32.ベルの冒険者登録
翌日、家庭教師に行くと上機嫌のベルに迎えられた。
「先生ご報告があります。朝教会でステータスの更新をしてきたんですが、水と風のスキルがDに上がってました!」
おれは鑑定でステータスが上がったことは分かっていたが、ベルの喜びを見るとこっちも嬉しくなる。
「ベル頑張ってたもんな。毎日休まずに努力しているおかげだよ」
ベルはえへへと笑みを浮かべる。
魔法は楽しいが単調な修業も多い。
反復練習や地味な魔力操作、練習を継続する力が重要になる。
「これからも一緒に頑張っていこうな。おれもベルに負けないように魔法を勉強していかないとな」
「はい!もっと頑張って、先生に追いつきますから」
「練習を始める前におれからもベルに報告があるんだった。昨日バレル子爵に話して、ベルが冒険者登録をする許可をもらった。今教えている水防膜を習得出来たらベルも冒険者としてダンジョンデビューだ」
「やった!いよいよ、実戦ですね。先生早く練習を始めましょう」
ベルはおれの手を引き、練習場所に向かう。
「わかったから落ち着いて。水防膜は心を静めて魔法を自分の周りに維持するのがコツだよ」
おれがそう伝えても、今日のベルはランクアップとダンジョンデビューの喜びで興奮冷めやらぬ様子であった。
◆◆◆◆
「じゃあテストをするぞ。今日のテストは2つ。水球で的を倒すことと、水防膜でおれの水弾を防ぐことだ」
ベルは慣れた手つきで水球を放ち的を倒す。
威力もスピードも十分合格点だ。
「よし、合格。じゃあ次は水防膜の方だ。準備ができたら教えてくれ」
少し待っていると、ベルは水防膜を発動し、軽く手を挙げた。
「いくぞ、水弾」
おれはいつもより威力を抑えた水弾を放った。
バシャッ
おれの水弾とベルの水防膜が衝突し、水弾がはじける。
ベルの水防膜はしっかり維持ができている。
(もう少し強くしても大丈夫かな?)
「次はもう少し強くいくぞ」
おれは再度水弾を放つ。
今度は風魔法でスピードも上げる。
バッシャーン
今度は少し衝撃が伝わったのか、ベルは目をぎゅっと閉じている。
「よし。水防膜は維持できているな。合格だ。けがはないか?」
「ちょっと想像より威力が強くてびっくりしちゃっただけです」
「わるい、わるい。ベルの水防膜がしっかりできてたから、どこまで耐えれるか気になってね」
「意地悪しないで下さい。ちょっと怖かったですよー。でもこれで、行けるんですね」
「そうだな、来週からダンジョンに行ってみようか」
「やったー!」
「その前に冒険者登録だな。このあと時間があるならギルドに行ってみないか?」
「もちろん行きます。一応一声かけてきますね。少し待っててください」
ベルは執事たちにギルドに行くことを伝えに行くようだ。
少し待っているとベルが戻って来た。
「先生おまたせしました。では行きましょう」
おれたちは歩いてギルドに向かった。
レクチェとメープルには今日ギルドに行くと伝えてある。
レクチェが登録をしてくれる予定だ。
「ここが冒険者ギルド。中では依頼を受けたり、解体をお願いしたりいろんなことができる。何か困ったら受付嬢に言ったら助けにのってくれるよ。って説明しても1人でここに来ることはあんまりないよな」
「そうですね。まだ1人での外出はお父様からダメと言われているので当面は先生と一緒の時だけですね」
中に入ると、冒険者たちのざわざわとした騒がしい雰囲気が珍しいのか、ベルはあたりをきょろきょろ見回している。
「ベル、あそこで冒険者登録をしておいで」
おれはレクチェの方に行くように促す。
それに気づいたレクチェも手を振って迎えてくれた。
「冒険者登録ですね。ステータスプレートをお願いします」
レクチェに促されベルはステータスプレートを提示する。
少し待っていると、登録が完了した。
「これが冒険者のギルドカードになります。これがあればギルドの施設の利用やダンジョンに入ることもできます。最初のランクはEで依頼を成功させていくにつれランクについては上がっていきます。他には……。何か質問はありますか?」
真面目に仕事をしているレクチェを見るのはひさしぶりで、新鮮な感じだ。
「大丈夫よ。ありがとう」
ベルも少しそっけない態度で、外用の顔になっている。
初めて会ったときのようで少し懐かしい。
おれは感謝の意を込めてレクチェにアイコンタクトをし、ギルドを後にした。
「どうだった? 冒険者登録を終えた感想は?」
「うーん。少しだけわくわくしてきたって感じです。でもいずれは冒険者のランクも上げたいなって思いました。ちょっと気になったんですが先生はあの受付の人と知り合いですか?」
ベルの質問に思わずドキッとする。
「あぁ。ギルドでよく世話になってるよ」
「そうなんですね。仲が良さそうだったので……」
「そうか?特に深い仲ではないけど……」
「ホントですか? それならいいんですけど……。あの人アルスさんに向けた笑顔と他の人に向ける笑顔が全然違う気がして……」
「たまたまだよ。ほら家に送るよ。遅くなったらみんな心配するだろ」
おれはなんとか誤魔化しながら、ベルを家に送った。




