15.レクチェとデート?②
「次が20階だよ。時間的にもそろそろ帰らないといけないね」
「今回行けるのはこのボス倒すところまでだな。最終階層だといいけど……」
「そうだね。少しだけ休んでもいい?」
おれとレクチェは傍の岩に腰掛け、ボス戦の準備を始めた。
魔力にはまだ十分余裕があるが、魔力ポーションを飲んでおく。
準備を終えたころ、今までの真剣な表情をしたレクチェが話しかけてきた。
「アルス君、お願いがあります」
「どうした。そんなにかしこまって」
「もし、次のボスのドロップが魔導書だった時、私に譲ってほしいの。魔導書がどれだけ貴重なものかはわかってる。だから、その時はあたしをあげる。アルス君の言うこと何でも聞くわ。お願いします」
深々と頭を下げるレクチェ。
「……それはさっきのパーティの話関係するのか?」
コクリと頷く。
「でもレクチェそんなこと言って大丈夫か?魔導書が出た場合、おれがひどいことをさせるかもしれないぞ」
「アルス君はそんなことできないよ。命がけで他人を助けに行くお人よしなんだから。ひどいことって……どんなことかな? 結婚相手? エッチなことかな?」
ニヤリと笑い反論される。
おれも気恥ずかしくなり言い返す。
「からかうなよっ。分かった、魔導書がでたらレクチェに譲る。その対価はまた今度考えさせてくれ」
「ありがとっ。魔導書が出たらあたしも人妻かー」
「はいはい。ほら、行くぞ」
レクチェとの会話を切り、ボス部屋に向かった。
「グオォォォォォ」
重低音の鳴き声を響かせおれたちを待っていたのはミノタウロスだった。
「やっぱりこいつか」
武器は同じ両刃斧だが、魔力は感じない。
前回の死闘の相手よりも格下に感じる。
「アルス君、魔法で引き付けてっ」
注文通りにミノタウロスの顔に向けて水球を放ち、視覚を一瞬奪う。
その隙にレクチェミノタウロスの背後にまわこんだ。
ザシュッ
短剣の鋭い切っ先がミノタウロスの健を切り裂く。
上手く立てずガクンと膝をつく。
「足は止めたよ。止めはやっちゃって」
「お言葉に甘えて」
おれは魔力を溜め、水風刃を放ち、戦いが終わった。
ミノタウロスの背後に次の階層への階段が出現しない。
そして大きな宝石のようなものが宙に浮いている。
「あれは?」
「あれはダンジョンコアよ。許可なく壊したらダメだからね」
「ということは、この階層が最下層か。やったな」
「アルス君、ホントに強くなったね。ミノタウロスを一撃か……。もうあたしじゃ勝てないね」
「レクチェのスピードには勝てないよ。それより、ドロップが気になるだろ。行こうぜ」
おれとレクチェはミノタウロスの死体に近づく。
そしてそこには1冊の魔導書が落ちていた。
「あったーーーー。あったよぉぉ」
大声をあげて喜びを爆発させるレクチェ。
それを見ておれも嬉しくなってくる。
「他には……これは宝珠か、金属もドロップしたみたいだ」
小さめの宝珠と鑑定しても分からない金属をアイテム袋にいれる。
ミノタウロスの角や魔石を取り出していると、冷静さを取り戻したレクチェが話しかけてきた。
「これ、ホントにもらってもいいんだよね?」
「約束だからな。それはレクチェのものだ」
魔導書の表紙が薄く黄色に光っており鑑定してみると雷魔法の魔導書のようだ。
「多分雷魔法だから……アルス君の持ってない魔法属性……」
さっきの勢いとは裏腹に、罪悪感でしおらしくなっている。
「約束は守るよ。それにレクチェもさっきの約束守ってくれるんだろ?」
「もちろん、約束は守るよ」
「なら、後ろめたく感じなくて大丈夫。おれもレクチェを信じるから」
そういって手を差し出す。
レクチェも握手をするようにその手を握る。
その瞬間ビリッとレクチェの身体に電気を流した。
「ふぇ?」
「こういうことだから、ほんとに大丈夫だから」
手のひらに電気を集めパチパチさせる。
「……うそ。アルス君が使えるのは、水、風、氷だけじゃ……」
「それと火、雷を使える。内緒にしてくれよ」
それを聞いてレクチェは軽くパニック状態になっている。
「落ち着いた?」
「うん、大丈夫。でもさすがにびっくりだよ」
「落ち着いたなら、魔導書使ってみないか?早く帰ってモラードに依頼を取り下げてもらわないといけないだろ」
「うん、そうだね。たしか、読んだらよかったはず。ディア クワイゾ……」
本を開きぶつぶつと魔導書を読む。
読み終えると本は光の粒を放ちながら静かに消えていた。
「これであたしも魔法が……」
レクチェを鑑定してみると確かに魔法が使えるようなっていた。
ステータス
名前 レクチェ
スキル
身体能力強化 B/A
短剣 C/B
魔法(雷) E/A
?
その後はダンジョンを脱出し、バレルの街に急いだ。
「レクチェほんとに他のドロップ品はいらないのか?」
「それは全部アルス君のだよ。雷の魔導書がいくらするとおもっているの?」
「魔導書が貴重なことはわかってるよ。いくらかは……」
「一番安い風の魔導書で白金貨1枚で取引されてるのよ。レア度の高い雷の魔導書なら……」
「わかったよ。ありがたくもらっておく。この後はモラードに報告に行けばいいか?」
「そっちはあたしが報告するよ。明日ギルドに来てドロップ品を見せてくれたら大丈夫だと思う。早く休みたいでしょ?」
「了解。また明日行くことにするよ」
「ただ、魔導書の話は内緒にしてほしいの。間違いなく大騒ぎになるから……。あたしが魔法を使えることはアルス君とあたしだけのひ・み・つ」
「おれの魔法のことも報告なしで頼むよ」
「どうしよっかなー。間違ってメープルに言っちゃうかも」
そんな話をしてるとバレルの街に到着した。
「アルス君、今回はホントにありがと。最高の2日間だったよ」
「おれもいい経験になったよ。また明日」
そう言い、宿に戻った。
書いてるうちにレクチェ大好きになってしまいました。
皆さんは穏やかなメープル派?積極的なレクチェ派?
これで1章終わりになります。
2章からやっと魔法を教えることになりそうです。
みなさんの評価、感想、ブックマークがとてもちからになります。
お手数だと思いますが、よろしくお願いします。




