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31.報告

「あぁ、身体中が痛てぇ」


 ダンジョンから帰った翌日昼前までベッドで眠っていた。

 午後からはベルの家庭教師だ。

 昨晩のことを思い出しながら朝食兼昼食をとる。



 昨晩はダンジョンから帰ると深夜にもかかわらず、メープル、レクチェ、二人とも起きていて迎え入れてくれた。

 帰りがだいぶ遅かったので何かあったのでは?と心配してくれていた。


 おれは雷迅速を使った影響か、全身の筋肉を痛めてしまっていた。

 メープルに診てもらい回復魔法をかけてもらったおかげで今朝は筋肉通程度で済んでいる。


 あまりの負傷具合からメープルからは「1人の時はここまで追い込んじゃいけません」と叱られてしまった。

(言われて当然だな。1人の時にケガしてモンスターに襲われたら簡単に殺されてしまう)



 レクチェからは雷魔法についての質問攻めにあった。

 おれが簡単に修業の成果の話をすると、レクチェはその中でも雷迅速(ライトニングステップ)に強い興味を示した。

 雷迅速は魔力の多くないレクチェにはぴったりの魔法だ。

 そして短剣という小回りの利く武器とも相性がいい。


 レクチェはすぐにでも教えてほしそうだったが、おれのダメージを見て、後日教えることになった。



 ◆◆◆◆



「先生、見せたいものがあります」


 バレル子爵の家に着くと、自信満々のベルに庭に連れていかれた。


「見ててくださいね。――水球(ウォーターボール)


 放たれた魔法は的の中心に当たる。

 威力はこないだとあまり変わらないが、明確に一点だけ違う点があった。


「――スピードか」


「そうです!休みの間に思いついたのを全部試して……できてますか?」


「できていたよ。驚いた、こんなに早くできるようになるなんて……」


 以前おれがお手本で示したのと同じように、ベルの放った水球は風魔法で覆われ速度を上げていた。


「えへへ。水球と風球を撃つと風球のほうが速かったから……風魔法と合わせたらいいかなって思って、試したら成功しました!」


 庭に置いてあった的や木はところどころ折れており、休みの日も相当練習した様子だ。


 ハイブリット魔法の方は、水と風の魔力の混合がうまくできておらず、まだまだ時間がかかりそうだ。


 ハイブリット魔法と同時にDランクでも使えそうな水防膜(ウォーターフィルム)の指導も始めた。

 今までの攻撃魔法とは違い、水の魔力を身体の周囲にとどめなくてはならない。


 まだ教えたばかりなので魔力が漏れたり、霧散したりと苦戦しているようだ。


(ベルのことだ、防御魔法も1~2週間で習得できるだろう)


 今日の家庭教師も順調に終わった。



 ◆◆◆◆



 今日はベルのことでバレル子爵にも用事があったので事前に時間を作ってもらえるようにお願いしていた。


 通された部屋ではすでに子爵が待っていた。


「遅くなってすみません。時間を作っていただきありがとうございます」


「全然かまわんよ。ベルのことで何かあるんだろう? また何か問題が起こったのか?」


「いぇ、今回は問題ではないのですが……実はベルさんに魔法での実戦経験を積ませたいと思いまして……冒険者登録の許可をお願いできないかと……」


 子爵は眉をひそめ、おれに質問を投げかけてきた。

「ベルはまだ魔法の勉強を始めて1カ月だろう? まだ、弾系(バレット)魔法を習得できたぐらいだろうから、ベルには少し早くないか? ベルは魔力も少ないんだろう?」


「えぇ。私も最初はこんなに早く実践に行くとは考えてませんでした。ただ、ベルさんの魔法スキルはおそらくDに上がっていると思います。教えたばかりの水球(ウォーターボール)もすぐにできるようになってますし……街の冒険者よりも強くなっているかと……。魔力の方ももう魔法を実践で使えるぐらいには増えているようです」


 おれはベルの現段階での成長状況、魔法に対する理解が速いことを報告した。


 報告を聞いた子爵は平静を装っていたが、口角が上がっており、かなり嬉しそうだ。


「最近よく庭で魔法を練習していると思っていたが、そんなに上達しているとは……。スキルの方は明日にでも教会で測定してもらうことにしよう。こんなに早くスキルが上がるなんて……君に頼んで正解だったな。冒険者の方は登録をしていいが、ダンジョンに潜る際は必ずアルス先生と同伴でたのむぞ。娘が傷つくところなんて見たくないからな」


「もちろんです。念のためベルさんが防御魔法を完璧にできるようになってから潜るようにします」

 と約束をし、子爵邸をあとにした。


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