切かかわるな」


「……」


 ラッシュは大銀貨をギルド職員に投げつけ、静かにギルドをあとにした。




「さすがおれたちのアルスだ」

「バレルの冒険者をなめすぎなんだよ」

「王都からきて我が物顔でダンジョンを荒らしやがっていい気味だ」


 決闘の後ギルドは大盛り上がりを見せていた。

 最近アッシュたちに困っていた人も多かったようだ。


 おれがアッシュを倒すことでバレルの冒険者として一矢報いた、そんな感じでとらえている者も多かった。




 ギルドを出て子爵邸に着くまで、ベルは無言だった。

 おれの手をぎゅっと握り、ただ一緒に歩く。


 今回の件はすでにバレル子爵に連絡がいっている。

 このあとおれからもベルを危険に晒したことを謝罪しなくてはいけない。


 子爵邸の入口では、バレル子爵と妻のオリヴィエさんが待っていた。

 二人はベルを見つけると急いで駆け寄ってきた。


「ベル、良かった無事で……」

 オリヴィエはベルを抱きしめ涙をこぼす。




「バレル子爵、ベルさんを危険に晒してしまってすみません。私の失態です。本当に申し訳ありません」

 おれは子爵と向き合い頭を下げる。


「お父様、違うの。私が相手の人の挑発に乗ってしまって……先生に助けてもらっただけ。だから先生は悪くないの……」

 横からベルがやってきておれをかばう。



「……今回の件はモラードの使いから簡単に聞いている。アルス先生は娘を守ってくれた。感謝する、ありがとう。少し話を聞きたい、部屋に上がってくれ」

 子爵はどうもこの件は許してくれたみたいだ。



 おれは客間に通され、今回の決闘の件を話した。


「辺境伯の息子のラッシュ……チャネー辺境伯の三男だな。冒険者になっているとは聞いていたが……」


「大丈夫ですか? バレル子爵に迷惑を……」


「チャネー家とは元々仲が良くなくってね。領地が近いから何度か揉めたこともあるんだよ。今回は決闘で決着をつけてるから大丈夫だとは思うけど……また先生に力を貸してもらうかもしれないな」


「その時は必ず力になります」

 おれは子爵と約束をし、自宅に帰った。



 ◆◆◆◆

【side ベル】

「お父様、心配かけてすみませんでした。相手に乗せられて……自分の未熟さを理解しました」


「分かればいい。今回はみんな無事で本当に良かった。ベルも疲れているだろうし、早く寝なさい」


 ベルはその場を動こうとしない。

「……お父様、1つだけお願いがあります」


「どうしたんだ、改まって。言ってごらん」


「私の婚約の話をなかったことにしていただけないでしょうか」


「どうして? ベルもそこそこ乗り気じゃなかったかい?」


「お相手が伯爵家でしたので、バレル家にとっても私にとっても良いものだと思ってます」


「ならどうして?」


「どうしても、アルス先生のことが頭から離れないのです。私のことを命がけで守ってくれた、貴族としてのベルじゃなく、私個人を見てくれる。アルス先生はまだ結婚していません。少しでもチャンスがあるなら、諦めたくない。アルス先生を愛してしまいました」


「……そうだろうと思ったよ。帰って来た時のベルの態度。顔を真っ赤にして、先生に見られないように下を向いている姿。私の娘だ。そのぐらいわかる」


「本当はバレル家のための婚約をすべきなのも分かってます。バレル家のためなら婚約以外なら何でもします。でも婚約だけは……チャンスを頂けないでしょうか?」


「……わかった。一度決めたのなら、どんな手を使ってでもアルス先生を落とすんだぞ」


「お父様……ありがとう」



 ◆◆◆◆


「ただいま」

 おれが子爵邸から帰るとレクチェが出迎えてくれた。


「おかえりアルス君。また決闘したんだって?」


「今回はうかつだったよ。あんな風に搦め手を使われて、不利な条件を結ばされるなんて……」


「ごめんね。あたし席外してたから……でもさすがだね。Bランクの冒険者を倒すなんて」


「そんなことないよ、レクチェも倒せるだろ?」


「えへへ。メープルが夕食作ってくれてるから、食べながら話を聞かせてよ」




 食事をとりながら今日の話をすることなった。


「アルスさん、お疲れさまでした。けがは無いですか?」


「火傷したけど、ポーションで治したから、ほら」

 火蛇にかみつかれた右腕を見せる。


 メープルは腕を取り、じっくりと見つめる。

「少し痕が残ってます。あとで治療しますから」


「ありがと、風呂に入った後お願いするよ」



「あたし決闘の話聞きたいんだけど、アルス君話してよー」


「もう聞いたんじゃないのか?」


「あたしもメープルも大体しか聞いてないよ」


「わたしも聞きたいです」


 おれは決闘になってしまった流れを話す。


「ということはベルちゃんをかけて決闘をしたってこと?」


「ベルを賭けたというか……勝ってもおれは何ももらえないけどな。向こうにベルを渡さないってだけだから」

 おれは苦笑いしながら答える。


「メープルどう思う?」


「この間はわたしも似たような立場に立ってましたけど、心惹かれちゃいますよね。自分のために危険を冒して戦ってくれるんです。女性からしたら憧れのシチュエーションの1つですから……。もしかしたらベルさんも……」


「何の話だ?」


「アルス君のファンが増えちゃったかもって話。あたしたちもうかうかしてられないね」


「わたしもがんばります」


 レクチェとメープルは何故か意気込んで夕食を食べていた。


ヒロインレースにベル参戦決定です。


【レーズンサンドからのお願い】

少しでも

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「続きが気になる」

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