3.神託
次の日、街の教会で神託を受けることになった。
神託には教会の代表者、バレル子爵の代理人の立ち合いのもと行われる。
固有スキルやレアな魔法保持者をその場でスカウトするためらしい。
指定された時間ちょうどに教会につくと、儀式の準備が整っていた。
「あなたがアルスさんですね。早速ですが女神信託の儀を行いますよ。そこの魔法陣の中央に立って、目を閉じてください」
子爵の代理人もいるため司祭はせかすように言った。
魔法陣の上に立つと、司祭は魔法陣を起動した。
魔法陣から光が発生し、やがて端に置かれていた小さな金属プレートに吸収されていった。
「儀式は成功しました。ではステータスを……」
ステータス
名前 アルス
スキル
教育C
魔法(水D、風D、氷D)
司祭がプレートを拾い上げ、代理人と一緒にチェックを始めた。
二人とも驚きの表情を浮かべ、近づいてきた。
「おぉぉ。おい、お前。かなりめぐまれたスキルだったぞ。魔法が3属性も使える。トリプルはかなり希少だぞ……この街には長く滞在するのか?」
「ありがとうございます。女神様に感謝します。しばらくは街に滞在する予定です」
「そうか……わかった」
代理人は何か言いたげな様子だったが、おれはそのまま教会をあとにした。
「ふぅぅ。秘匿でうまく隠せたな。魔法スキルもステータスプレートに載せとかないと使ったときに騒ぎになりそうだから……多少目立つ分は仕方ないな」
儀式を終えたおれはそのまま冒険者ギルドに行くことにした。
用事があるのは解体所だ。
ギルドにはモンスターの解体所があり、手数料を払うと解体してくれる。
その場で買い取り、部位の1部を持ち帰ることもできると昨日キューブに聞いた。
「ここが冒険者ギルドか―」
入口付近できょろきょろしていると、声をかけられた。
「はじめての方ですか? こちらへどうぞ」
優しい雰囲気の受付嬢が声をかけてくれた。
長い髪の毛の間からぴょこっと狐の耳が生えている。
(獣人だ……あの耳触ってみたいなぁ)
うれしい気分になりながら受付嬢に尋ねる。
「解体をお願いしたい。どこに持っていけばいい?」
「解体でしたら、裏手の解体所でギルドカードとモンスターを出してもらえたら」
「そうか。だったら冒険者の登録も併せてお願いできるか?」
「わかりました。では、まずは簡単な説明をさせていただきます。冒険者ギルドではランクに応じて、簡単な手伝いからダンジョでの凶悪なモンスターの討伐まで様々な依頼を受けることができます。最初はEランクからスタートになります。依頼を成功させることやモンスターの討伐、冒険者ギルドへの貢献でDランク試験を受けることができ、試験をパスできればランクが上がります。依頼については後ろの掲示板に貼ってありますので、そちらを見て受付で受注してください。最初は常時依頼の薬草回収なんかが簡単なおすすめです。説明は以上です。何か質問はありますか?」
「とりあえず大丈夫。分からなかったら助けてもらうよ」
「質問いつでも大丈夫ですよ。では、冒険者登録します。ステータスプレートをお願いします」
プレートを手渡すと
「アルスさんですね。えっっ――これっ――」
受付嬢の驚いた反応を見て他の受付嬢もこちらをチラチラ見ている。
「すみません。お騒がせしました。お返しします」
別の受付から興味津々な様子でもう一人女性がやってきた。
「どーしたのっ?メープルが取り乱すなんてめずらしー」
「何でもないですよ? 大丈夫ですから。ほら、受付で他の冒険者さんが待ってますよ」
「君が有望株君か―。私、レクチェ。分からないことがあれば何でも聞いてね。いつでもメープルから私に鞍替えしてもいいから!」
レクチェはアピールするように、話しかけてきた。
「アルスさん困ってますから、レクチェは持ち場に戻ってください―」
メープルは近づいてきたレクチェを優しく押し出す。
「わかった、わかった。そんなにおこらないでよー」
そういいながらレクチェは行列の出来ている自分の持ち場に戻っていった。
「アルスさん、すみません。スキルは大事な個人情報だというのに……」
「大丈夫。スキルがばれたわけでもないし、そんなに気にしないでよ」
「はい……。これ冒険者のギルドカードになります。これがあればギルドの施設の利用やダンジョンに入ることもできますから無くさないようにしてください」
メープルは落ち込んだ様子で説明する。
「うん。さっきのことが気になるなら、今度暇なときに街のことを教えてほしいな。来たばっかりで何も知らないんだ。」
「そんなことでよければ……仕事が終わった夜でもいいですか?」
「もちろん、いいよ。解体も待たないといけないからね」
「では、18時ごろにギルドの外で待ってますね」
メープルは少し照れながら言った。
解体所に移動すると大柄な男が出てきた。
「これ、解体をお願いします」
アイテム袋からボアの遺体を出す。
「なかなか立派なボアだな。おぉ3体も倒したのか。肉はどうする。持って帰るか?」
(たくさんもらっても食べきれないよなー)
「肉は1キロぐらいもらえたら。あとは売却で」
「分かった。解体費用を引いて……肉と魔石で銀貨8枚ってところだな。少し待っててくれ」
そういうと慣れた手つきでボアをさばき、肉を切り出してくれた。
代金と肉をもらうとギルドの外にでた。
(約束の時間まで少しあるし、宿屋を探すか。所持金も無いし、金策も考えなきゃな)
宿屋を何件かまわったが、門番におすすめされた1泊銀貨3枚のところに決めた。
部屋に入り、身支度を整えるとちょうど約束の時間が迫っていた。